私は栄西祐也(ようさいゆうや)に恋をして高2の修学旅行のときに告白して振られた。
栄西は同じ陸上部のキャプテンで私は副キャプテン。振られたときに私の自慢だった長い髪を切って栄西のことを諦めたつもりだったけど、諦めきれずに気がついたら3年生になっていた。
 明日は高総体初日。私は長距離種目に出るけど、怪我をしていて練習を万全とまではできてなかった。
緊張とか不安とかで家に帰ってからもずっとソワソワしていたらスマホが鳴った。
 スマホを見ると、栄西からメールが来ていた。
『お前は俺と違って陰キャなんだから出しゃばらずにいつも通り下から3番目取れよ笑』
相変わらずわかりにくい言い方をするなと思いつつ、彼の優しさにほほえみがこぼれた。
『自分のこと陽キャだと思い込んでるやつに言われたくないよ』
『いやだって俺充実してるし』
『あっそ』
だんだんめんどくさくなってきて冷たく返した。
『か』
いや一文字だけ送られたってわからんわ。
『の』
は?『かのじょ』ってこと?いたんだ。知らなかった。
『彼女いるんだ。おめでとう。』
『うわ、冷たいな〜』
『誰だか知りたくないの?』
ただの拷問なんだよ。なんで好きな人に彼女いることを本人から聞かされてその相手を知ろうと思わないとなの。
氷空(そら)
私はめんどくさくなって適当に後輩の名前を言った。
『うわ、バレるの早』
え、嘘でしょ。
 思いもしなかった。氷空は私の大好きな後輩で私が栄西のこと好きなのも知っていた。
なんで、なんで今こんなこと知らなきゃいけないの。
『用は済んだ?明日頑張ってね。おやすみ』
私はわざと『おやすみ』と送った。いつも送ったあと返信が来なくなるから。
でも今日は違った。
『おう、久しぶりにすごい緊張してるわ。』
なんで、こんなときばっかり返信してくるの?やめてよ…
『頑張ってね。応援してる。』
いつも栄西が気持ち悪がって既読スルーするような内容を送った。
『任せろ!』
画面を見ると、そこには普段一度も送って来たことのなかったスタンプが送られてきていた。
 やめてよ。こんなときばっかり。
 スマホをソファに投げつけて私は布団の中で一人泣きながら眠りについた。


 17歳の春、5年間の片思いが相手からの惚気(のろけ)で呆気なく終わった。