大会のときに集合場所にいつも一番に来るのは牡瓦で、最後に来るのが俺だった。
 でも、今回は違った。牡瓦が一番最後に来たんだ。
ああ、昨日あんなことしなきゃよかったな。と思いながら牡瓦のことを見ていた。すると、氷空が牡瓦に話しかけていたんだ。
牡瓦はいつも通りに接していて、昨日、裏で氷空が指示してたなんて思いもしないんだろうな。
「冬香先輩って祐也先輩のこと本当に好きですよね。」
「そんなわけ無いじゃん、栄西と私じゃ釣り合わないよ。」
そう言って笑う牡瓦はすごくつらそうな顔をしていた。
 俺は気がついたら二人の元へ行っていた。
「なあ、もう俺お前と付き合ってられない。考えればすぐわかった。牡瓦を俺の近くに居させれば氷空が牡瓦を傷つける事はできないじゃんって。」
そうだ。ずっとそう思ってたんだ。
「俺は何よりも牡瓦のことが大切で、誰よりも牡瓦のことが好きなんだよ。」
周りには他の部員もたくさんいる。それでも俺は牡瓦に告白をした。
「牡瓦は、俺じゃなきゃだめか?」
牡瓦の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「ううん、栄西じゃないとだめ、ずっと一緒にいよう?」
「ああ、絶対に誰にも傷つけさせないから。」
周りからヤジが飛んでくる。でも、次の瞬間、周りの観衆が氷空の事を見た。
「流石にやり過ぎだよ。諦めな。」
周りから色々言われてうつむいている氷空に牡瓦が近づいた。
「私は氷空のことが好きだよ。」
ああそうか、俺は牡瓦のその優しさを好きになったんだ。
 周りが急に静かになったとき、「パチンッ」と痛々しい音が響き渡った。
「あんたのそういうところが気に食わないのよ!うまく行かなくても平気なふりして、欲しいものもやりたいことも我慢する優等生ヅラがだいっきらいなのよ!」
同級生に腕を掴まれながらも暴れまわる氷空と顔を叩かれてずっと顔をおさえている牡瓦を見て、今来た顧問が氷空を連れていき、牡瓦はバスの中で応急処置だけして大会に向かった。
「大丈夫?」
「平気だよ。これが氷空の抱えてたものだってわかったから。」
 その後、氷空は一週間の謹慎と退部でことを済ませた。




 3年後、俺達は入籍した。
「これからは栄西って呼べないね。」
そう笑う君をこれからもずっと守り、愛し続けるのが俺の役目だ。