それから数日が経って、私は加賀美さんが結婚を取りやめたことを会社で聞いた。

「なんで……」

 なんで……結婚をやめたの? どうしてーーー。

「加賀美さん……!」

 私はどうしてなのか気になって、加賀美さんに直接聞くことにした。

「秋穂ちゃん……」

 私は加賀美さんの腕を掴んで、「どうして……。どうして、結婚をやめたんですか……?」と聞いた。

「秋穂ちゃんも、聞いたんだ」

「どうして……?」

 もしかして……私のせい?

「……もしかして、私のせい、ですか?」

 私がそう聞くと、加賀美さんは「違うよ。秋穂ちゃんのせいじゃないよ」と言ってくれる。

「なんで……。加賀美さん、どうして……?」

 加賀美さんの幸せを願おうと思ったのに、私が加賀美さんの幸せを壊してしまったような気がして、複雑な気持ちになる。

「……気付いたんだ、俺」

「え……?」

 気付いたと言われて、私はなんのことか分からなくて、ただ加賀美さんのことを見つめる。

「俺……秋穂ちゃんのことが好きだって、気付いたんだ」

「え……?」

 私のことが……好き? 

「秋穂ちゃんがいなくなるって思ったら……胸が苦しくなって、痛かったんだ。誰にも、秋穂ちゃんのことを渡したくないって……そう思ったんだ」

「本当に……? 本当に、加賀美さん……?」

 これは……現実なの? 本当に、現実なの?