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 目が覚めたのは明け方のことだった。カーテンを閉め忘れた窓から陽射しが差し込み、あたりは静寂に包まれている。

 体中のあちこちに気怠さが残るが、今も波斗先輩の腕に抱かれたままだった。

 衝動の赴くままこんなことになってしまったけど、全く後悔はしていなかった。

 千鶴ちゃんにあんなこと言ったのに、私がこうなってるなんてね……そう考えて苦笑いをした。隣で寝ている波斗先輩を見ると、その気持ちも和らぐ。彼はやっぱり私の傷を舐めてくれたみたい。失恋したこともすっかり忘れて、夢中になって抱き合った。

 でも波斗先輩、昨夜のことを忘れて目を覚ましそうよね。私を見て驚いて、いきなり謝るんじゃないかしら。

 波斗先輩の穏やかな寝顔を見ながらそんな想像をして、クスクスと笑いが漏れてしまうと、彼がゆっくり目を覚ました。

「おはようございます。先輩」

 私が笑顔でそう言うと、波斗先輩は目を見開いてから慌ててガバッと起き上がると、ベッドの上で土下座する。

「わっ……ご、ごめん! こんなことになっちゃって……」

 やっぱり。土下座までは想像していなかったけど。

「先輩」
「な、何⁈」
「すごく素敵な夜でしたね」
「えっ……」
「先輩のおかげで吹っ切れそうです。ありがとうございます。でも逆に先輩に嫌な思いをさせちゃったらごめんなさい……」
「……嫌だったらしてないよ」
「うふふ、それもそうですね」

 お互いに顔を見合わせて笑い出す。先輩がこんなに一緒にいて楽しい人だなんて知らなかった。安心感に包まれ、心が満たされていく。

「じゃあそろそろ部屋に戻らないと。怪しまれちゃうから行きますね」

 ベッドを降りる時に感じた痛みが、失恋の痛みを和らげてくれたような気持ちになった。