勇者
「さあ来ましたよ。やっとここまで来ましたよ」


魔王
「よくぞここまでたどり着いたな勇者」


勇者
「それでは魔王さん、今の心境をお聞かせください」


魔王
「え? えー。いつか勇者が来るとは思っていたのでそんなに焦りとかは無いですね。いつも通り自分の戦いをするだけです」


勇者
「魔王さんは強力な闇魔法を使うとお聞きしたのですが、やはり今回の勇者戦でも使う予定ですか?」


魔王
「ええ。勇者も闇魔法を使うモンスターとの戦闘は慣れていないと思いますので、序盤からどんどん撃って、戦いを有利に進めていきたいですね」


勇者
「かかったな魔王め」


魔王
「しまった! 勇者め貴様、まんまと私に戦略を喋らせおったな。しかし私の戦略がわかったところで成すすべはあるまい」


勇者
「ええ!?」


魔王
「何だ?」


勇者
「闇魔法ってそんなに美味しいんですか!?」


魔王
「いや、何を言っているんだ?」


勇者
「知らなかった! 闇魔法が油を多めにひいたフライパンで両面こんがり焼いたら頬(ほ)っぺたが落ちるくらい美味しいなんて知らなかった!」


魔王
「違う! 闇魔法は闇の魔力を高濃度に圧縮して敵にぶつけると同時に爆発させるものだ!」


勇者
「やっぱり料理じゃないか!」


魔王
「違うわ!」


勇者
「かかったな」


魔王
「しまった! 勇者め貴様、まんまと私に闇魔法の説明をさせよったな。しかし私の闇魔法がどのようなものかわかったところで防ぎようがあるまい」


勇者
「あとお前がアホなことがわかった」


魔王
「貴様! もう許さん。撃つぞ私の闇魔法! 貴様なんぞ一瞬で吹き飛ばしてくれるわ!」


勇者
「やってみるがいい。俺もここに来るまで半端な経験値を積んできたわけじゃない」


魔王
「ほう! どんな経験をしてきたというのだ!」


勇者
「俺は勇者になってからずっと決めていたことがあった。それはパーティを美少女で揃えること!」


魔王
「ほ、ほう、それで?」


勇者
「俺は最初の街で手当たり次第に声をかけたがなかなか上手くいかなかった。町娘、町娘、町娘!」


魔王
「ただのナンパじゃないか!」


勇者
「町娘、娼婦、ホームレス!」


魔王
「手当たり次第だな本当に!」


勇者
「しかし俺の経験値が上がっていくにつれ徐々に話を聞いてくれる女の子が増えてきた」


魔王
「ナンパの経験値だろう?」


勇者
「そうして完成した勇者・メイド・花売り・バニーガール・遊び人で構成(こうせい)された最強パーティ」


魔王
「何をするパーティなんだ……?」


勇者
「5Pだ」


魔王
「最低だなお前!」


勇者
「これぞ乱交パーティ!」


魔王
「黙れ!」


勇者
「我ながら」


魔王
「全然うまくないからな! ただ下品なだけだからな!」


勇者
「しかし、そう上手くはいかなかった」


魔王
「そうだろうな」


勇者
「4股(また)していたことがバレた俺は半殺しにされてパーティを追い出された」


魔王
「ざまあ」


勇者
「俺のひたいの傷を見ろ。これはその時の傷、歴戦の勇者にのみ与えられる勲章(くんしょう)」


魔王
「ざまあ」


勇者
「それでも俺は諦めなかった」


魔王
「魔王討伐はどうした!」


勇者
「しかし心に傷を負った俺は何をしても満たされない! どんなオカズを使っても! どんなダッチワイフ抱いても!」


魔王
「女は手に入らなかったんだな」


勇者
「俺は思った! こんな世界が悪いんだ! この世界を支配している魔王が悪いに違いない!」


魔王
「すごいところからベクトル持ってきたな」


勇者
「俺は腹いせに魔王討伐をすることにした」


魔王
「完全に逆恨みじゃないか!」


勇者
「怒りに燃える俺は全ての欲望を捨てた! 有り金も全て強くなるために使って来た! どんな強敵にも挑みかかっていった! 全ては魔王を倒すために!」


魔王
「そのセリフだけは勇者っぽいな」


勇者
「そうして俺は1ヶ月足らずで最果ての地であるこの魔王城まで来た」


魔王
「すごいなお前」


勇者
「もう俺を止められる奴はどこにもいない。そう、お前もだ魔王!」


魔王
「ククク、動機はどうあれここまで来れたことは褒(ほ)めてやるぞ勇者よ。さあかかって来るが良い!!」


勇者
「いくぞ!! 魔王さん僕と付き合ってください!!!」


魔王
「嫌に決まってるだろ!!!」


終わり