ともに駆け出す僕と彼女。互いに、迷宮攻略法は重力制御を除いてフル活用している。
身体強化、武器強化、環境適応、威圧、再生能力、そして僕だけ未来予知。僕のほうが一手多い分有利だけど、そこを覆してくるのがレイア・アールバドだ。決して油断なんてしてられないよー。
「レイアァッ!!」
「ソウマッ!!」
それぞれ相手の名を叫びながらぶつかり合う。踏み込んで次の瞬間には至近距離だ、これをまずは読んでた!
未来予知で数秒間の未来、思いつく限りの動きを各パターン予知して最適解を選び出す。普通はこの局面、ジャブなりアッパーなりで牽制しつつ杭打ちくんを当てる段取りをつけるもんだけど……!
僕の見立ては違う、ここはさらに回り込む! 正面からしかけたら打ち負ける、レイアのパワーは僕より上だ!
だから! 発生させた無限エネルギーで僕をレイアから見て右側に押し込んで、無理矢理軌道を変える!
「ッ!!」
「避けた!? ────右っ!!」
まっすぐぶつかると思ってたんだろう、斬撃を繰り出すレイアの驚きを耳にする。気づいた時にはもう僕は君の右だよ!
……ところがコレが恐ろしい話で、レイアは瞬時に僕の動きに対応し、振り下ろした剣を地面に突き刺してそれを支えにして翔んだ。以前リンダ先輩が見せた、攻撃後即座に姿勢を整えて次撃につなげるための高等技術だ。
そしてそのまま翔んだ彼女が、殆ど見えてないだろうに無茶な軌道で僕に蹴りを繰り出してきた。
するどい、銛のようなキックだ! ギリギリここまでは未来予知できているから予め、その攻撃を知っていた僕は顔面めがけて放たれたそれを首を軽く傾げることで最小限の動作で回避。
でもここからは予知していない、まさしく勝負どころだ!
「杭打ちくんっ!!」
「なんのぉっ!!」
カウンターを合わせて杭打ちくんを、彼女の左胴体の側面に打ち込む。仕方ないとはいえ飛んだのは賭けだったね、身動きが取りづらくなる。
だからこうなるんだよ! 僕は彼女の脇柄に杭打ちくんをぶつけようとして──
「っ、まだまだぁー!!」
「!?」
活きた目、躍動したままの姿に戦慄が背筋を駆け巡る。レイア、まだもう一手あるの!?
瞬間、まったくノーマークだった真下から斬り上げてきた──ロングソード! 宙返りの体勢から、さらにもう一撃加えてきたんだ。
曲芸通り越してるよ、無茶だよー!? 引きつる顔で内心叫ぶ、声を上げる余裕もない!
「ああああああっ!!」
「────ッ!!」
レイアを狙う杭打ちくん、僕を狙うロングソード。まったく同時にお互いを打ちのめす、いわゆる相打ちのタイミングだ。
だけど……こういう攻撃こそ本来、僕が生き抜いてきた地獄なんだよ! 引きつる顔を無理矢理笑顔に変えて、僕は杭打ちくんを振り抜いた!
同時に、斬り上げてくるロングソードを右手の素手で受け止める!!
「ッ!? 痛、ぅ〜っ!!」
ズブリ、と。はたまたザシュッと、もしくはスパッと。
僕の掌にザックリ斬り込んで、肉なんて断って骨まで届く衝撃と痛み。噴き出る鮮血。
レイアを横殴りにしながら、あまりの苦痛に思わず叫ぶ。すっごい痛い! ここまでの思いは3年間してこなかったよー!
さすがはレイアだ、武器強化に身体強化までしてるロングソードの一撃は、僕の身体強化さえ貫通して見事に右手をグロテスクなことにしてくれてるよー!
でも、こっちも! 負けてなるものかと、彼女の胴体に当てた杭打ちくんのレバーを──押し抜ける!
「っ、のぉ!! 杭、打ち、くぅぅぅんッ!!」
「ぐふぁっ──が、あああぁっ!?」
射出される杭が、レイアの防御をぶち抜いて深々と身体に刺さる。決まった──たしかな手応えを覚える。
常人なら、ていうか地下80階層台のモンスターだとしても必殺の威力。間違いなく、決着の一撃だよー。
でもレイアの身体強化は飛び抜けているから、ここまで全力でぶち抜いても精々内臓に届くか届かないかってくらいだ。
その上、僕の手もだけど迷宮攻略法の一つ、超再生能力でこのくらいの傷ならお互い、小一時間もすればそれなりに回復する。まあ全快にはさすがに一日くらいかかるだろうけど、致命傷とはまるで遠い程度のダメージだよ。
「ソウマくん!?」
「だ、大丈夫! すぐ治るよ、僕も……向こうも」
「レイアーッ!!」
「くっ、ぐ、があ、はあ、ぐぁっ……!!」
シアンさんとウェルドナーさんの叫び。それぞれ僕とレイアを心配してのものだけど、僕のほうは問題なくその声に応じられて、けれどレイアはまともに答えることができずに腹を抑え、荒く息をしている。
そのまま僕は、痛みから蹲って動けなくなっている彼女に近づき──
「僕の勝ちだよ、レイア」
「っ、はぁ、げほ、ごほっ──そ、だね。わたし、まけ、みたい」
杭打ちくんを彼女の頭にコツン、と軽く、本当にちょびっとだけタッチさせ、勝利を宣言した。
右手だけ負傷したけど全然動ける僕と、胴体を負傷したために動けなくなったレイア。
互いに渾身の攻撃を仕掛けた末の、これが結果だった。
身体強化、武器強化、環境適応、威圧、再生能力、そして僕だけ未来予知。僕のほうが一手多い分有利だけど、そこを覆してくるのがレイア・アールバドだ。決して油断なんてしてられないよー。
「レイアァッ!!」
「ソウマッ!!」
それぞれ相手の名を叫びながらぶつかり合う。踏み込んで次の瞬間には至近距離だ、これをまずは読んでた!
未来予知で数秒間の未来、思いつく限りの動きを各パターン予知して最適解を選び出す。普通はこの局面、ジャブなりアッパーなりで牽制しつつ杭打ちくんを当てる段取りをつけるもんだけど……!
僕の見立ては違う、ここはさらに回り込む! 正面からしかけたら打ち負ける、レイアのパワーは僕より上だ!
だから! 発生させた無限エネルギーで僕をレイアから見て右側に押し込んで、無理矢理軌道を変える!
「ッ!!」
「避けた!? ────右っ!!」
まっすぐぶつかると思ってたんだろう、斬撃を繰り出すレイアの驚きを耳にする。気づいた時にはもう僕は君の右だよ!
……ところがコレが恐ろしい話で、レイアは瞬時に僕の動きに対応し、振り下ろした剣を地面に突き刺してそれを支えにして翔んだ。以前リンダ先輩が見せた、攻撃後即座に姿勢を整えて次撃につなげるための高等技術だ。
そしてそのまま翔んだ彼女が、殆ど見えてないだろうに無茶な軌道で僕に蹴りを繰り出してきた。
するどい、銛のようなキックだ! ギリギリここまでは未来予知できているから予め、その攻撃を知っていた僕は顔面めがけて放たれたそれを首を軽く傾げることで最小限の動作で回避。
でもここからは予知していない、まさしく勝負どころだ!
「杭打ちくんっ!!」
「なんのぉっ!!」
カウンターを合わせて杭打ちくんを、彼女の左胴体の側面に打ち込む。仕方ないとはいえ飛んだのは賭けだったね、身動きが取りづらくなる。
だからこうなるんだよ! 僕は彼女の脇柄に杭打ちくんをぶつけようとして──
「っ、まだまだぁー!!」
「!?」
活きた目、躍動したままの姿に戦慄が背筋を駆け巡る。レイア、まだもう一手あるの!?
瞬間、まったくノーマークだった真下から斬り上げてきた──ロングソード! 宙返りの体勢から、さらにもう一撃加えてきたんだ。
曲芸通り越してるよ、無茶だよー!? 引きつる顔で内心叫ぶ、声を上げる余裕もない!
「ああああああっ!!」
「────ッ!!」
レイアを狙う杭打ちくん、僕を狙うロングソード。まったく同時にお互いを打ちのめす、いわゆる相打ちのタイミングだ。
だけど……こういう攻撃こそ本来、僕が生き抜いてきた地獄なんだよ! 引きつる顔を無理矢理笑顔に変えて、僕は杭打ちくんを振り抜いた!
同時に、斬り上げてくるロングソードを右手の素手で受け止める!!
「ッ!? 痛、ぅ〜っ!!」
ズブリ、と。はたまたザシュッと、もしくはスパッと。
僕の掌にザックリ斬り込んで、肉なんて断って骨まで届く衝撃と痛み。噴き出る鮮血。
レイアを横殴りにしながら、あまりの苦痛に思わず叫ぶ。すっごい痛い! ここまでの思いは3年間してこなかったよー!
さすがはレイアだ、武器強化に身体強化までしてるロングソードの一撃は、僕の身体強化さえ貫通して見事に右手をグロテスクなことにしてくれてるよー!
でも、こっちも! 負けてなるものかと、彼女の胴体に当てた杭打ちくんのレバーを──押し抜ける!
「っ、のぉ!! 杭、打ち、くぅぅぅんッ!!」
「ぐふぁっ──が、あああぁっ!?」
射出される杭が、レイアの防御をぶち抜いて深々と身体に刺さる。決まった──たしかな手応えを覚える。
常人なら、ていうか地下80階層台のモンスターだとしても必殺の威力。間違いなく、決着の一撃だよー。
でもレイアの身体強化は飛び抜けているから、ここまで全力でぶち抜いても精々内臓に届くか届かないかってくらいだ。
その上、僕の手もだけど迷宮攻略法の一つ、超再生能力でこのくらいの傷ならお互い、小一時間もすればそれなりに回復する。まあ全快にはさすがに一日くらいかかるだろうけど、致命傷とはまるで遠い程度のダメージだよ。
「ソウマくん!?」
「だ、大丈夫! すぐ治るよ、僕も……向こうも」
「レイアーッ!!」
「くっ、ぐ、があ、はあ、ぐぁっ……!!」
シアンさんとウェルドナーさんの叫び。それぞれ僕とレイアを心配してのものだけど、僕のほうは問題なくその声に応じられて、けれどレイアはまともに答えることができずに腹を抑え、荒く息をしている。
そのまま僕は、痛みから蹲って動けなくなっている彼女に近づき──
「僕の勝ちだよ、レイア」
「っ、はぁ、げほ、ごほっ──そ、だね。わたし、まけ、みたい」
杭打ちくんを彼女の頭にコツン、と軽く、本当にちょびっとだけタッチさせ、勝利を宣言した。
右手だけ負傷したけど全然動ける僕と、胴体を負傷したために動けなくなったレイア。
互いに渾身の攻撃を仕掛けた末の、これが結果だった。