ホームルームが終わった直後、予想通り夜野の席に人集りが出来ていた。
「夜野さんってどこから来たの?」
「夜野さんLINE交換しない?」
など質問の嵐だったが、彼女はそれら軽く聞き流し、荷物をまとめ、足早に教室を後にした。
(そいえば次は移動教室だったな)
僕は次の授業の開始時刻が迫っていることに気づき足早に教室を後にした。
その後も彼女への質問攻めは続いた様子だったが、あまり相手にされていないのか、次第に彼女の周りから質問をする人は消えていった。

放課後僕はいつものように、ある場所へと足を運んだ。この高校は2つの棟があり、一つが主に生徒の生活エリアとなっている東棟、そしてもう一つが美術室や資料室などあまり使われることの無い西棟。そして僕が向かっているのはその西棟の第二図書室だ。東棟にも第一図書室があるが、あまり古い本が置いていない。
だが第二図書室にはその様な本が数多く置かれているので、僕はよくそこへ通っていた。
ガラガラガラ
第二図書室の扉を開け中に入る。室内は掃除こそされているものの、あまり綺麗とは呼べない。僕はそんなことは気にせず、どの本を読もうか本棚に目を向けると。
ガラガラガラ
「なんだ?」
珍しくここに人が入ってきた、普段ここには僕以外の人は誰も入って来ない、入ってきたとしても教師ぐらいだ。だけど僕は声を聞いた瞬間少し驚いた。
「ここの扉少し建て付けが悪いわね」
「夜野さん?」
なんとここに来たのは、今日来たばかりの転校生、夜野だった。人が来たことにも驚きだったが、彼女が来たことが何よりも驚きだった。
「確か、天乃さんだったかしら?」
(名前覚えられてるんだ)
そしてこれが僕天乃紬と彼女夜野奏の初めての出会いと言っていいだろう。