大学生になって、酒の味を覚えた。

 僕の専攻している理学部Aは人数が少なく、仲が良い。それで一緒に飲むことが多い。

 理学部Aに女子生徒は二人しかいない。

 一人は宮城香奈先輩。修士二年だ。もう一人は学部三年の羽鳥蘭先輩。

 香奈先輩は、生真面目という他は掴みどころのない大人の女性で、黒髪のショートカットに眼鏡がよく似合っている。ちなみに香奈先輩は下戸だ。なので学科の飲み会でも飲まない。一緒に飲めたらまた違った面が見られるかもしれないのだろうと思うと少し残念だ。

 蘭先輩は竹を割ったようなさっぱりした性格の先輩。普段から声が大きく、よく笑い、よくお酒も飲む。まあ、悪く言えば男のような女性だ。良く言えば親しみやすくて面白い。

 偏見かもしれないが、理学部Aにくる女性なのだからそんなものなのかもしれない。もちろんそんな二人を恋愛対象の女性として見たことはない。申し訳ないけれど。


 理学部Aの酒好きメンバーといえば決まっていて、修士二年の名岸亘先輩、学部四年の川野浩史先輩。そして、蘭先輩と僕、山口修だ。

 教授のゼミが終わったり、実験が一段落したりすると、この四人のメンバーでお疲れさん会と称して飲みに行く。いつものことだ。