ピピピピ
「ん?」
アラームがなった事で目が覚めたようだ。
「夢、か…」
とても懐かしい夢を見た、僕が初めてあの子と会った日、初めて恋をした時の夢だった。
(なんで、今更…)
そう思いながら重たい体を起こして、外を見ようと窓に目を向けると。
「え?」
窓には、目の周りが赤く、頬には涙の跡が残っている自分が映っていた。
(何で?)
だが、その理由はすぐにわかった。
(結局この気持ちが残ってたんだな)
もう、諦めていた、1番に叶えたい願い。
あの子にもう一度会いたい。
だけどあの子の約束を破ってしまった僕には、叶ううことは出来ないだろう。会えたとしてもこんな自分を見られたくない。
他人を信じない、自分が正しいことを言っても意味が無い。
心の中に、そんな思いがあるのだから。
今になって、あの子は本当に自分と居て楽しかったのか、疑問が沸くようになってしまったのだから。会ったところで嫌われてしまうだろう。
会いたいけど、嫌われたく無いから会いたくない。そんな身勝手で矛盾した気持ちを持ってしまっていた。
(どうすればこの気持ちはなくなるんだろう)
この呪いのようなものを消してしまいたい。
そうすればいつまでも過去に囚われずに済むのだろう。だけど、この気持ちを消してしまったら、あの子を忘れてしまう。また約束を破ってしまう。
僕の前からいなくなってしまう前日、
「ごめんね、つーくん」と涙を流しながら言ったあの子に、僕は何一つ言ってあげられなかった。約束を守れなかった。
だから、あの子を忘れない為に、もう一つの約束を果たす為に、この呪いのような気持ちがあると思う。
(だけどもう一つの約束も僕には果たせないものだったな)
中学で起きた出来事、それによって僕は、人を心の底から信用出来なくなった。それが、この矛盾した思いを作り出した原因だろう。
「もう少し寝るか」
これ以上何も考えたくなかった。
もう何も思い出したくないから、逃げるようにして、再び眠りについた。