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「ごちそうさまでした」
爽太は丁寧に箸を皿ののそばに置き、両手を丁寧に合わせる。顔を上げると向かいで朝食を取っている母と目が合った。
「今日は早いのね……昨日、やっぱり何かあったの?」
「あぁ、ちょっとな」
椅子をひき、立ち上がる。近くに置いてあった鞄を肩にかけ、玄関に向かう。
靴を履いているとすぐ後ろに母が立っていた。
「まだ学校行くには早いんじゃないの?爽太、最近サボりがちみたいだし……」
「心配すんなよ、母さん」
「でも……」
「言ったろ、昨日何かあったんだって。……好きな奴にあんな顔されちゃ、な」
母はまだ困惑した様子だったが、爽太の顔を見て少し安心したように笑う。爽太はそれを確認し、玄関のドアを勢いよく開ける。
「いってきます、母さん」
「いってらっしゃい、爽太」
母がいい終わるとともにドアが閉まる。爽太は進行方向に向き直る。一つ大きく息を吸って爽太は雲一つない青い空を見上げる。
「いってきます、紗弥」

『いってらっしゃい、爽ちゃん』

背中から包み込まれるような優しい声が聞こえ、爽太は振り返った。そこにはなにもなく、ただ爽太の横を風がすり抜ける。
爽太はもう一度空を見上げ、空に笑顔を向けると大きな一歩を踏み出した。