タクシーが目の前にやってきたので、加賀美さんと共にタクシーに乗り込む。
 加賀美さんの家を知っている私は、タクシードライバーさんにそこに向かうように伝えた。
 タクシーの中では、加賀美さんは寝てしまっているようだ。

「もう、飲みすぎですって……加賀美さん」

 もうやめたほうがいいですよ。と伝えたけど、加賀美さんは「まだ大丈夫だよ」と飲み続けていた。
 その結果がこれだ。加賀美さんがこんなに酔った姿を見たのは、久しぶりかもしれない。
 そんなに酔うほど飲んでる姿、多分見たことなかったかもしれない。

「加賀美さんの肌、キレイだな……」

 思わず触れてしまうほど、滑らかでスベスベな肌をしている。

「加賀美さん……好きです」

 加賀美さんには幸せになってほしいけど、ちょっと悔しいな。 私なんて加賀美さんの恋人にすら、なれなかったのに……。
 お見合いした相手と結婚しちゃうなんて、卑怯だよ。 私の方が、加賀美さんのこと知ってるのに……。

「なんで……結婚しちゃうの」

 私は加賀美さんといる時間が本当に好きだった。楽しくて、つい時間を忘れてしまうくらい好きだった。
 そんな加賀美さんが結婚するなんて、受け入れられる訳、ないよ。

 加賀美さんは本当は……私の気持ち、気付いてたでしょ? でもきっと、気付かないフリをしているはず。
 
「ねえ、加賀美さん……あなたのこと、奪ってもいいですか?」