「向坂さん……」

じっと彼と見つめあう。
それだけで幸せで、泣きそうだった。

「……(れん)、って呼べ……」

「……ん」

再び、唇が重なる。
ただひたすらになにもかもを忘れて情欲に溺れていく。

「……!」

未開の身体に彼が入ってきて、痛みで上げそうになった悲鳴は唇を噛みしめて堪えた。

「千華?」

異変に気づいたのか、向坂さん――蓮が動きを止めた。

「だ、大丈夫ですから」

「大丈夫って……。
あ、そうか。
千華は初めてだったのか。
気づいてやれなくて、ごめん」

いい子、いい子と蓮の手が私のあたまを撫でる。
おかげで入っていた身体の力が抜けていった。

「千華の初めてを、俺なんかにくれてありがとう」

ちゅっ、と蓮の唇が重なる。

「私の初めてを蓮に捧げられて幸せです……」

「ごめんな、そんなこと言ってもらえたのに、千華を幸せにできなくて」

ふるふると首を振り、蓮の手を握った。

「今、幸せだから。
それだけで満足です」

「千華……」

ゆっくりと蓮が動きだす。
ただひたすらに互いを求めあった。