数日後
元秘書side
「あはは……あははは……ざまみろ!あのクソ会長は殺されたし、ダンジョン協会は解体。血の女王様のおかげで、この世の中は変わりつつある!」
元秘書は嬉しそうにスマホに表示されているニュースを見ながらほくそ笑む。
「ふふふ、もっと頑張らないとね」
元秘書はSNSアプリを開いた。
自分のプロフィールを押す彼女。
ーーーー
血の女王様応援垢
フォロー中0
フォロワー2,000,433
ーーーー
「200万超えちゃった!!嬉しい!!」
元秘書は自分のアカウントのフォロワーが200万を超えたことで口角を吊り上げよがっている。
この女性は蘭子に助けられたことで、蘭子を崇めるようになった。
自分の弟を餌に性的要求をしてくる会長によってメンタルがズタズタになってゆく彼女に彗星のように現れた血の女王。
血の女王は全てを変えた。
貧乏でなんのコネもない自分を沼地から取り出してくれて、弟の問題もあっさり解決。
会長が殺されて以来、彼女は何かに取り憑かれたようにSNSのアカウントを使い、血の女王のことを応援する書き込みを残した。
SNSだけじゃない。
ネット掲示板、nowtube動画、自前で作ったビラ配りなどなど。
最初こそ運営から何度も垢BANを食らったが、彼女は挫けなかった。
アカウントが凍結されればまた作り、それを無限に繰り返した。
きっとSNSを管理する会社も政府に息がかかっているのだろう。
自分にはこれくらいしかできない。
というわけで死に物狂いで頑張った。
気がつくと、彼女はSNSやネット上の世論を誘導するできる大御所になっていた。
SNS利用者はこの元秘書が血の女王を賛美する書き込みを見て影響を受ける。
そして、ダンジョン協会のことや会長を批判する内容を読んで利用者も共に憤る。
少しでもダンジョン協会のことを擁護するコメントがあれば、政府のお金をもらいながら世論捜査をするスパイというレッテルを貼り付ける。
彼女を突き動かしたのは理不尽がもたらした怒りという感情だ。
結果、ネット世論を反ダンジョン協会、反既得権益に染めることに成功した。
もちろん、自分一人だけの功績ではない。
だが、
彼女はとてつもない達成感に満たされていた。
「もう垢BANしないわね。この前は必死になって私の邪魔をしたんだけど、もう運営も現実を受け入れたのか」
彼女はスマホをいじり続ける。
やがて何かに思いついたように目を丸くする。
「もうそろそろ弟帰ってくるし、ご飯作らないと」
彼女が美味しい料理を作り終わると、まるで図ったように弟が帰ってきた。
「お姉ちゃん!ただいま」
「おかえり!裕二!」
「あ、この匂いは……僕が大好きな豚の照り焼き!」
「そうよ」
エプロン姿の姉の明るい表情に、弟の裕二はピースをしてドヤ顔をする。
「実は僕ね、お金いっぱい稼いだんだ。これまでお偉い人たちが独占していた依頼をいっぱい受けて、今日の収入はなんと4万円!」
「え!?本当?普段より10倍は多い気するけど!」
「本当に信じられないよ。まさか、こんなに貰えるなんて……お姉ちゃん!もう僕たち貧乏じゃなくなるよ!お金いっぱい稼ぐから、もっと広くて快適な家に引っ越そうね!」
「裕二……」
感動した元秘書は弟を強く抱きしめる。
弟の裕二も感極まったように目を潤ませた。
元秘書は言う。
「ねえ、裕二」
「うん」
「もう理不尽な待遇を受けたとしても、泣き寝入りしちゃダメよ」
「……」
「ハンムラビ法典にも書かれているでしょ」
「目には目、歯には歯」
「そう。だから、もし裕二の大切なものを奪おうとする連中が現れたら、裕二はそいつらが最も大切にする存在を奪えばいい。お姉ちゃんが後押しするから」
自分の姉の言葉を聞いた裕二は一瞬戸惑ったように顔を顰めるが、やがて何かを決心したように納得顔でうんうん言う。
「だな。お姉ちゃんの言う通りだ。うん。そうする。我慢するのはよくない」
弟の返事に大変満足した元秘書は甘い声で言う。
「ご飯、一緒に食べよう」
X X X
都内の総合病院
「クソクソクソ!!なんでだあ!!」
荒波はベッドを叩きながら憤慨する。
「なんで精鋭部隊の俺が、負け組が行くようなところに配属されるんだよ!!なめてんのかああ!!っ!いたた」
怒る荒波。
彼の体には包帯が巻かれている。
祐介に蹴られたことで、だいぶ時間が経過しているにもかかわらず、荒波はいまだに苦しでいる。
そんな彼に電話がかかってきた。
「ん?後輩か。もしもし」
『先輩、無事ですか?』
「ああ。早く伝説の拳とやらと一線交えたくて仕方がないんだ」
『そうですか……ちなみに先輩は治安維持部隊に入るつもりですか?』
「馬鹿いえ!あんな給料の低いとこに誰が行くものか!」
『あはは!そうですね。実は俺も入りませんよ』
「……じゃ、お前はどこ行くんだ?」
『荒波先輩、やられっぱなしは悔しくないんですか?』
「いきなり何言ってんだ」
『先輩』
「あ?」
『奪われたものを取り返すために集まった組織があれば、先輩はそこに加わる考えはありますか?』
意味ありげに言う後輩に、
荒波は
気持ち悪い笑みを浮かべて、陰湿な言い方で言う。
「おい、なんでもっと早く言わなかったんだ?水臭いだろ?あははは!!」
『うへへ!先輩だからあえて言わなかったんすよ』
「なんで?」
『本来、ヒーローは遅れて登場するものですから!』
二人はスマホを隔てて、気色悪い笑みを十数秒間続ける。
元秘書side
「あはは……あははは……ざまみろ!あのクソ会長は殺されたし、ダンジョン協会は解体。血の女王様のおかげで、この世の中は変わりつつある!」
元秘書は嬉しそうにスマホに表示されているニュースを見ながらほくそ笑む。
「ふふふ、もっと頑張らないとね」
元秘書はSNSアプリを開いた。
自分のプロフィールを押す彼女。
ーーーー
血の女王様応援垢
フォロー中0
フォロワー2,000,433
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「200万超えちゃった!!嬉しい!!」
元秘書は自分のアカウントのフォロワーが200万を超えたことで口角を吊り上げよがっている。
この女性は蘭子に助けられたことで、蘭子を崇めるようになった。
自分の弟を餌に性的要求をしてくる会長によってメンタルがズタズタになってゆく彼女に彗星のように現れた血の女王。
血の女王は全てを変えた。
貧乏でなんのコネもない自分を沼地から取り出してくれて、弟の問題もあっさり解決。
会長が殺されて以来、彼女は何かに取り憑かれたようにSNSのアカウントを使い、血の女王のことを応援する書き込みを残した。
SNSだけじゃない。
ネット掲示板、nowtube動画、自前で作ったビラ配りなどなど。
最初こそ運営から何度も垢BANを食らったが、彼女は挫けなかった。
アカウントが凍結されればまた作り、それを無限に繰り返した。
きっとSNSを管理する会社も政府に息がかかっているのだろう。
自分にはこれくらいしかできない。
というわけで死に物狂いで頑張った。
気がつくと、彼女はSNSやネット上の世論を誘導するできる大御所になっていた。
SNS利用者はこの元秘書が血の女王を賛美する書き込みを見て影響を受ける。
そして、ダンジョン協会のことや会長を批判する内容を読んで利用者も共に憤る。
少しでもダンジョン協会のことを擁護するコメントがあれば、政府のお金をもらいながら世論捜査をするスパイというレッテルを貼り付ける。
彼女を突き動かしたのは理不尽がもたらした怒りという感情だ。
結果、ネット世論を反ダンジョン協会、反既得権益に染めることに成功した。
もちろん、自分一人だけの功績ではない。
だが、
彼女はとてつもない達成感に満たされていた。
「もう垢BANしないわね。この前は必死になって私の邪魔をしたんだけど、もう運営も現実を受け入れたのか」
彼女はスマホをいじり続ける。
やがて何かに思いついたように目を丸くする。
「もうそろそろ弟帰ってくるし、ご飯作らないと」
彼女が美味しい料理を作り終わると、まるで図ったように弟が帰ってきた。
「お姉ちゃん!ただいま」
「おかえり!裕二!」
「あ、この匂いは……僕が大好きな豚の照り焼き!」
「そうよ」
エプロン姿の姉の明るい表情に、弟の裕二はピースをしてドヤ顔をする。
「実は僕ね、お金いっぱい稼いだんだ。これまでお偉い人たちが独占していた依頼をいっぱい受けて、今日の収入はなんと4万円!」
「え!?本当?普段より10倍は多い気するけど!」
「本当に信じられないよ。まさか、こんなに貰えるなんて……お姉ちゃん!もう僕たち貧乏じゃなくなるよ!お金いっぱい稼ぐから、もっと広くて快適な家に引っ越そうね!」
「裕二……」
感動した元秘書は弟を強く抱きしめる。
弟の裕二も感極まったように目を潤ませた。
元秘書は言う。
「ねえ、裕二」
「うん」
「もう理不尽な待遇を受けたとしても、泣き寝入りしちゃダメよ」
「……」
「ハンムラビ法典にも書かれているでしょ」
「目には目、歯には歯」
「そう。だから、もし裕二の大切なものを奪おうとする連中が現れたら、裕二はそいつらが最も大切にする存在を奪えばいい。お姉ちゃんが後押しするから」
自分の姉の言葉を聞いた裕二は一瞬戸惑ったように顔を顰めるが、やがて何かを決心したように納得顔でうんうん言う。
「だな。お姉ちゃんの言う通りだ。うん。そうする。我慢するのはよくない」
弟の返事に大変満足した元秘書は甘い声で言う。
「ご飯、一緒に食べよう」
X X X
都内の総合病院
「クソクソクソ!!なんでだあ!!」
荒波はベッドを叩きながら憤慨する。
「なんで精鋭部隊の俺が、負け組が行くようなところに配属されるんだよ!!なめてんのかああ!!っ!いたた」
怒る荒波。
彼の体には包帯が巻かれている。
祐介に蹴られたことで、だいぶ時間が経過しているにもかかわらず、荒波はいまだに苦しでいる。
そんな彼に電話がかかってきた。
「ん?後輩か。もしもし」
『先輩、無事ですか?』
「ああ。早く伝説の拳とやらと一線交えたくて仕方がないんだ」
『そうですか……ちなみに先輩は治安維持部隊に入るつもりですか?』
「馬鹿いえ!あんな給料の低いとこに誰が行くものか!」
『あはは!そうですね。実は俺も入りませんよ』
「……じゃ、お前はどこ行くんだ?」
『荒波先輩、やられっぱなしは悔しくないんですか?』
「いきなり何言ってんだ」
『先輩』
「あ?」
『奪われたものを取り返すために集まった組織があれば、先輩はそこに加わる考えはありますか?』
意味ありげに言う後輩に、
荒波は
気持ち悪い笑みを浮かべて、陰湿な言い方で言う。
「おい、なんでもっと早く言わなかったんだ?水臭いだろ?あははは!!」
『うへへ!先輩だからあえて言わなかったんすよ』
「なんで?」
『本来、ヒーローは遅れて登場するものですから!』
二人はスマホを隔てて、気色悪い笑みを十数秒間続ける。