七月二十九日、午後六時四十八分。

あの夏、見慣れた町並みや普通の日常が、一瞬にして奪われてしまった。





黙祷(もくとう)

三年前の夏の日と、同時刻。
防災スピーカーから響いてきた声に両手を合わせると、そっと目を閉じた私は心の中で語りかけた。


海斗(かいと)、元気ですか?
海斗のいる場所も夏ですか?
蒸し暑いですか?肌は灼けましたか?
ブルーハワイのかき氷は食べた?


海斗、この町が見えていますか?

少しずつ戻っていく町並みの中、私はなんとか生きています。