「本当にいいのか?」
眼鏡の奥で目の縁を赤く染め、遠慮がちに彼が訊いてくる。
「妻に恋心はないが、いまさら裏切ることはできない。
まだ子供も小さいし」
「はい、わかっています」
優しい向坂さんが、ましてや子供も小さいのに奥さんと別れられないのはわかっていた。
わかっていて、着いてきた。
「向坂さんこそいいんですか」
「俺は……」
左手薬指から向坂さんが指環を抜き取る。
「これは、最初で最後の裏切りだ」
抜き取った指環を彼はテーブルの上に置いた。
「俺はいまだけ、由比だけのものだ」
「向坂さんの罪は私も背負います」
向坂さんが眼鏡を外す。
余裕なく唇が重なり、ベッドに押し倒されていく。
唇が離れ、そっと彼が私の頬を撫でた。
「由比……千華を愛してる。
千華を好きになって初めて、恋を知った。
妻と結婚する前に千華に会いたかった」
泣きだしそうな彼の首に腕を回し、自分から唇を重ねる。
「向坂さんが好きです。
愛しています。
私が初めて、恋した人は向坂さんだから……」
今度は向坂さんから、まるで愛しむかのように唇が重なった。
「千華……」
眼鏡の奥で目の縁を赤く染め、遠慮がちに彼が訊いてくる。
「妻に恋心はないが、いまさら裏切ることはできない。
まだ子供も小さいし」
「はい、わかっています」
優しい向坂さんが、ましてや子供も小さいのに奥さんと別れられないのはわかっていた。
わかっていて、着いてきた。
「向坂さんこそいいんですか」
「俺は……」
左手薬指から向坂さんが指環を抜き取る。
「これは、最初で最後の裏切りだ」
抜き取った指環を彼はテーブルの上に置いた。
「俺はいまだけ、由比だけのものだ」
「向坂さんの罪は私も背負います」
向坂さんが眼鏡を外す。
余裕なく唇が重なり、ベッドに押し倒されていく。
唇が離れ、そっと彼が私の頬を撫でた。
「由比……千華を愛してる。
千華を好きになって初めて、恋を知った。
妻と結婚する前に千華に会いたかった」
泣きだしそうな彼の首に腕を回し、自分から唇を重ねる。
「向坂さんが好きです。
愛しています。
私が初めて、恋した人は向坂さんだから……」
今度は向坂さんから、まるで愛しむかのように唇が重なった。
「千華……」