2階にある職員室の横を通り抜け渡り廊下に出た。


この渡り廊下は一面がガラス張りになっているためグランドの様子が手に取るように分かる。


トラックでは陸上部が走っており、その中には当然楓の姿も見える。


今の自分が1番見たくない光景なのに気がついたらこの場所にたどり着いていた。


今日も頑張ってるんだな、、、


楓の走る姿を見るのは久しぶりだ。


彼女の専門である100mは0.1秒を縮められるかという競技である。


人によっては3年間でほとんど記録を伸ばせず引退していく人もいるほど厳しい競技だ。


実際彼女は高校ではまだ一度も全国に行ったことがない。


それでも彼女は、毎日朝早くから夜遅くまで練習を行っている。


怪我でサッカーをできなくなり腐ってゲームばかりしてる僕とは何もかもが違う。


これまでただ前に進みたくてもがいて、もがいて、失って、正直自分が何のために部活を頑張り続けていたのか今ではもう分からない。


彼女は何故こんなにも頑張り続けることが出来るのだろうか。


ふと頭に昔の記憶が蘇る。


楓と約束したあの日のことを、、、


約束、、、そうかあのことまだ覚えていたのか、、、


僕は勝手に彼女を超人かなにかと思い込んで自分と比べていた。


彼女の努力の裏にある苦しみを知っていたはずなのに、、、


俺はこんなところで止まったままでいいのか


走り終えた楓がこちらに気づき手を振っている。


今の僕に何が出来るかは分からない


それでももう一度走り出すために、、、


彼女の隣に立てるような男になりたい、そう心に誓い僕は教室に戻った。