山盛りのパンもステーキももちろんスープもしっかり平らげて、僕らはお昼ごはんを終えた。はー、美味しかったーってみんなでごちそうさますると、店主のおじさんおばさんがすごくいい笑顔でサムズアップしてくれたのが印象的だよー。
さて、そうなるとお次はいよいよ迷宮探索だ。ケルヴィンくんとセルシスくんの二人とはここでお別れして、僕らは町の外へと向かう。途中、適当な路地裏で"杭打ち"の装束に着替えての道程だ。
持ってきたバッグの中、折り畳んだマントとあと帽子を取り出して身につける。おしまい。
たったこれだけで冒険者"杭打ち"の完成だ。本当は上着や下着も黒装束なんだけど、今回はそもそも僕が戦うことはないからね。こんなくらいの変装でも全然問題ないのだ。
「帽子とマントを装着すれば出来上がり。手早い割にしっかり正体を隠せるのは便利でござるなー」
「ですが杭打機は今日は持ってきてないのですね」
「使う予定がないからねー。地下5階くらいまでを行ったり来たりするんでしょ? シアンさんの対モンスター訓練のために」
さすがに学生ソウマ・グンダリが杭打ちくんを担いでたら一発でバレる。なので今回は相棒にはお休みいただき、帽子とマントだけの簡易"杭打ち"スタイルだ。
というのも今言った通り、シアンさんがモンスター相手に頑張るのを見届けるために随行するってだけだからねー。地下5階までなんて僕の出る幕じゃないし、そもそもモンスターが威圧に負けて近寄ってこないしで杭打ちくんなんて必要ないわけだねー。
「ござござ。あとせっかくなのでレリエ殿にも、冒険者ってのが具体的にどんな感じでモンスターと戦うのかを確認してもらうでござるよ。いいでござる?」
「ええ、もちろん……一応私が目覚めてすぐ、ソウマくんがモンスターをやっつけるところは見たけど」
「多分それ、ずいぶん上のランクにいかないとなんの参考にもならないバトルでござる。記憶から抹消するのをおすすめするでござるよー、拙者でもたぶん理解できない技術を使ってたと思うでござるし」
苦笑いしてそんなことを言うサクラさん。まあ、レリエさんについては正直そう言うしかないよねー。
地下86階層から彼女を連れ出す時に何体かモンスターをやっつけたけど、あいつらだって普通に出くわすとサクラさんやシミラ卿でも危ないかもしれないやばーい奴らだし。
迷宮攻略法を駆使しまくった僕だからこそサクッと殺れたわけで、つまりはSランクの中でもさらに上澄み、それこそレジェンダリーセブン級じゃないと同じことはなかなか、難しいかもしれない。
そんな戦いをレリエさんが真似したり参考にしたりなんて土台無理な話だよー。だからサクラさんの言うように、あーゆーものは忘れるに限るんだ。ドン引きされたアレな記憶ってのもあるし、本当に忘れてほしいよー。
「でしょうね……とにかくすごいってことしか分からなかったもの。どんな分野でもトップクラスに位置する天才は、何してるか分かんないのよね凡人から見ると」
「拙者とてSランクなだけの力はあると自負してるでござるが……こと専門のはずの近接戦でドン引きものの動きをこないだ、他ならぬ杭打ち殿に見せつけられて負けたでござる。天才というのも細かく段階分けされてるんだなーってしみじみ思ったでござるよ」
「いや……あの、だからさ。あの時についてはともかく僕とサクラさんの間にそんな差はないってばー」
青い青い空を見上げてどこか吹っ切れたように、いい笑顔で笑うのはかわいいからいいんだけどー……サクラさんってばすっかり僕には敵わないって思っちゃってるよー。
正直あんな程度で優劣なんかつくわけないと思うんだけど、サクラさんはサクラさんで僕に理解できない感覚や能力をいくつも持つ世界トップクラスの実力派だし、その感性で僕にある何かを感じ取っちゃったのかもしれない。それでここまで心が折れちゃってるのかもー。
全然自覚ないけど、ホントに悪いことした気分になるから勘弁してほしいよー。
微妙な心境に一人、陥りながらも町を出て草原に出る。穴だらけの草原は相変わらず冒険者がそこそこ行き交っていて、依頼にせよ自主活動にせよ、迷宮探索にそれぞれ精を出しているのが分かる。
その中でも僕らが向かうのはやはり正規ルート、地下一階から始める正門だ。一応他にも地下一階に降りる穴はいくつかあるけど、わざわざそっちを使う意味も薄いしねー。
しばらく歩くと正門に辿り着いた。前と同じ、古びてはいるもののしっかりした造りの立派な門だ。
じゃあ入ろっかーって段になって、事前に打ち合わせていた段取りを改めてサクラさんが、シアンさんへと確認した。
「迷宮に入ったらシアン以外は距離を置くでござるから、しばらく一人で進むでござるよ」
「ええ、分かったわ……万一の時のフォローよろしくね、みんな」
僕とサクラさんが近くにいると、モンスターが逃げて行っちゃうからねー。だから見学のレリエさんともども遠巻きに眺めて、シアンさんの戦いを見守らせてもらうんだよー。
シアンさんが若干、緊張した面持ちで迷宮へと一歩踏み出した。さあ、修行の始まりだよー!
さて、そうなるとお次はいよいよ迷宮探索だ。ケルヴィンくんとセルシスくんの二人とはここでお別れして、僕らは町の外へと向かう。途中、適当な路地裏で"杭打ち"の装束に着替えての道程だ。
持ってきたバッグの中、折り畳んだマントとあと帽子を取り出して身につける。おしまい。
たったこれだけで冒険者"杭打ち"の完成だ。本当は上着や下着も黒装束なんだけど、今回はそもそも僕が戦うことはないからね。こんなくらいの変装でも全然問題ないのだ。
「帽子とマントを装着すれば出来上がり。手早い割にしっかり正体を隠せるのは便利でござるなー」
「ですが杭打機は今日は持ってきてないのですね」
「使う予定がないからねー。地下5階くらいまでを行ったり来たりするんでしょ? シアンさんの対モンスター訓練のために」
さすがに学生ソウマ・グンダリが杭打ちくんを担いでたら一発でバレる。なので今回は相棒にはお休みいただき、帽子とマントだけの簡易"杭打ち"スタイルだ。
というのも今言った通り、シアンさんがモンスター相手に頑張るのを見届けるために随行するってだけだからねー。地下5階までなんて僕の出る幕じゃないし、そもそもモンスターが威圧に負けて近寄ってこないしで杭打ちくんなんて必要ないわけだねー。
「ござござ。あとせっかくなのでレリエ殿にも、冒険者ってのが具体的にどんな感じでモンスターと戦うのかを確認してもらうでござるよ。いいでござる?」
「ええ、もちろん……一応私が目覚めてすぐ、ソウマくんがモンスターをやっつけるところは見たけど」
「多分それ、ずいぶん上のランクにいかないとなんの参考にもならないバトルでござる。記憶から抹消するのをおすすめするでござるよー、拙者でもたぶん理解できない技術を使ってたと思うでござるし」
苦笑いしてそんなことを言うサクラさん。まあ、レリエさんについては正直そう言うしかないよねー。
地下86階層から彼女を連れ出す時に何体かモンスターをやっつけたけど、あいつらだって普通に出くわすとサクラさんやシミラ卿でも危ないかもしれないやばーい奴らだし。
迷宮攻略法を駆使しまくった僕だからこそサクッと殺れたわけで、つまりはSランクの中でもさらに上澄み、それこそレジェンダリーセブン級じゃないと同じことはなかなか、難しいかもしれない。
そんな戦いをレリエさんが真似したり参考にしたりなんて土台無理な話だよー。だからサクラさんの言うように、あーゆーものは忘れるに限るんだ。ドン引きされたアレな記憶ってのもあるし、本当に忘れてほしいよー。
「でしょうね……とにかくすごいってことしか分からなかったもの。どんな分野でもトップクラスに位置する天才は、何してるか分かんないのよね凡人から見ると」
「拙者とてSランクなだけの力はあると自負してるでござるが……こと専門のはずの近接戦でドン引きものの動きをこないだ、他ならぬ杭打ち殿に見せつけられて負けたでござる。天才というのも細かく段階分けされてるんだなーってしみじみ思ったでござるよ」
「いや……あの、だからさ。あの時についてはともかく僕とサクラさんの間にそんな差はないってばー」
青い青い空を見上げてどこか吹っ切れたように、いい笑顔で笑うのはかわいいからいいんだけどー……サクラさんってばすっかり僕には敵わないって思っちゃってるよー。
正直あんな程度で優劣なんかつくわけないと思うんだけど、サクラさんはサクラさんで僕に理解できない感覚や能力をいくつも持つ世界トップクラスの実力派だし、その感性で僕にある何かを感じ取っちゃったのかもしれない。それでここまで心が折れちゃってるのかもー。
全然自覚ないけど、ホントに悪いことした気分になるから勘弁してほしいよー。
微妙な心境に一人、陥りながらも町を出て草原に出る。穴だらけの草原は相変わらず冒険者がそこそこ行き交っていて、依頼にせよ自主活動にせよ、迷宮探索にそれぞれ精を出しているのが分かる。
その中でも僕らが向かうのはやはり正規ルート、地下一階から始める正門だ。一応他にも地下一階に降りる穴はいくつかあるけど、わざわざそっちを使う意味も薄いしねー。
しばらく歩くと正門に辿り着いた。前と同じ、古びてはいるもののしっかりした造りの立派な門だ。
じゃあ入ろっかーって段になって、事前に打ち合わせていた段取りを改めてサクラさんが、シアンさんへと確認した。
「迷宮に入ったらシアン以外は距離を置くでござるから、しばらく一人で進むでござるよ」
「ええ、分かったわ……万一の時のフォローよろしくね、みんな」
僕とサクラさんが近くにいると、モンスターが逃げて行っちゃうからねー。だから見学のレリエさんともども遠巻きに眺めて、シアンさんの戦いを見守らせてもらうんだよー。
シアンさんが若干、緊張した面持ちで迷宮へと一歩踏み出した。さあ、修行の始まりだよー!