高校の卒業をすぐ間近に控えた冬の寒い日の夕暮れ。

雲の隙間から漏れる夕日に見惚れていたのか、きみだったのか思い出すことはできない。

日の短い冬は夜の帳がすぐに降りてくるように、暗闇と一緒にきみが消えそうな気がして手を伸ばした。
横断歩道の信号の青色と夕日が眩しくて目を細めると、君の制服のスカートがひらりと揺れたのだけが視界にはいる。
「どうしたの?」
柔らかく温かいその声に視線を上にあげると、きみの微笑みに釘付けになった。景色もなにも見えなくなる。

本当はずっとずっときみに伝えたかった心の奥の本音。でも、この距離が心地よくて、幼馴染というポジションに胡坐をかいて、自分の気持ちが迷子のならないように。

そんなちっぽけなくだらない言い訳を何度も繰り返してきたのに。

「満智、好きだよ。俺とつき合おう?」
自分から出た言葉が、疑問形だったのか、断定だったのか俺にもわからない。

驚きすぎたのか零れ落ちそうに見開かれた瞳は、俺だけを映していた。

それだけで俺の気持ちが満たされたことを君は知らないだろう?

今まで過ごした時間は決して特別な日なんかじゃないと思っていた。
でも、すべてが特別だと気づいた。傲慢だと言われようが、どうしても伝えたいーー。

「好きだよ。ずっとずっと」

夕日の紅い光が、白く変わったーーーーー。