当時の周りの同級生はキスを済ませていたりそれ以上のことまでひとっ飛びしている子もいた。

そんな子たちは勝手にクラスメイトを保護しようと上から目線で恋愛指南をしていた。自然とパワーバランスも上に上がっていく。



私は、先生から触れてもらえた。

その拡張された事実を内緒で抱きしめた。

何にも知らない、同い年で付き合ってる、そんな他の15歳の子供とも私は違う。

そうやって自分を特別視することで、あの時に壊れた心を守る方法を思いつくことができなかった。


あれから5年、時を重ねても私は先生のことを『私を見つけてくれた人』と神様として崇め続けていた。

せんせい、と意味もなく心の中でつぶやく。おはよう、おやすみ、と同じくらい簡単に出てくるひらがなにはもう意味はなくて、ただの羅列みたいに口から音が溢れた。

高校進学して以来、戸谷先生とは会っていない。

でも戸谷先生以上の異性にも会っていない。

私の初恋の人だ。初恋はまだ終わりを迎えていない。このハガキは、私の初恋への片道切符だ。
ピンク色のネイルチップのついた指先はボールペンが持ちにくい。

私は震える線で出席欄へ丸を入れた。

告白の返事を聞くことと、過去の答え合わせをするために。