「ごめん。大地」


ごめんを伝えるのは、何度目だろう。

何が他の言葉を言えればいいのに。私は繰り返すようにそれしか言えない。

それ以外に、私が言っていい言葉なんて無い。

そうしているうちに、花火大会が終わる。

せっかく最後に一緒にいられる時間だったのに、私のせいで台無しにしてしまった。

ごめんね、大地。私、大地に謝ってばっかりだね。

大地の手に包まれた私の手。

その温もりを噛み締めるようにして全身で感じて、そっと抜け出す。


「……、莉子」

「大地。ごめんね」

「莉子、待って」

「好きって言ってくれて、嬉しかった」

「待て、待ってくれ」


大好きだよ。

その言葉だけ、飲み込んで。

そっと、胸にしまい込んで、蓋をする。

もうこの蓋が開いたりしないように。固く、固く鍵を閉めた。


「莉子!莉子!待てよ!」


私に手を伸ばして叫ぶ大地に、最後にふわりと笑って。


「……大地。今までありがとう」


それを伝えると、


「莉子!!」


泣き叫ぶように私を呼ぶ声に背を向けた。