新幹線の通る音が、隕石の降ってくる音だと錯覚してしまう “ミー”の心はきっともう腐敗していて。

仮にそうだとしても動かない体は凍っていて。

「もう何もかも嫌だ」と叫ぶ暗黒を心が袋叩きにしていた夜に。

“ミー”はヒザを折ってヘッドフォンを耳に当てた。別に音楽を聞く訳でもない。ただ、耳をふさいで音を消して、格好つけるためだ。

ダンボールを眺めては目を逸らし、深い海に沈んだかくれ家の様な香りを感じては、瞬く間に失って、視界に入ったガムテープの繊維に嫌悪感を覚えた。ささくれに引っかかった指先が、落ちこんでいる様に見えた瞬間が切なくて愛おしかった。

脳をかけめぐる思想が“ミー”を手のひらの上で転がして遊 んでいるかの様だった。

まぁでも、僕はそんなの知らないけど。

今日はどしゃぶりの雨が降る。僕はそれを全身に浴びて遊びたい。 窓の多い建物の屋上で。盗んだポテトチップスでも食べながら。

そして“最ご”にすることは、この屋上から出ること。
僕は歩いていく。

格好つけて目でもつぶって、下手くそな泣き笑いでも想像しながら。

屋上の花壇に咲いたクロッカスの花びらを、風が激しく揺らしていたのを無視しながら。