加賀美さんの手が身体に触れるだけで、幸せだと感じて涙が出てしまう。
「秋穂ちゃん……?」
「加賀美さん……優しくしないで。もっと……もっと、加賀美さんを感じたい」
加賀美さんの背中に腕を回すると、加賀美さんを中で深く感じる。
「秋穂ちゃん……そんなこと言われたら、優しく出来ないよ」
耳元で名前を呼ばれるだけで、私の心は疼く。好きで好きでたまらないんだと、思い知らされる。
このままずっと、加賀美さんの熱を感じていたい。加賀美さんと身体を重ねるだけで、私はより一層加賀美さんのことを愛おしいと感じてしまう。
「加賀美さん……大好き」
聞こえるか聞こえないか、分からないくらいの声で、私は加賀美さんに好きだと伝えた。
もう加賀美さんにこの気持ちを伝えることは、出来なくなるからーーー。
次の日の朝、目が覚めると、隣にはまだ加賀美さんがいた。 寝息を立ててスヤスヤと眠っていた。
「加賀美さん……」
加賀美さんの頬に、そっと手を伸ばす。
「ごめんなさい……加賀美さん」
私はもう、加賀美さんの幸せを願うことしか出来ない。
それでも私は、あなたのことが大好きだから……諦めるしかない。
「さようなら……加賀美さん。幸せになってね」
昨日の夜は、本当に幸せだった。今までにないくらい、幸せだった。
だから私は、この幸せを胸にしまって生きていく。 後悔なんて、しない。