「いつかは……帰って、くる……んだよ、な……?」

「……何年アメリカにいるかは、わからない。日本に帰ってこられるかも、わからない」

「そんな……」

「このマンションも、売りに出すの。日本に帰ってきたとしても、この家にはもう帰ってこない」


そんな状態で、気持ちを伝えることなんてできないと思ってた。

仮に気持ちが実って付き合うことになったとしても、私は遠距離恋愛なんて耐えられないと思ったから。

だって、こんなにも好きで、小さい頃からずっと一緒にいた。

それが、飛行機の距離で簡単には会えなくて。"好き"という感情だけで、耐えられる自信がない。

もっとつらくなるだけだと思ったから。

それならば、私は自分の気持ちに蓋をするよ。

大地のことを好きな自分を、忘れるから。

だってそうすれば、寂しい思いをすることもないでしょう?

向こうで、大地を想って泣くこともないでしょう?

大地だって、私のことなんて忘れて笑っていられるでしょう?

だから、全部忘れるから。