「加賀美さん、ジャケット、ハンガーかけましょうか?」

「ん……ありがとう」

 クローゼットを開けてハンガーを取り出すと、加賀美さんのジャケットを掛ける。

「加賀美さん、大丈夫ですか?」

 加賀美さんに歩み寄ると、加賀美さんは急に私の腕を引っ張ってくる。

「か、加賀美さん……?」

 加賀美さんは私に真剣な眼差しを向けてくる。

「秋穂ちゃん……もう帰るの?」

「え……?」

 加賀美さんは私をベッドに座らせると、「秋穂ちゃん……まだ帰らないで」と私の頬に触れる。

「え……?え、でも……」
 
「秋穂ちゃんと、もう少し一緒にいたいんだ。……ダメ?」

 そんなことを言われたら、ダメなんて言えない。 私だって、加賀美さんと一緒にいたいと、思ってしまうから。
 加賀美さんはもう少しで、結婚する。 だから今日で、加賀美さんのことを諦めようと思っていたのに……。
 そんなことを言われたら、私はーーー。

「私も……加賀美さんと一緒にいたい」

「秋穂ちゃん……」

 加賀美さんは私を、ベッドにそっと押し倒した。

「加賀美さん……今日だけ、加賀美さんの恋人にしてください」

「秋穂ちゃん……いいの?」

 加賀美さんが私の髪に触れる。

「加賀美さんじゃないと……ダメなんです」

 私が加賀美さんの頬に触れると、熱く啄むような、情熱的なキスをした。

「秋穂……ちゃん」

「加賀美さん……好き」