「……やっぱり祐介の前だと、どうしても素を見せてしまうのね」
「……」
「まあ、素を見せるより、見つけられるといった方が正しいかしら」
早苗さんの声は切羽詰まった感じはなく、色気が混じった艶美がある。
「さ、早苗さん……」
俺が早苗さんの軟肉を感じつつ彼女の名前を呼ぶも、彼女は色褪せた瞳で俺を捉えるままだ。
「ふふ、この気持ち、久しぶりかも……」
彼女が漂わせる香りに、甘酸っぱい匂いが加わる。
俺の男としての本能がこの状況はまずいと叫んでいる。
「ねえ、祐介。私たちはあなたの家族よ。だからね、我慢しなくていいから」
「……」
我慢ですか……
俺は優しく早苗さんを引っぺがした。
「あら……」
早苗さんは寂しそうに俺を見つめているが、目は鷹のごとく鋭い。
俺はそんな彼女に言う。
「蘭子さんの問題が先です」
「……」
「蘭子さんの問題が解決したら、本当に我慢しませから」
真顔で言った俺の言葉に
「っ!!!!!」
早苗さんは体に電気でも走っているのか、釣ったばかりの鯖のように下半身を震わせる。
「ふふふ、そうね。でも、無理はしないで。私たちは祐介のことをずっと見てるわよ」
「っ!!分かりました……」
早苗さんの視線は、俺が今まで見てきたどんなモンスターよりも鋭く、俺を離してくれそうになかった。
躑躅家の女性と関わるたびに、強さだけが全てではないことを分からせられる。
俺は早苗さんに勝てない。
X X X
翌日
早苗さんの気配りがあったのか、昨日は一人でちゃんと眠ることができた。
それより、
「……」
俺を腹立たせる事案が起き抜けの気だるさを感じる自分に舞い込んできた。
スマホを確認してみたら、
『ダンジョン専門家「今こそ伝説の拳様が動くべき」』
『ダンジョン協会理事会「血の女王は日本に破滅をもたらした。伝説の拳の助けが必要」』
『議員連盟「伝説の拳様は救国の英雄。どうか今回も」』
『ダンジョン市民団体「今でも遅くない。でんこ様、ダンジョン協会と国会議員を救って」』
ニャフーのトップニュースに俺の通り名を冠した見出しが溢れかえっている。
「なんなんだ……これは」
俺を賛美する記事や、俺の助けがいるといった内容がほとんどだ。
俺は部屋を出てリビングへと行く。
そしたら、ニュース番組が流れていて、ニャフーと同じく俺を助けが必要だの、血の女王を倒してほしいだの、一度も見たことのない光景が広がっている。
キングゴーレムや、キングアイスドラゴンをやっつけた時は、俺の活躍はほとんど紹介されずに、ダンジョン協会の手柄であるかのような報道ばかり流れていた分、違和感が半端ない。
そう感じるのは、俺だけではないらしい。
「何よ……これまで散々無視してきたくせに、こういう時だけ持ち上げるなんて……」
ソファーに座っている寝巻き姿の妹が悔しそうにしながらテレビを見ている。
「それな!まじなんなの?馬鹿馬鹿しい。私の祐介があんな奴らに都合よく利用されるの、まじで嫌なんだけど?」
短いパンツにタンクトップ姿の奈々がマジトーンで言っている。
私の祐介か……
「おそらく、偉い人たちが動いているんでしょうね。祐介を利用して、自分達は助かろうと。まあ、テレビとかポータルサイトだと世論操作は可能だけれど、SNSは無理なのよね」
奈々と同じ格好の友梨姉もお怒り中だ。
やがて3人は俺の存在に気がつき、目を丸くする。
「お兄ちゃん」
「祐介」
「祐介くん」
3人は俺を心配そうに見つめてきた。
やることは決まっている。
「おはようみんな。俺、ちょっとSSランクのダンジョンに言って配信してくる」
俺の言葉に美人姉妹はドヤ顔を浮かべる。
「奇遇ね、祐介、私も今日生配信やる予定だよ」
「私もやるわ」
X X X
SNS上
『ザア!!血の女王様のやってること、正しいよな』
『勝ち組がいい依頼全部持っていっちゃうし、大企業とダンジョン協会との癒着関係まじうざ。ワイは零細探索者だぜ』
『てか、中卒が探索者になれないのあり得なくない?』
『まあ、上層部が変わらないなら潰すしかないよな』
『血の女王様は我々の気持ちを代弁してくれている。責められない。むしろ応援する』
『既得権益に縋り付く耄碌ジジイはいらん。でもこんなの言っちゃうと差別だとか声のでかいやつが突っ込んでくるよな。図星言われて逆ギレでもしてんのか?www』
『ほんま、権力に縋り付く奴らじゃなくて能力あるやつを優遇しろよ。でんこ様のように』
『ダンジョン協会と国会議員がちゃんとしてたら、血の女王は誕生してないんだろうな』
『今まで偉いことを言ってきて、良い思いをたくさんしてたやつら、今頃おしっこ漏れておむつでもつけてんだろうwww』
『恵まれてない我々はポップコーンでも食べながら静観するとしよう』
『外やばっ、血の女王様を崇める人たちが抗議デモやってるで』
『強盗事件も起きてるで』
『治安わる』
『てか、でんこ様ってこの状況をどう思っているんだろう。ライブとかしないかな?』
「……」
「まあ、素を見せるより、見つけられるといった方が正しいかしら」
早苗さんの声は切羽詰まった感じはなく、色気が混じった艶美がある。
「さ、早苗さん……」
俺が早苗さんの軟肉を感じつつ彼女の名前を呼ぶも、彼女は色褪せた瞳で俺を捉えるままだ。
「ふふ、この気持ち、久しぶりかも……」
彼女が漂わせる香りに、甘酸っぱい匂いが加わる。
俺の男としての本能がこの状況はまずいと叫んでいる。
「ねえ、祐介。私たちはあなたの家族よ。だからね、我慢しなくていいから」
「……」
我慢ですか……
俺は優しく早苗さんを引っぺがした。
「あら……」
早苗さんは寂しそうに俺を見つめているが、目は鷹のごとく鋭い。
俺はそんな彼女に言う。
「蘭子さんの問題が先です」
「……」
「蘭子さんの問題が解決したら、本当に我慢しませから」
真顔で言った俺の言葉に
「っ!!!!!」
早苗さんは体に電気でも走っているのか、釣ったばかりの鯖のように下半身を震わせる。
「ふふふ、そうね。でも、無理はしないで。私たちは祐介のことをずっと見てるわよ」
「っ!!分かりました……」
早苗さんの視線は、俺が今まで見てきたどんなモンスターよりも鋭く、俺を離してくれそうになかった。
躑躅家の女性と関わるたびに、強さだけが全てではないことを分からせられる。
俺は早苗さんに勝てない。
X X X
翌日
早苗さんの気配りがあったのか、昨日は一人でちゃんと眠ることができた。
それより、
「……」
俺を腹立たせる事案が起き抜けの気だるさを感じる自分に舞い込んできた。
スマホを確認してみたら、
『ダンジョン専門家「今こそ伝説の拳様が動くべき」』
『ダンジョン協会理事会「血の女王は日本に破滅をもたらした。伝説の拳の助けが必要」』
『議員連盟「伝説の拳様は救国の英雄。どうか今回も」』
『ダンジョン市民団体「今でも遅くない。でんこ様、ダンジョン協会と国会議員を救って」』
ニャフーのトップニュースに俺の通り名を冠した見出しが溢れかえっている。
「なんなんだ……これは」
俺を賛美する記事や、俺の助けがいるといった内容がほとんどだ。
俺は部屋を出てリビングへと行く。
そしたら、ニュース番組が流れていて、ニャフーと同じく俺を助けが必要だの、血の女王を倒してほしいだの、一度も見たことのない光景が広がっている。
キングゴーレムや、キングアイスドラゴンをやっつけた時は、俺の活躍はほとんど紹介されずに、ダンジョン協会の手柄であるかのような報道ばかり流れていた分、違和感が半端ない。
そう感じるのは、俺だけではないらしい。
「何よ……これまで散々無視してきたくせに、こういう時だけ持ち上げるなんて……」
ソファーに座っている寝巻き姿の妹が悔しそうにしながらテレビを見ている。
「それな!まじなんなの?馬鹿馬鹿しい。私の祐介があんな奴らに都合よく利用されるの、まじで嫌なんだけど?」
短いパンツにタンクトップ姿の奈々がマジトーンで言っている。
私の祐介か……
「おそらく、偉い人たちが動いているんでしょうね。祐介を利用して、自分達は助かろうと。まあ、テレビとかポータルサイトだと世論操作は可能だけれど、SNSは無理なのよね」
奈々と同じ格好の友梨姉もお怒り中だ。
やがて3人は俺の存在に気がつき、目を丸くする。
「お兄ちゃん」
「祐介」
「祐介くん」
3人は俺を心配そうに見つめてきた。
やることは決まっている。
「おはようみんな。俺、ちょっとSSランクのダンジョンに言って配信してくる」
俺の言葉に美人姉妹はドヤ顔を浮かべる。
「奇遇ね、祐介、私も今日生配信やる予定だよ」
「私もやるわ」
X X X
SNS上
『ザア!!血の女王様のやってること、正しいよな』
『勝ち組がいい依頼全部持っていっちゃうし、大企業とダンジョン協会との癒着関係まじうざ。ワイは零細探索者だぜ』
『てか、中卒が探索者になれないのあり得なくない?』
『まあ、上層部が変わらないなら潰すしかないよな』
『血の女王様は我々の気持ちを代弁してくれている。責められない。むしろ応援する』
『既得権益に縋り付く耄碌ジジイはいらん。でもこんなの言っちゃうと差別だとか声のでかいやつが突っ込んでくるよな。図星言われて逆ギレでもしてんのか?www』
『ほんま、権力に縋り付く奴らじゃなくて能力あるやつを優遇しろよ。でんこ様のように』
『ダンジョン協会と国会議員がちゃんとしてたら、血の女王は誕生してないんだろうな』
『今まで偉いことを言ってきて、良い思いをたくさんしてたやつら、今頃おしっこ漏れておむつでもつけてんだろうwww』
『恵まれてない我々はポップコーンでも食べながら静観するとしよう』
『外やばっ、血の女王様を崇める人たちが抗議デモやってるで』
『強盗事件も起きてるで』
『治安わる』
『てか、でんこ様ってこの状況をどう思っているんだろう。ライブとかしないかな?』