「……大地」
「ん?」
「……ごめんね」
「だから気にしなくていいって……」
「違うの」
「え?」
「……ずっと言えてなかったんだけど……」
「……」
ちゃんと言わなくちゃ。もう、今しかないんだから。
深呼吸を繰り返して、心を落ち着ける。
胸の辺りはずっとざわざわしていて、今すぐ逃げ出したいくらいに苦しい。
だけど、言わなくちゃ。今言わないと、絶対後悔する。
「私ね……、私、明日……引っ越すの」
「……は……?」
「お父さんの仕事の転勤で、……アメリカに行くの」
とうとう言葉を失った大地に、ようやく視線を向ける。
「本当はっ……私だけ日本に残ろうかと思った。だけど、お父さんのことが心配だから……」
「っ……」
ちらりと窓の向こうを見つめる。
そこには今私の部屋があるけれど、さらにその向こうにあるリビングでは仕事から帰ってきて引越しの最後の準備をしているお父さんがいる。
私も手伝うって言ったのに、
"莉子は大地くんと一緒に花火を見ておいで。毎年の約束だろう?"
って言ってくれた。