『仮初めの英雄』の皆と連絡を取ってから、俺はまた鍛冶とクラフトの日々を送ることになった。
 終わりが明確に見えていれば、耐えるのは簡単だ。
 ただ単純作業を繰り返していてもつまらないため、より効率良くエンチャントを施すにはどうしたら良いのかを考えながら余っている魔力容量を使う形で、試行錯誤を重ねていく。
 やってきた食料配達の第一陣が子爵領を入ったという通信が入った時点で、既に当初と比べて食材の再生速度はかなり早くなり、また効果が消えるまでの時間も倍以上伸ばすことができた。
 ただこれ以上は流石にできることがない。
 ヒヒイロカネクラスの超のつく稀少金属を使えばまた話は変わるかもしれないが、わざわざ使うのもあれだしな。ヒヒイロカネを使うなら、もっと試したいエンチャントがいくつもあるからな。こんなもんで十分だろう。
「そろそろ来るなら……これ以上の増産は必要ないか」
 ちなみに既に、『収納鞄』の増産はやめている。
 食料供出をしたドワーフ達がある程度のペースで帰ってくるようになり、作る必要がなくなったからだ。
 なのでここ最近はスケジュールに大分余裕ができていた。
 今はもう少し燃費を良くするべく、『通信』の魔道具を色々といじり回している。
「ラ、ラックさん、大変ですッ!」
「どうした、シュリ?」
「たったた大変! とにかく大変なんです!」
 小気味良いリズムで噛みまくっているシュリから話を聞くと、どうやら大量の食料を持った馬車が現れたらしい。
 事前に話はしておいたから、そんなに驚くこともないと思うんだが……そんな風に思っていた俺は、やってきた人員を見てシュリに負けず劣らずびっくり仰天することになる――。