月曜日。
「送り狼にならなかったか?」
 亘先輩がからかうように耳打ちしてきた。僕は少したじろいで、
「え、えっと……。未遂、でしょうか?」
 と返した。
「え!? マジかよ!?」
 あの蘭に!? という顔で亘先輩が言ってくる。
「意外に可愛いところもありますよ」
 そう言った僕に、亘先輩は信じられないというように笑った。
「蘭にねえ」
「落としにかかるので、邪魔しないでくださいね」
 僕は亘先輩に釘を刺した。
「しないしない」
 亘先輩は笑ってそう言ったけれど、分からない。ライバルが増えないうちに彼女にしなければ。それも来年、蘭先輩が卒業して結婚させられないうちに。そして、僕が蘭先輩をもらいに行く。決意を新たにしていると、
「おはよう~」
 金曜の夜とは別人の、普段の蘭先輩が研究室に入ってきた。
「おはようございます!」
 僕は満面の笑みで蘭先輩に挨拶をした。
 蘭先輩は僕を見て、一瞬瞳をうろうろとさせた。その頬がほんのり赤かった。
 そんな蘭先輩を僕はもう可愛いとしか思えなくなっている。

 待ってろよ、蘭先輩。きっとその心を掴んでみせる!

                                         了