「行きたいです!だけど私免許取り立てで会社と家の往復くらいしかしてないんですよ、グラウンドって遠いですか?」

「そうだなぁ、今度の会場は1時間くらいかかるかもな」

「そうですか…もうちょっと車に慣れてからにします」

「秋山、乗せて行ってあげれば?同中なら家近いんじゃね?」

他の人がそう言うと「あー、そっか、いいよ」とあっさり決まってしまった。

「いいんですか?」

「いいよ、あと敬語も使わなくていいし、なっ(笑)」

「…ありがとう」

少し頬を赤らめた。



試合の日、近くの公園で待ち合わせた。

車が到着すると助手席の窓が開き小さな声で「前に乗って」と聞こえた。

ドアを開けると秋山さんは後ろを見ていたから真綾も見ると小さな女の子が座ったまま寝ていた。

真綾はゆっくりとドアを閉めた。


行きの車の中はほとんど話さずにグラウンドに到着した。

「優香(ゆうか)起きろ」

「うーん」

「ジュース買ってやるから」

パチっと目が開いた。

「あれ?着いたの?」

「あぁ」


「こんにちは、安田です」

「えっと、秋山優香です、パパ、優香オレンジジュース」

「はいはい」

秋山さんて、パパなんだ……


車から降りて秋山さんは優香ちゃんと手を繋ぎ自動販売機でジュースを買っていた。