俺はヒーリングを使い、粉になった属性探知機をもとに戻しておいた。
まあ、俺が壊したわけだしな。
そして、名残惜しそうに俺を見つめる奈々と別れてから、俺はそそくさ海鮮丼専門店へと向かった。
金欠の俺を心配してくれた店長が、アインギフトというものを送ってくれた。
俺はそのギフトを使い、有名店で海鮮丼特盛りを持ち帰りで注文し、家に帰った。
家について玄関ドアを開くと同時に制服姿の美少女が俺を迎えてくれる。
「ただいま」
「お兄ちゃん!おかえり!」
長い黒髪を靡かせ、鮮烈な紫色の瞳は輝いている。
だが、やがて妹は、俺の手に握り込まれているビニール袋を見て小首を傾げた。
「お兄ちゃん、それ何?」
「海鮮丼な」
「か、海鮮丼!?」
妹はいきなり涎を垂らし続ける。
「んぐんぐ……おいしいよ!お兄ちゃん!」
「いっぱい食べて」
凄まじい勢いで海鮮丼を平らげてゆく姿を見ると、なぜかとても心が落ち着く。
だけど、この海鮮丼は店長がくれたものだ。
しっかり金を稼いでお返しして行こう。
そう意気込んで俺の分を妹に譲りながら食べていると、あっという間に食事が終わってしまった。
満足げにげっぷをする妹を見て、俺は口を開いた。
「理恵」
「ん?」
「学費のことは心配するな。なんとかなりそうだ」
「ほ、本当なの!?」
「ああ。バイト先の高砂さんが融通するって言ってくれた。nowtubeの方も収益化の申請さえ通ればそこそこの広告収入が発生するし、ダンジョン協会側も俺が倒したハイランクのアイテムを買い取ってくれるらしい」
「やっと……」
「ああ。この貧乏な生活がちょっとはマシになるかもな」
理恵は感動した表情で俺に飛び込んできた。
「やっと私たち、幸せになれるよ……お兄ちゃん……私、嬉しすぎて……」
理恵は俺の胸に抱きついて泣き始める。
俺は申し訳ない気持ちを込めて、理恵の背中を優しくさすった。
「これからはお金いっぱい稼いで、理恵の欲しいものたくさん買ってあげるぞ」
「お兄ちゃん……」
しばし妹を甘やかしていたら、何か思いついたように目を丸くして俺を上目遣いしてきた。
紫色の瞳がイキイキしている。
「奈々先輩、お兄ちゃんのところに行ってない?」
「あ、来たよ。んで奈々と一緒に属性を測りに日本ダンジョン協会へ行ってね」
「……お兄ちゃん」
「ん?」
「なんで下の名前で呼んでるの?」
「っ!」
妹の目の色が急になくなり、鋭い視線を向けてきた。
他の女子の話となると、すぐこんな態度取るんだよな……
奈々も似たような視線を向けてきたし、やっぱり女子は分からない生き物だ。
「自然な流れ……といいましょうか」
なんで俺は敬語で話してるんだ?
「……んで、奈々先輩とダンジョン協会に行って何をした?」
「属性を測りに行ったって言っただろ……」
「そうね」
分かったならなぜ聞くんだ?
理恵が俺の方にもっと強く体を寄せてくるけど、俺は突っ込むことなく口を開いた。
「俺、全ての属性を持っているっぽくて」
「え、えええええ!?!?!?」
妹の目はすぐに鮮烈な紫色に戻り一瞬驚くが、やがて口の端をあげてはドヤがを作る。
「お兄ちゃん……やっぱり私のお兄ちゃんは最高おおおおおお!!!!私、いつも言ってたでしょ!?お兄ちゃんは最強って!!人たちが、社会がお兄ちゃんを否定していても、私は……ずっと夢見てた……お兄ちゃんが認められる日を!」
「うっ!理恵……ちょっと……息ができん」
「おおおおにいいいいちゃんんん!!」
理恵は俺に頬ずりしながら完全に俺をロックし、殺す勢いで俺を抱き締めている。
X X X
躑躅家
裕介と別れた奈々は虚な目をしながら家へと向かった。
途中、彼女の見た目に惚れ込んだナンパ男が彼女に接近するも、
「へい、かわいいお嬢ちゃん!俺とお茶しない?」
「……」
「俺と遊ばなーい?」
「……」
ナンパ男の声は奈々に全く届かず、彼女はずっと虚な目をして歩いた。
「ん?なんだあの子?クスリでもしてんのか?」
やっと家に着いた奈々。
時間的にそろそろ夕食の時間だ。
「ただいま戻りました……」
奈々の声を聞いて二人が急いで走ってきた。
「奈々、おかえり」
「夕食作っておいたからご飯まだなら食べなさい」
「お姉ちゃん、ママ……二人とも仕事あるんじゃ……」
自分の姉と母。
自分にとってかけがえのない大切な存在だ。
自分の精神的支え、自分の安らぎ、自分の全て。
だけど、
最近はある存在が自分お頭の中で離れられない。
そんな自分の気持ちを見透かしているとでもいうように、エプロン姿の母は口を開く。
「友梨から話は聞いているのよ。その顔だと、会ってきたのよね?」
「……うん」
「友梨、あの方の話が聞きたくて、収録を早めに終えてダッシュできたのよ。もちろん、私もね」
「……」
「……」
制服姿の友梨はスカートをぎゅっと握り締めて恥ずかしそうに目を逸らしている。
母の早苗は自分が産んだ二人を見て、妖艶な笑みを浮かべる。
「今日のメニューは卵を多めに使った親子丼よ」
三人は卵を多めに使った親子丼を食べたのち、ティータイムを持つ。
二人は大人気インフルエンサー、一人は有名女優。
なので、こうやって三人揃って食事をしたり、ティータイムを持つのは久しぶりだ。
「奈々、伝説の拳様……岡田さんと何があったの?」
話を切り出したのは友梨の方だった。
奈々は顔をピンク色に染め、潤った唇を動かした。
「すごかった……」
「奈々……」
奈々はいつも小悪魔っぽく振る舞い、多くの男を手玉に取るようなタイプの女の子だ。
ゆえに、いくらイケイケな感じの男が近づいても表情一つ変えないはずだが、
今の彼女は
まるで、初めて恋を知った時の乙女の表情だ。
そんな妹を見た友梨はスカートをもっとぎゅっと握り込み、落ち着きのない様子を見せる。
奈々は口を開いた。
「裕介って、中卒だから無能力者ということになってるじゃん?だから、実際どういう属性を持っているのか測りに行ったの……っ」
奈々は徐々に息を切らし、モジモジする。
「……」
「……」
ママの早苗と姉の友梨がもどかしそうな表情を奈々に向けてきた。
だが、二人の瞳には期待と希望が宿っている。
そんな二人を見て、奈々は蕩ける顔で
「全属性持ちよ。そして、属性探知機が壊れるほどの強力なマナも持ってる」
「「っ!!!!!!!」」
驚きのあまりに、二人は電気でも走っているかのように体を震わせる。
うち友梨が不安そうに言葉を発する。
「早くなんとかしないと……あんな人、放っておくと他の女に……」
姉の言葉を聞いて奈々も言う。
「そうよ。まだ女耐性ないみたいだし、今のうちにロックしないと……もうちょっと一緒にいたかったけど、理恵ちゃんの面倒見ないとって言って、なんの躊躇いもなく行っちゃって……」
気ばかり焦る美人姉妹。
そんな二人を見て母の早苗は微笑みを浮かべる。
「ふふふ、不思議よね。好きでもない男は飽きるほど寄ってくるんだけど、いざ自分たちが欲しい男は遠くへ行っちゃうの」
「「……」」
母の言葉に娘たちはしゅんと落ち込んだ。
「でもね、だから燃えちゃうの……してもらうことばかり考えたら機会は訪れない。自分から行かないとね」
「「……」」
落ち込んでいた二人は目をパチパチさせて互いを見つめ合う。
早苗は続ける。
「私は、あの方に私たちの家族になって欲しいわ。あんなに強力で謙遜で世俗に塗れてない方が私たちを守ってくださる……ん……きっと、天国にいる主人もそれを願っているに違いないわ……」
母のやるせ無い表情に二人もふむと頷く。
「でもね、家族というものはお互い支え合うものなの。だからね、私たちも二人に愛を注がないと……二人が完全に満たされるまで……」
「二人に……」
「愛を……」
意表をつかれたように二人は目を丸くした。
そう。
自分は愚かだった。
自分を助けてくれた男の強さに気を取られ、その人が大事にする存在を蔑ろにするところだった。
それはだめ。
絶対あってはならないことだ。
今自分たちがやろうとしているのは、泥棒がやるようなことだ。
と、美人姉妹が考えていたら、
母が続ける。
「それでね、二人が私たちの本当の家族になったらね、守られること以外にも、良いことがたくさんあると思うの」
母が天井を見上げて嬉しそうに言うと、奈々が足を動かしながら問う。
「良いことって何?具体的に教えて……」
「……うん。私も気になるわ」
友梨も奈々に倣い、母に視線で続きを促す。
早苗は、そんな二人の顔を見てから紅茶を飲んだ。
口を離した瞬間、唾液が糸を引いて、早苗の唇と肌に付着した。
そして蕩けるような表情で自分の爆のつく両胸を鷲掴みにしながら
「想像に任せるわ」
「……ママ、私部屋に行く」
「わ、私も……」
二人は立ち上がりそそくさそれぞれの部屋へと向かう。
彼女らが座っていた椅子からは、オスを誘おうメスの強烈なフェロモンが漂って、このリビングを埋め尽くした。
「あらあら、一体お部屋でなにをするつもりかしら……うふふ」
娘らの背中を見て、小声で言ったのち、もっと小さな声音で呟く。
「私はトイレに行こうかしら」
まあ、俺が壊したわけだしな。
そして、名残惜しそうに俺を見つめる奈々と別れてから、俺はそそくさ海鮮丼専門店へと向かった。
金欠の俺を心配してくれた店長が、アインギフトというものを送ってくれた。
俺はそのギフトを使い、有名店で海鮮丼特盛りを持ち帰りで注文し、家に帰った。
家について玄関ドアを開くと同時に制服姿の美少女が俺を迎えてくれる。
「ただいま」
「お兄ちゃん!おかえり!」
長い黒髪を靡かせ、鮮烈な紫色の瞳は輝いている。
だが、やがて妹は、俺の手に握り込まれているビニール袋を見て小首を傾げた。
「お兄ちゃん、それ何?」
「海鮮丼な」
「か、海鮮丼!?」
妹はいきなり涎を垂らし続ける。
「んぐんぐ……おいしいよ!お兄ちゃん!」
「いっぱい食べて」
凄まじい勢いで海鮮丼を平らげてゆく姿を見ると、なぜかとても心が落ち着く。
だけど、この海鮮丼は店長がくれたものだ。
しっかり金を稼いでお返しして行こう。
そう意気込んで俺の分を妹に譲りながら食べていると、あっという間に食事が終わってしまった。
満足げにげっぷをする妹を見て、俺は口を開いた。
「理恵」
「ん?」
「学費のことは心配するな。なんとかなりそうだ」
「ほ、本当なの!?」
「ああ。バイト先の高砂さんが融通するって言ってくれた。nowtubeの方も収益化の申請さえ通ればそこそこの広告収入が発生するし、ダンジョン協会側も俺が倒したハイランクのアイテムを買い取ってくれるらしい」
「やっと……」
「ああ。この貧乏な生活がちょっとはマシになるかもな」
理恵は感動した表情で俺に飛び込んできた。
「やっと私たち、幸せになれるよ……お兄ちゃん……私、嬉しすぎて……」
理恵は俺の胸に抱きついて泣き始める。
俺は申し訳ない気持ちを込めて、理恵の背中を優しくさすった。
「これからはお金いっぱい稼いで、理恵の欲しいものたくさん買ってあげるぞ」
「お兄ちゃん……」
しばし妹を甘やかしていたら、何か思いついたように目を丸くして俺を上目遣いしてきた。
紫色の瞳がイキイキしている。
「奈々先輩、お兄ちゃんのところに行ってない?」
「あ、来たよ。んで奈々と一緒に属性を測りに日本ダンジョン協会へ行ってね」
「……お兄ちゃん」
「ん?」
「なんで下の名前で呼んでるの?」
「っ!」
妹の目の色が急になくなり、鋭い視線を向けてきた。
他の女子の話となると、すぐこんな態度取るんだよな……
奈々も似たような視線を向けてきたし、やっぱり女子は分からない生き物だ。
「自然な流れ……といいましょうか」
なんで俺は敬語で話してるんだ?
「……んで、奈々先輩とダンジョン協会に行って何をした?」
「属性を測りに行ったって言っただろ……」
「そうね」
分かったならなぜ聞くんだ?
理恵が俺の方にもっと強く体を寄せてくるけど、俺は突っ込むことなく口を開いた。
「俺、全ての属性を持っているっぽくて」
「え、えええええ!?!?!?」
妹の目はすぐに鮮烈な紫色に戻り一瞬驚くが、やがて口の端をあげてはドヤがを作る。
「お兄ちゃん……やっぱり私のお兄ちゃんは最高おおおおおお!!!!私、いつも言ってたでしょ!?お兄ちゃんは最強って!!人たちが、社会がお兄ちゃんを否定していても、私は……ずっと夢見てた……お兄ちゃんが認められる日を!」
「うっ!理恵……ちょっと……息ができん」
「おおおおにいいいいちゃんんん!!」
理恵は俺に頬ずりしながら完全に俺をロックし、殺す勢いで俺を抱き締めている。
X X X
躑躅家
裕介と別れた奈々は虚な目をしながら家へと向かった。
途中、彼女の見た目に惚れ込んだナンパ男が彼女に接近するも、
「へい、かわいいお嬢ちゃん!俺とお茶しない?」
「……」
「俺と遊ばなーい?」
「……」
ナンパ男の声は奈々に全く届かず、彼女はずっと虚な目をして歩いた。
「ん?なんだあの子?クスリでもしてんのか?」
やっと家に着いた奈々。
時間的にそろそろ夕食の時間だ。
「ただいま戻りました……」
奈々の声を聞いて二人が急いで走ってきた。
「奈々、おかえり」
「夕食作っておいたからご飯まだなら食べなさい」
「お姉ちゃん、ママ……二人とも仕事あるんじゃ……」
自分の姉と母。
自分にとってかけがえのない大切な存在だ。
自分の精神的支え、自分の安らぎ、自分の全て。
だけど、
最近はある存在が自分お頭の中で離れられない。
そんな自分の気持ちを見透かしているとでもいうように、エプロン姿の母は口を開く。
「友梨から話は聞いているのよ。その顔だと、会ってきたのよね?」
「……うん」
「友梨、あの方の話が聞きたくて、収録を早めに終えてダッシュできたのよ。もちろん、私もね」
「……」
「……」
制服姿の友梨はスカートをぎゅっと握り締めて恥ずかしそうに目を逸らしている。
母の早苗は自分が産んだ二人を見て、妖艶な笑みを浮かべる。
「今日のメニューは卵を多めに使った親子丼よ」
三人は卵を多めに使った親子丼を食べたのち、ティータイムを持つ。
二人は大人気インフルエンサー、一人は有名女優。
なので、こうやって三人揃って食事をしたり、ティータイムを持つのは久しぶりだ。
「奈々、伝説の拳様……岡田さんと何があったの?」
話を切り出したのは友梨の方だった。
奈々は顔をピンク色に染め、潤った唇を動かした。
「すごかった……」
「奈々……」
奈々はいつも小悪魔っぽく振る舞い、多くの男を手玉に取るようなタイプの女の子だ。
ゆえに、いくらイケイケな感じの男が近づいても表情一つ変えないはずだが、
今の彼女は
まるで、初めて恋を知った時の乙女の表情だ。
そんな妹を見た友梨はスカートをもっとぎゅっと握り込み、落ち着きのない様子を見せる。
奈々は口を開いた。
「裕介って、中卒だから無能力者ということになってるじゃん?だから、実際どういう属性を持っているのか測りに行ったの……っ」
奈々は徐々に息を切らし、モジモジする。
「……」
「……」
ママの早苗と姉の友梨がもどかしそうな表情を奈々に向けてきた。
だが、二人の瞳には期待と希望が宿っている。
そんな二人を見て、奈々は蕩ける顔で
「全属性持ちよ。そして、属性探知機が壊れるほどの強力なマナも持ってる」
「「っ!!!!!!!」」
驚きのあまりに、二人は電気でも走っているかのように体を震わせる。
うち友梨が不安そうに言葉を発する。
「早くなんとかしないと……あんな人、放っておくと他の女に……」
姉の言葉を聞いて奈々も言う。
「そうよ。まだ女耐性ないみたいだし、今のうちにロックしないと……もうちょっと一緒にいたかったけど、理恵ちゃんの面倒見ないとって言って、なんの躊躇いもなく行っちゃって……」
気ばかり焦る美人姉妹。
そんな二人を見て母の早苗は微笑みを浮かべる。
「ふふふ、不思議よね。好きでもない男は飽きるほど寄ってくるんだけど、いざ自分たちが欲しい男は遠くへ行っちゃうの」
「「……」」
母の言葉に娘たちはしゅんと落ち込んだ。
「でもね、だから燃えちゃうの……してもらうことばかり考えたら機会は訪れない。自分から行かないとね」
「「……」」
落ち込んでいた二人は目をパチパチさせて互いを見つめ合う。
早苗は続ける。
「私は、あの方に私たちの家族になって欲しいわ。あんなに強力で謙遜で世俗に塗れてない方が私たちを守ってくださる……ん……きっと、天国にいる主人もそれを願っているに違いないわ……」
母のやるせ無い表情に二人もふむと頷く。
「でもね、家族というものはお互い支え合うものなの。だからね、私たちも二人に愛を注がないと……二人が完全に満たされるまで……」
「二人に……」
「愛を……」
意表をつかれたように二人は目を丸くした。
そう。
自分は愚かだった。
自分を助けてくれた男の強さに気を取られ、その人が大事にする存在を蔑ろにするところだった。
それはだめ。
絶対あってはならないことだ。
今自分たちがやろうとしているのは、泥棒がやるようなことだ。
と、美人姉妹が考えていたら、
母が続ける。
「それでね、二人が私たちの本当の家族になったらね、守られること以外にも、良いことがたくさんあると思うの」
母が天井を見上げて嬉しそうに言うと、奈々が足を動かしながら問う。
「良いことって何?具体的に教えて……」
「……うん。私も気になるわ」
友梨も奈々に倣い、母に視線で続きを促す。
早苗は、そんな二人の顔を見てから紅茶を飲んだ。
口を離した瞬間、唾液が糸を引いて、早苗の唇と肌に付着した。
そして蕩けるような表情で自分の爆のつく両胸を鷲掴みにしながら
「想像に任せるわ」
「……ママ、私部屋に行く」
「わ、私も……」
二人は立ち上がりそそくさそれぞれの部屋へと向かう。
彼女らが座っていた椅子からは、オスを誘おうメスの強烈なフェロモンが漂って、このリビングを埋め尽くした。
「あらあら、一体お部屋でなにをするつもりかしら……うふふ」
娘らの背中を見て、小声で言ったのち、もっと小さな声音で呟く。
「私はトイレに行こうかしら」