それから、あっという間に、祭り当日。
「集合場所は、ここにしよう!それじゃあ、買い出し、よろしく!」
じゃんけんの結果、私は、買い出しは免れた。
裕也も買い出しを回避したようで、私に声をかけてくれた。
「未玖」
「このまま、二人で、抜け出すぞ」
えっ?
「う、うん」
人混みの中に紛れて、いつものように、裕也の隣を歩く。
「屋台、いっぱいあるね」
「ああ」
「裕也、あっち、人が少ないよ」
「ほんとだ。行くか」
夕焼けが終わりかけて、空が暗くなっていく。
屋台の近くを離れて、人混みが少なくなる。
「未玖、俺に話、あるんだろ」
「えっ」
「そんな顔してるぜ」
言うなら、今しか無い。
「うん、ある」
「正直だな。いつもなら、こんな事、言ったら、怒るのに」
裕也は、笑う。
「私だって、正直な時もあるよ」
「聞いても良いか」
「うん。...私、裕也が好き」
伝えた。だけど、裕也は、驚きもせず、言った。
「知ってた。だけど、ごめん。未玖の気持ちには、応えられない。俺も好きな人がいるから」
私は、裕也の言葉を聞いた瞬間から、涙が溢れて、止まらなかった。
「うん。知ってる」
裕也は、私を抱きしめる。
「今だけだぞ。これは、幼馴染として、だからな」
「ゆう、やのバカ。なんで、そんなこと、言うし、するのかなあ。好きな子にすれば良いのに」
「お前が泣くからだ」
裕也の胸の中でただ、ひたすら、泣いていた。
そして、夕焼けが私の心のように、沈んだ。