私は魔女。趣味は世界各地を旅することであり、これまたとある村の面白い噂を聞きつけてやってきた。その村はなにやら不思議な木があることで有名であり、なんとハンバーガーが木から実ると言われている。つまり、『ハンバーガーのなる木』といったところか…。

　「ハンバーガーのなる木…面白そうですね。行ってみましょう！」

　好奇心を抑えられなくなった私は、すぐさま箒に乗り、目的の村へと出発する。そうして数時間飛んでいると、件の村が見えてきた。ここがハンバーガーのなる木がある村…。箒から降りて村の木を見渡すと、本当にハンバーガーから木が実っており、私は思わず驚いた。

　「すごい…本当にハンバーガーがある…！これ、ちなみに本物ですよね？」

　１つ手に取ってみて、口に運んでみる。

　「んんー！おいしい!!」

　おいしすぎる！しかもハンバーガーは１種類だけでなく色々あり、他にも照り焼きバーガーやチーズバーガー、エビバーガーまで盛りだくさん…！周りを見渡してもハンバーガーの実っている木がたくさんあり、ここの村の人はみんなハンバーガーに夢中だ。

　「うめぇー！」「サイコーだな！」「この村はこの木さえあればもう安泰だぜ！」「いやーん、太っちゃうけどねぇ！」

　みんな幸せそうだ。しかしこのハンバーガーを食べ続けているせいか、みんな肥満。痩せている人なんて私以外には見当たらない…。美味しいのは結構だけど、食べすぎには注意しなきゃね…。そうして私も２個目のハンバーガーを取ろうとすると、背後から怒号が響いた。

　「おい、そこの女ぁ、俺様の木になに勝手に触ってんだぁ？」

　「？」

　私は声のした方を振り返り、そこにはこれまたデブで短気そうな男が目の前に立っていた。

　「このハンバーガーの木は俺様のもんだぁ。女ぁ、痛い目遭いたくなかったらぁ早よどかんかい」

　なんだこいつはえらそうに

　「このハンバーガーの木はみんなのものではないんですか？独り占めはよくないですよ？」

　私はそう言ってその男をにらんだ。するとデブ男は…

　「なんだぁ、やるのか！なら女でも容赦しないぜ？そんなぶさいくな格好なんかしやがって…食らえ！」

　私の魔女服を侮辱しながら男は殴りかかってきた。しかし、パンチのスピードが遅すぎる。だから私は…

　「えい！」

　「おおお！？」

　私は杖を取り出し、魔法の力で男を少し浮かせ、動けなくした。そして、

　「どりゃ！」

　「ぐはあ！」

　膨れ出ている男のお腹に全力の飛び蹴りをかまし、男は悲鳴を上げながらも吹き飛んでいった。デブすぎるのか、力も弱くとてもあっけなかった。

　「まったく、食を邪魔するからこうなるんです…もぐ」

　そう言いながら私は２個目のハンバーガーを食べた。しかし食べている途中に、ふと思った。

　そういえばここの村の人たちはみんなこればかり食べていて、肥満だった。私はまだ２個しか食べていないから大丈夫だけど、村の人たちは１日にどれくらい食べてあんな肥満になったんだろう…。そう考えると私はこれ以上ハンバーガーを食べるのが怖くなり、すぐさま箒に乗ってこの村を去った。飛んでいる最中、私はこんなことを口にしていた。

　「この村の人たちの健康を心から祈ります…。」