「向坂さん?」
最後、ぽつりと呟いた彼の声はどこか後悔しているようで、思わず顔を見上げていた。
思い詰めたような表情に心臓を鷲掴みにされる。
でもレンズ越しに目のあった彼は、なんでもないように笑った。
「ん?
ああ、あとこれシュレッダーにかけたら終わりだな。
ご苦労さん」
「はぁ……」
どういうことかは気になったけれど、それ以上は訊けなかった。
書類を持って裏に回る。
シュレッダーにかけながらぼぅっと向坂さんと出会ってからのことを思い出していた。
一昨年の春、大学を卒業して損害保険会社に入った。
配属されたのは自動車事故のサービスセンター。
被保険者に事故相手、修理工場にと高いコミュニケーション能力が要求され、引っ込み思案の私はといえばただわたわたしているだけだった。
そもそも、こんな大会社に入ったこと自体間違いなのだ。
父がどうしても受けろっていうから逆らえずに受け、なんの間違いか受かってしまい。
嫌だと言えばよかったんだけれど、お前の将来のためだといわれれば逆らえなかった。
「……無理。
もう辞めたい……」
最後、ぽつりと呟いた彼の声はどこか後悔しているようで、思わず顔を見上げていた。
思い詰めたような表情に心臓を鷲掴みにされる。
でもレンズ越しに目のあった彼は、なんでもないように笑った。
「ん?
ああ、あとこれシュレッダーにかけたら終わりだな。
ご苦労さん」
「はぁ……」
どういうことかは気になったけれど、それ以上は訊けなかった。
書類を持って裏に回る。
シュレッダーにかけながらぼぅっと向坂さんと出会ってからのことを思い出していた。
一昨年の春、大学を卒業して損害保険会社に入った。
配属されたのは自動車事故のサービスセンター。
被保険者に事故相手、修理工場にと高いコミュニケーション能力が要求され、引っ込み思案の私はといえばただわたわたしているだけだった。
そもそも、こんな大会社に入ったこと自体間違いなのだ。
父がどうしても受けろっていうから逆らえずに受け、なんの間違いか受かってしまい。
嫌だと言えばよかったんだけれど、お前の将来のためだといわれれば逆らえなかった。
「……無理。
もう辞めたい……」