そこでは世界の命運をかけた、人類と魔物の頂上決戦が行われていた。
あらゆる生物を拒む瘴気に満ちた大地にて魔物を支配する怪物である魔王に相対するのは、彼を倒すために同じく人外の領域へと足を踏み入れた四人の戦士達。
「ゴッズディスペア!」
魔王の放つ、神すらも消失させる一撃に、短く切り揃えた黒髪を持つ少女は真っ向から相対する。
「ホーリーディヴィジョン!」
少女が手に持っているのは見るもの全てを魅了するほどの神々しさを放つ盾だった。
その聖なる盾――聖盾から飛び出す防壁は、魔王の一撃すらその場に食い止めてみせる。
薄く七色に光る防御壁の隙間を縫うように飛び出したのは、全身を金属鎧に身を包んだ女騎士だ。
彼女は両手に持つ純白の槍を勢いよく突き出す。
「ディヴァインショット!」
彼女の放つ突きは見事命中。
本来であれば聖剣でしかダメージを与えることができぬはずの魔王の腹に大穴が空く。
彼女が操る槍は聖槍――かつて滅んだ古代文明の技術によって生み出された聖性を持つ槍であった。
「ぐぬううう……まだだっ!」
衝撃を食らい後方に吹っ飛ぶ魔王だったが、与えられた一撃によるダメージは致命傷にはほど遠いものだった。
「これで終わりだ――ケイオスホール!」
魔王は己が放つことのできる最大の一撃を発動させる。
極小のマイクロブラックホールが相手をその存在ごと異空間へと飛ばす絶対の一撃。
本来であれば存在がかき消えるほどの一撃を目の前にしても尚、一人の少女は前に出る。
金髪を靡かせる彼女の名はリアム。
世界でたった一人、魔王を倒すことのできる勇者だ。
彼女の手に握られた魔を滅する正義の剣、聖剣クラウソラスは――見事魔王の心臓に突き立った。
「我が……我がこんなところでえええええええ……!!」
断末魔の叫び声を上げる魔王が、パタリと倒れる。
そして黒い煙が噴いたかと思うと、この場に彼がいた証拠は、転がった黒い光を放つ魔石と、彼が使っていた一本の剣だけになった。
「これで……全て、終わったのですね……」
荒い息を吐きながら地面に倒れ込む戦士達を、唯一後方で待機していたプリーストが癒やしていく。その手に握られている聖杖を使えば、仲間達の傷は瞬時に癒えていく。
圧倒的な体力を持つ魔王と戦っても前衛が崩壊しなかったのは、ひとえに彼女のその回復能力のなせる技だった。
「ああ、僕達――五人の勝利だ!」
勇者リアムは、高く拳を掲げる。
勇者、聖騎士、聖戦士、聖女。
ここにいるのは四人だったが、彼女達の脳裏にはもう一人、かけがえのない仲間がいた。
女四人のパーティーにサポートメンバーである彼を加えた五人で、彼女達は様々な艱難辛苦を乗り越えてきた。
その人物の名は、本人たっての願いにより、世間にはほとんど知られてはいない。
一体誰が信じることができるだろう。
彼女達が魔王に勝利するために最大限の貢献をなしたのが、名も知れぬ一人の鍛治師であることを。
――壊れた聖剣を修復し、そこから古代文明の神聖文字を解読し、魔王へ届きうるいくつもの聖武具を現代に再現してみせた男がいるなどと。
そしてその男が実は、
「ふぅ……そろそろ、潮時かもしれないな……」
雑事に煩わされる都会生活を捨て、一人で隠居生活を目論んでいるなどと……。
あらゆる生物を拒む瘴気に満ちた大地にて魔物を支配する怪物である魔王に相対するのは、彼を倒すために同じく人外の領域へと足を踏み入れた四人の戦士達。
「ゴッズディスペア!」
魔王の放つ、神すらも消失させる一撃に、短く切り揃えた黒髪を持つ少女は真っ向から相対する。
「ホーリーディヴィジョン!」
少女が手に持っているのは見るもの全てを魅了するほどの神々しさを放つ盾だった。
その聖なる盾――聖盾から飛び出す防壁は、魔王の一撃すらその場に食い止めてみせる。
薄く七色に光る防御壁の隙間を縫うように飛び出したのは、全身を金属鎧に身を包んだ女騎士だ。
彼女は両手に持つ純白の槍を勢いよく突き出す。
「ディヴァインショット!」
彼女の放つ突きは見事命中。
本来であれば聖剣でしかダメージを与えることができぬはずの魔王の腹に大穴が空く。
彼女が操る槍は聖槍――かつて滅んだ古代文明の技術によって生み出された聖性を持つ槍であった。
「ぐぬううう……まだだっ!」
衝撃を食らい後方に吹っ飛ぶ魔王だったが、与えられた一撃によるダメージは致命傷にはほど遠いものだった。
「これで終わりだ――ケイオスホール!」
魔王は己が放つことのできる最大の一撃を発動させる。
極小のマイクロブラックホールが相手をその存在ごと異空間へと飛ばす絶対の一撃。
本来であれば存在がかき消えるほどの一撃を目の前にしても尚、一人の少女は前に出る。
金髪を靡かせる彼女の名はリアム。
世界でたった一人、魔王を倒すことのできる勇者だ。
彼女の手に握られた魔を滅する正義の剣、聖剣クラウソラスは――見事魔王の心臓に突き立った。
「我が……我がこんなところでえええええええ……!!」
断末魔の叫び声を上げる魔王が、パタリと倒れる。
そして黒い煙が噴いたかと思うと、この場に彼がいた証拠は、転がった黒い光を放つ魔石と、彼が使っていた一本の剣だけになった。
「これで……全て、終わったのですね……」
荒い息を吐きながら地面に倒れ込む戦士達を、唯一後方で待機していたプリーストが癒やしていく。その手に握られている聖杖を使えば、仲間達の傷は瞬時に癒えていく。
圧倒的な体力を持つ魔王と戦っても前衛が崩壊しなかったのは、ひとえに彼女のその回復能力のなせる技だった。
「ああ、僕達――五人の勝利だ!」
勇者リアムは、高く拳を掲げる。
勇者、聖騎士、聖戦士、聖女。
ここにいるのは四人だったが、彼女達の脳裏にはもう一人、かけがえのない仲間がいた。
女四人のパーティーにサポートメンバーである彼を加えた五人で、彼女達は様々な艱難辛苦を乗り越えてきた。
その人物の名は、本人たっての願いにより、世間にはほとんど知られてはいない。
一体誰が信じることができるだろう。
彼女達が魔王に勝利するために最大限の貢献をなしたのが、名も知れぬ一人の鍛治師であることを。
――壊れた聖剣を修復し、そこから古代文明の神聖文字を解読し、魔王へ届きうるいくつもの聖武具を現代に再現してみせた男がいるなどと。
そしてその男が実は、
「ふぅ……そろそろ、潮時かもしれないな……」
雑事に煩わされる都会生活を捨て、一人で隠居生活を目論んでいるなどと……。