「そう……なの?」
「はい。 私にとってあなたは……そういう人、なんです」
私の好きな人は、加賀美(かがみ)茂章(しげあき)さんだ。 加賀美さんは、私が入社した時からの教育係で、とても優しく分かりやすく教えてくれる人だった。
いつしか私は、加賀美さんのことが好きになり一年ほど、ずっと好意を寄せている。
「そう、だったんだ」
「すみません……迷惑、ですよね」
私の言葉に加賀美さんは、「いや、迷惑なんかじゃないよ」と、言ってくれた。
私はそれが嬉しくて、思わず「良かった……」と口にしてしまう。
「でも、ごめん。秋穂ちゃんとは、付き合うことは出来ないんだ」
「……え?」
その言葉を聞いて、私は「どうして……ですか?」と聞き返してしまった。
「実は……秋穂ちゃんに、言ってないことがあるんだ」
「言ってない……こと?」
そして私は、加賀美さんから衝撃的な言葉を聞くことになった。
「俺、結婚するんだ。もうすぐ」
「え……?」
加賀美さんが……結婚? ウソ……。
前に聞いた時、彼女はいないって……言ってたのに。
「実は、親に言われてお見合いしたんだ」
「お見合い……?」
「うちの親が、お見合いしろってうるさくてね。仕方なく、お見合いしたんだけど。 向こうも俺のことを気に入ってくれたみたいでね。 俺結婚することに決めたんだ」
そんな……。加賀美さんが、結婚?