ふわ~っと浮かび上がる僕とレリエさん。迷宮攻略法の中でも最高難度である重力制御を使用したことにより、一時的に重力の縛りから逃れたのだ。
さすがに鳥みたいに自由自在とはいかないけれど、ある程度空を飛んだり、とてつもない高さまで飛び跳ねたりできるわけだねー。これを身に着けてから僕の人生がまるごと変わったとさえ言えるほどの、超便利な技法だよー。
「!? え、は? ちょ、え、浮いてる!?」
「舌噛まないように口閉じててねー。一気に地上に出るよ、よいしょー!」
「ちょっ、待っ、てへええぇぇぇ────!?」
腕を掴んだレリエさんごと浮いた僕は、彼女を半ば抱き寄せる形で一気に出入り口を上昇していく。初めてのことであわあわしてるレリエさんかわいいよーってホッコリしながらも、僕は細かく重力を制御していった。
この技法、やり方さえ覚えれば割と簡単にあれこれ重力に干渉できるんだけどー、コントロールそのものはとてつもなくシビアだから結構、集中力が要るんだよねー。
在りし日の調査戦隊を思い返す。
レジェンダリーセブンの中でもレイアとリューゼの二人が同じく重力制御を会得してたけど、リューゼのほうは僕ほど上手じゃなかったから空を飛んでは墜落したり、攻撃に利用しようとしてはトチったり散々失敗してたなー。
逆にレイアは僕より上手で、重力を武器に集中させた結果なんかすごい、すべてを吸い込む謎の現象を引き起こして他のメンバーにしこたま怒られてたっけ。懐かしいよー。
「よーっと! はい、とうちゃーく!」
「────ぇぇええぇぇえええへぇへへへえっ!?」
やっぱり人を抱えているからいつもよりはデリケートに操作して遅くなっちゃった。大体3分ほどかけてのんびりと出入り口から出ると、見知った泉の畔、森の上空にまで身を踊らせる。
レリエさん、ずーっと叫びっぱなしだったよー。喉枯れないかな、心配だ。とりあえず地上に降りて、レリエさんを落ち着かせる。
この様子だと彼女、初めて飛んだみたいだねー。超古代文明には重力制御、もっというと迷宮攻略法みたいなものはなかったのかなー。
懐からコーヒー入りの水筒を取り出す。朝、商店街を寄った時に珈琲屋さんに水筒に目一杯入れてもらった、ちょっと水っぽいけど安くて美味しいという僕の愛飲品だ。
それを渡すと叫び疲れたのか、一気に疲れた顔になった彼女はチビチビと呑み始めた。
「んく、んく……ぷは! な、何よあれ!? なんで何もないのに飛んだの!? 超能力!? もしかしてエスパーなのソウマくん!?」
「エスパー? 冒険者だけどー……超能力ってのがなんなのか分からないけど、今のは人間が努力で身につけられる技術の範疇だと思うよー?」
「いや無理だから! 何をどう努力したら人間が重力に干渉したりできるわけー!?」
うがーっ! と叫ぶレリエさん。どうやら古代文明では今みたいな技法、存在しないものみたいだ。
さすがに重力制御はレアにしたって、身体強化や環境適応なんかもなかったのかな? と疑問に思って聞いてみると、なんだか微妙にキレ気味に返事されちゃった。
「あ、あのね……! その、迷宮攻略法? なんて数万年前には影も形もなかったし、あっても漫画やアニメやアクション映画の話だったわよ!」
「漫画、アニメ? アクション映画?」
「え、あーと……つまりー、そう! 娯楽作品の中だけの話ってこと! この時代にもあるでしょそういう、なんか作り話とか!」
「あー」
言われて思い浮かべるのは、僕のお気に入りの小説だ。
機械っていう不思議で便利な動力機構が発達したファンタジー世界を舞台にしての、冒険したり青春したりとなんだかとっても楽しいお話だねー。
たとえば僕がそのファンタジー世界に行ったとして、"君の世界には機械がなかったのー? "って聞かれたら、あるわけないだろー! って叫んじゃうかもしれない。
そう考えるとレリエさんの反応にも納得がいくよー。彼女にとっての迷宮攻略法が、僕にとっての機械なんだねー。
「身体が鋼鉄より固くなるとか、どんな暑さ寒さもへっちゃらになるとか……! 見ただけ話しただけで敵を気絶させるとか意味が分かんない! 私ってば一体、どーゆー時代に起きちゃったのー!?」
「ま、まあまあ。レリエさんも冒険者として登録するんだから、気が向いたら迷宮攻略法を修得してみればいいんだよー」
「できるの!? できるものなの、生身で空を飛ぶとかそんなことが人間に!?」
「できなかったら僕は一体なんなのかなー!?」
あまりに現実を受け入れられないからって、何も僕を人外扱いしようとしなくたっていいじゃん!
そんなに変なものなんだね、迷宮攻略法……いやまあ、重力制御なんかは世界でも僕、レイア、リューゼの3人しか体得してないかもだし変といえば変かもだけど。
ジェネレーション? あるいはカルチャー? とにかくギャップを感じるよー。
さすがに鳥みたいに自由自在とはいかないけれど、ある程度空を飛んだり、とてつもない高さまで飛び跳ねたりできるわけだねー。これを身に着けてから僕の人生がまるごと変わったとさえ言えるほどの、超便利な技法だよー。
「!? え、は? ちょ、え、浮いてる!?」
「舌噛まないように口閉じててねー。一気に地上に出るよ、よいしょー!」
「ちょっ、待っ、てへええぇぇぇ────!?」
腕を掴んだレリエさんごと浮いた僕は、彼女を半ば抱き寄せる形で一気に出入り口を上昇していく。初めてのことであわあわしてるレリエさんかわいいよーってホッコリしながらも、僕は細かく重力を制御していった。
この技法、やり方さえ覚えれば割と簡単にあれこれ重力に干渉できるんだけどー、コントロールそのものはとてつもなくシビアだから結構、集中力が要るんだよねー。
在りし日の調査戦隊を思い返す。
レジェンダリーセブンの中でもレイアとリューゼの二人が同じく重力制御を会得してたけど、リューゼのほうは僕ほど上手じゃなかったから空を飛んでは墜落したり、攻撃に利用しようとしてはトチったり散々失敗してたなー。
逆にレイアは僕より上手で、重力を武器に集中させた結果なんかすごい、すべてを吸い込む謎の現象を引き起こして他のメンバーにしこたま怒られてたっけ。懐かしいよー。
「よーっと! はい、とうちゃーく!」
「────ぇぇええぇぇえええへぇへへへえっ!?」
やっぱり人を抱えているからいつもよりはデリケートに操作して遅くなっちゃった。大体3分ほどかけてのんびりと出入り口から出ると、見知った泉の畔、森の上空にまで身を踊らせる。
レリエさん、ずーっと叫びっぱなしだったよー。喉枯れないかな、心配だ。とりあえず地上に降りて、レリエさんを落ち着かせる。
この様子だと彼女、初めて飛んだみたいだねー。超古代文明には重力制御、もっというと迷宮攻略法みたいなものはなかったのかなー。
懐からコーヒー入りの水筒を取り出す。朝、商店街を寄った時に珈琲屋さんに水筒に目一杯入れてもらった、ちょっと水っぽいけど安くて美味しいという僕の愛飲品だ。
それを渡すと叫び疲れたのか、一気に疲れた顔になった彼女はチビチビと呑み始めた。
「んく、んく……ぷは! な、何よあれ!? なんで何もないのに飛んだの!? 超能力!? もしかしてエスパーなのソウマくん!?」
「エスパー? 冒険者だけどー……超能力ってのがなんなのか分からないけど、今のは人間が努力で身につけられる技術の範疇だと思うよー?」
「いや無理だから! 何をどう努力したら人間が重力に干渉したりできるわけー!?」
うがーっ! と叫ぶレリエさん。どうやら古代文明では今みたいな技法、存在しないものみたいだ。
さすがに重力制御はレアにしたって、身体強化や環境適応なんかもなかったのかな? と疑問に思って聞いてみると、なんだか微妙にキレ気味に返事されちゃった。
「あ、あのね……! その、迷宮攻略法? なんて数万年前には影も形もなかったし、あっても漫画やアニメやアクション映画の話だったわよ!」
「漫画、アニメ? アクション映画?」
「え、あーと……つまりー、そう! 娯楽作品の中だけの話ってこと! この時代にもあるでしょそういう、なんか作り話とか!」
「あー」
言われて思い浮かべるのは、僕のお気に入りの小説だ。
機械っていう不思議で便利な動力機構が発達したファンタジー世界を舞台にしての、冒険したり青春したりとなんだかとっても楽しいお話だねー。
たとえば僕がそのファンタジー世界に行ったとして、"君の世界には機械がなかったのー? "って聞かれたら、あるわけないだろー! って叫んじゃうかもしれない。
そう考えるとレリエさんの反応にも納得がいくよー。彼女にとっての迷宮攻略法が、僕にとっての機械なんだねー。
「身体が鋼鉄より固くなるとか、どんな暑さ寒さもへっちゃらになるとか……! 見ただけ話しただけで敵を気絶させるとか意味が分かんない! 私ってば一体、どーゆー時代に起きちゃったのー!?」
「ま、まあまあ。レリエさんも冒険者として登録するんだから、気が向いたら迷宮攻略法を修得してみればいいんだよー」
「できるの!? できるものなの、生身で空を飛ぶとかそんなことが人間に!?」
「できなかったら僕は一体なんなのかなー!?」
あまりに現実を受け入れられないからって、何も僕を人外扱いしようとしなくたっていいじゃん!
そんなに変なものなんだね、迷宮攻略法……いやまあ、重力制御なんかは世界でも僕、レイア、リューゼの3人しか体得してないかもだし変といえば変かもだけど。
ジェネレーション? あるいはカルチャー? とにかくギャップを感じるよー。