私にはお母さんはもういない。私が小学生の頃に病気で死んでしまった。

それ以来、父一人子一人というやつだ。支え合って暮らしてきた。

そんな環境で育ってきた私にとって、お父さん一人を何年もアメリカに送り出すことなんて、できなかった。

料理もまともにできなくて、掃除洗濯もままならない。

そんな人を、一人でアメリカに送ったらどんな生活になることか。想像したくもなくて、お父さんから話を聞いた時にすぐに行くと返事をした。


本当は、私も大地のことが好きだった。もちろん今も大好きだ。

いつか、大地に自分の気持ちを伝えたいと思っていた。

いつか、両想いになれたらいいなって思ってた。

いつでも伝えられると思ってた。だからこそ、素直になれなくて。

そうしたら、アメリカに行くことになってしまった。

私にとって大地はすごく大切な人。だけど、お父さんのことも、もちろん大切。

どちらかを選ばなきゃいけないとなったら、私は迷わず育ててくれたお父さんを選ぶ。