日常に飛び交う「約束」という言葉を僕は世界で一番きれいな言葉だと思い、そして、世界で一番大嫌いだった。
「ねえ、約束だよ。」
「明日一緒に行こうね、約束。」
そんな日常の中の約束なんか大半が叶わない。
約束というその言葉を信じてしまった人が悪いとでも言わんばかりに人々は約束と言う言葉を守らない。
「あっ！ごめん、忘れった。」
「いや、ちょっと面倒になって。」
そうやって人々は他の人の心を踏みにじり信じていた者を裏切る。そんな世界で僕たちは生きている。どうしたって誰も信用できない世界に変わっていく。
「敬、ごめん忘れったよ。」
　クラスメイトの朔也が僕に寄りかかりながら言ってきた。これで何回目だろうか。そんなことを頭で考えながら僕はいつもと同じ言葉を口にする。
「大丈夫だよ。」
　大丈夫だよ、約束なんて言葉を信じてはいけないなんてわかってるから。約束なんて言葉を信じた方が痛い目を見るなんて知っているから。もう、慣れたから。
　僕の心の中はどんどん暗く染まっていく。まるで、暗闇の中で手を離されたような感覚だ。
大丈夫、僕は心の中でもう一度自分に対して投げかける。大丈夫なんて言葉も当てになんてならない。一時しのぎの応急処置にしかならないこともまた、解っていた。