「な、なにを言っているんだ?」
俺は作り笑いしながら誤魔化そうとした。
しかし、俺の背中からはしきりなしに汗が出ている。
別段熱いわけでもなかろうに。
この三人が向けてくるギロチンより鋭い視線を感じるたびに、俺の自律神経に異常が現れる気がして気が気じゃない。
オドオドしている俺に奈々が至近距離にまでやってきてスンスンと整った鼻で匂いを嗅ぎだす。
俺の頭から始めて、肩、胸、お腹、股間まで念入りに匂いを吸い続けた。
赤色の目を細める奈々は俺を睨んできた。
「女の汗の匂い」
「っ!」
なんだよ。
犬かよ。
俺が奈々の嗅覚にびっくり仰天していたら、友梨姉が試すような眼差しを向けてくる。
「ふん〜祐介くんは生配信が終わった後、女の汗の匂いが体につくほど何かしらの激しい行為に耽ったってことで良いかしら?」
「そ、それは……」
激しい行為。
激しい戦闘をしたわけだから、友梨姉の言っていることに間違いはない。
人を誤解させてしまいかねない言い方ではあるが……
血の女王の話はなるべく二人にはしたくない。
友梨姉と奈々のおばさんに当たる人が血の女王だと知ったら、二人はどんな反応を見せるのだろう。
少なくとも、二人が心の準備ができているという確証がない限り言うべきではない。
そんなことを考えていると、奈々が急に震えながら俺の右手を握ってきた。
「大人気配信者になったからといって、早速ハメ外して他の女とやるのは、絶対許さないよ。今すぐ、祐介の子を孕んだとライブ配信しないと……」
「え、ええ!?!?ちょ、ちょっと!なに言ってる!?」
俺が奈々顔を見て必死に問うが、とっくに色のない瞳の奈々は俺の話を全然聞かない。
「奈々、私とコラボしましょう。私たち、伝説の拳様の赤ちゃんを妊娠しましたと」
「あら、お姉ちゃん、それいいね」
色褪せたヤンデレ顔の二人は各々スマホを取り出す。
まずい。
二人のチャンネルを足せば、普通のテレビ番組より影響力大きいからまずいだろ。
ありもしないことで伊藤まこなんちゃをはるかに凌駕するクズ扱いされるのも時間の問題だ。
いや、それは問題じゃない。
問題なのは、
二人が勘違いして不安がっていることだ。
俺は二人の肩を強く握る。
「「っ!!」」
そしたら、二人が戸惑ったように俺を見つめて来た。
だが、相変わらずヤンデレ顔だ。
体つきと顔は女神そのものだが、ヤンデレ顔ってのがなかなかシュールだな。
「違うよ。んなことしてないって」
「「……」」
「してない。するわけないだろ」
俺の顔をじっと見つめる二人の瞳の色は徐々に元の色を取り戻す。
「そこまで真顔で言うのなら、まあ……信じる」
「……そうね。信じるのも大事だから」
「あはは……ありがとう」
よかった。
本当によかった。
途轍もなく安堵が俺の心を満たした。
信じてくれた二人にも感謝だが、俺が彼女ら以外の女性とそういうことをしてない事実が俺に尽きることのない安らぎを与えてくれている。
おそらく、俺が嘘をつこうものなら、二人はすぐに気がつくだろう。
彼女らは俺の顔の筋肉の動きをマイクロ単位で観察しているから。
「ぷっ、あははははは!!!!」
地獄から脱出した気持ちを味わっていると、妹の理恵がお腹を抱えて爆笑。
「な、なんだよ」
「だって、こんなに焦っているお兄ちゃん見るの面白いから!ぷふふ!」
「か、揶揄うなよ。生きた心地がしなかったから」
しばし笑う理恵。
だが、
「お兄ちゃん、私たちが一番だからね」
妙に俺の耳を刺激する妹の声は、俺を戸惑わせた。
不思議だ。
三人は俺より弱いが、俺は三人になんの抵抗もできない。
「ああ」
俺の返事に大変満足した三人。
うち友梨姉が言う。
「それじゃ、祐介くんが持ってきてくれたお肉を使って料理を作りましょう」
奈々が続いた。
「そうね。祐介の肉、いっぱい食べようね。美味しそうだし、めっちゃ欲しくなっちゃった」
奈々よ、言い方……
「ふふ」
妹が微笑んでいると、友梨姉と奈々は理恵にスキンシップしながら共にキッチンへと向かう。
「……」
蘭子さんと戦った時より疲れる。
X X X
蘭子side
とある地下アジト
「諸君、よくぞ集まってくれた」
「「「はあ!」」」
飛行機の格納庫を連想させる広々とした空間に50人あまりの人々が集まって平伏している。
血の女王こと蘭子は彼ら彼女らを見て、一瞬悲しい表情をするが、何かを決意した面持ちで口を開く。
「今から日本の社会を大きく変えるための作戦について説明する」
「「「っ!!!!」」」
彼女の言葉に50人余りの人は目を丸くして仰天した。
蘭子は意に介さず続ける。
「だけど、この作戦を遂行したら、お前らは間違いなく悪魔になってしまうんだ。だからね」
一旦切って、深呼吸をする蘭子。
おかげで とてつもなく大きな胸が強調される。
彼女は口角を吊り上げる。
「悪魔にならないための教育もしないとね」
俺は作り笑いしながら誤魔化そうとした。
しかし、俺の背中からはしきりなしに汗が出ている。
別段熱いわけでもなかろうに。
この三人が向けてくるギロチンより鋭い視線を感じるたびに、俺の自律神経に異常が現れる気がして気が気じゃない。
オドオドしている俺に奈々が至近距離にまでやってきてスンスンと整った鼻で匂いを嗅ぎだす。
俺の頭から始めて、肩、胸、お腹、股間まで念入りに匂いを吸い続けた。
赤色の目を細める奈々は俺を睨んできた。
「女の汗の匂い」
「っ!」
なんだよ。
犬かよ。
俺が奈々の嗅覚にびっくり仰天していたら、友梨姉が試すような眼差しを向けてくる。
「ふん〜祐介くんは生配信が終わった後、女の汗の匂いが体につくほど何かしらの激しい行為に耽ったってことで良いかしら?」
「そ、それは……」
激しい行為。
激しい戦闘をしたわけだから、友梨姉の言っていることに間違いはない。
人を誤解させてしまいかねない言い方ではあるが……
血の女王の話はなるべく二人にはしたくない。
友梨姉と奈々のおばさんに当たる人が血の女王だと知ったら、二人はどんな反応を見せるのだろう。
少なくとも、二人が心の準備ができているという確証がない限り言うべきではない。
そんなことを考えていると、奈々が急に震えながら俺の右手を握ってきた。
「大人気配信者になったからといって、早速ハメ外して他の女とやるのは、絶対許さないよ。今すぐ、祐介の子を孕んだとライブ配信しないと……」
「え、ええ!?!?ちょ、ちょっと!なに言ってる!?」
俺が奈々顔を見て必死に問うが、とっくに色のない瞳の奈々は俺の話を全然聞かない。
「奈々、私とコラボしましょう。私たち、伝説の拳様の赤ちゃんを妊娠しましたと」
「あら、お姉ちゃん、それいいね」
色褪せたヤンデレ顔の二人は各々スマホを取り出す。
まずい。
二人のチャンネルを足せば、普通のテレビ番組より影響力大きいからまずいだろ。
ありもしないことで伊藤まこなんちゃをはるかに凌駕するクズ扱いされるのも時間の問題だ。
いや、それは問題じゃない。
問題なのは、
二人が勘違いして不安がっていることだ。
俺は二人の肩を強く握る。
「「っ!!」」
そしたら、二人が戸惑ったように俺を見つめて来た。
だが、相変わらずヤンデレ顔だ。
体つきと顔は女神そのものだが、ヤンデレ顔ってのがなかなかシュールだな。
「違うよ。んなことしてないって」
「「……」」
「してない。するわけないだろ」
俺の顔をじっと見つめる二人の瞳の色は徐々に元の色を取り戻す。
「そこまで真顔で言うのなら、まあ……信じる」
「……そうね。信じるのも大事だから」
「あはは……ありがとう」
よかった。
本当によかった。
途轍もなく安堵が俺の心を満たした。
信じてくれた二人にも感謝だが、俺が彼女ら以外の女性とそういうことをしてない事実が俺に尽きることのない安らぎを与えてくれている。
おそらく、俺が嘘をつこうものなら、二人はすぐに気がつくだろう。
彼女らは俺の顔の筋肉の動きをマイクロ単位で観察しているから。
「ぷっ、あははははは!!!!」
地獄から脱出した気持ちを味わっていると、妹の理恵がお腹を抱えて爆笑。
「な、なんだよ」
「だって、こんなに焦っているお兄ちゃん見るの面白いから!ぷふふ!」
「か、揶揄うなよ。生きた心地がしなかったから」
しばし笑う理恵。
だが、
「お兄ちゃん、私たちが一番だからね」
妙に俺の耳を刺激する妹の声は、俺を戸惑わせた。
不思議だ。
三人は俺より弱いが、俺は三人になんの抵抗もできない。
「ああ」
俺の返事に大変満足した三人。
うち友梨姉が言う。
「それじゃ、祐介くんが持ってきてくれたお肉を使って料理を作りましょう」
奈々が続いた。
「そうね。祐介の肉、いっぱい食べようね。美味しそうだし、めっちゃ欲しくなっちゃった」
奈々よ、言い方……
「ふふ」
妹が微笑んでいると、友梨姉と奈々は理恵にスキンシップしながら共にキッチンへと向かう。
「……」
蘭子さんと戦った時より疲れる。
X X X
蘭子side
とある地下アジト
「諸君、よくぞ集まってくれた」
「「「はあ!」」」
飛行機の格納庫を連想させる広々とした空間に50人あまりの人々が集まって平伏している。
血の女王こと蘭子は彼ら彼女らを見て、一瞬悲しい表情をするが、何かを決意した面持ちで口を開く。
「今から日本の社会を大きく変えるための作戦について説明する」
「「「っ!!!!」」」
彼女の言葉に50人余りの人は目を丸くして仰天した。
蘭子は意に介さず続ける。
「だけど、この作戦を遂行したら、お前らは間違いなく悪魔になってしまうんだ。だからね」
一旦切って、深呼吸をする蘭子。
おかげで とてつもなく大きな胸が強調される。
彼女は口角を吊り上げる。
「悪魔にならないための教育もしないとね」