ヒノモト美女のサクラさんが、しきりに僕を気にしてくれてるよー!
これは一言で言えば恋の予感ではないでしょうか!?
「はいはい落ち着けソウマくん、今感じてるそれはいつもの早とちりだから」
「爆死するにしてもせめて段階を踏むことを覚えようなソウマくん。毎度同じ流れで爆死してるぞソウマくん」
「むぐぐぐー!?」
ときめく胸キュン体験に紛れもなくこれは運命だよー! といきり立とうとしたところ、即座にケルヴィンくんとセルシスくんに取り押さえられてしまった。
そして二人がかりで窘めてくるのを、ぐうの音も出ないと過去10回の失恋経験から悟り冷静さを取り戻す。いけないいけない、また同じ過ちを繰り返すところだったよー。
騒ぐ僕達3人に対して、サクラさんは目を丸くしてキョトンとしている。かわいい!
そしておずおずと、困惑も露わに僕達に対して、愛想笑いを浮かべて話しかけてくる。
「…………えーと? でござる。急に戯れだして、仲が良さそうで何よりでござるなー」
「いえいえお気になさらず。ソウマくんのいつものやつが発動しただけですから」
「ソウマくんは恋に恋するお年頃みたいなんですよ。だからすぐに女の子に惚れては突撃して返り討ちに遭うんです」
「ああああまさかの暴露おおおお!?」
言いやがったー!? 悪友達が僕の秘密を暴露したよー!?
恋に恋するお年頃だなんてそんな、ロマンチックな物言いをされたけどちゃんと人を見て恋してますから! その上でときめきのままに突っ込もうとして概ねオーランドくんに掻っ攫われているだけですから!
ていうか唐突にこんな話を聞かされてサクラさん、僕にドン引きしてないかなー!? これで恋が破れたらただじゃおかないぞ二人とも、具体的には最高級ステーキ10枚くらい奢ってもらうからなー!
がうがう吠える僕に、友人達はなんとも腹の立つ透き通ったいい笑顔を浮かべて言ってくる。
「さすがに冒険者として知り合いの人には言っといたほうがいいだろ、杭打ちくん? 君の失恋癖は何も知らない人からするとドン引きものなんだぞ」
「どうせ今後も美人と見るや、何回目だかの初恋だよーとか騒ぐ奇行に及ぶんだから早い段階でカミングアウトしときなよ杭打ちくん。今ならまだ傷は浅くて済むぞ」
「失恋癖ってなんだよー!? せめて初恋癖って言ってよー!」
失恋を前提にして話するのやめろー! 僕の初恋が成就することはないって言いたいのかー!!
謂れなき誹謗中傷には断固として抗議するよー!
うがーうがーと喚く僕と、はいはいと肩や背中をぱしぱし叩く悪友二人。そして夕焼けに染まる部室内、しばらくそうやって騒いだ後に静けさが少しばかり漂う。
沈黙の中サクラさんが、不意に声を上げて笑い出した。
「くっ……くくくっ、あはははははは!」
「えぇ……?」
「なるほどなるほど、初恋癖でござるかー! 聞いてた話を総合すると、なるほど! 杭打ち殿は恋をしたいのでござるねー。そっかそっかでござるー」
なんかすごいウケた。馬鹿にしてるとかって感じでもなく、純粋に楽しそうに嬉しそうに笑っている感じだ。
急に何……? っていうか聞いてた話? 何それ。誰かに僕について聞いてたのかな? 町の冒険者とか?
疑問符の並ぶ状況。一頻り笑ってから、サクラさんは涙すら滲んだ目を拭いつつ、ひどく優しい目で僕を見た。
「えーと、サクラさん?」
「この町に来るのを決めたのは、オーランドの両親であるグレイタス夫妻に頼まれたというのもあるでござるが……個人的に杭打ち殿、貴殿の話をいろいろ聞かせてもらっていたからというのもあるんでござるよ」
「僕の話……」
「そう──たとえば貴殿がかつてパーティーに所属していた頃について、とかでござるなー」
目を細めて微笑みかけてくるサクラ先生。あっ、胸がまたドキドキしちゃうー。
っていうか僕の話ってそういうアレかー。グレイタス夫妻とも一時期一緒のパーティーだったし、当時の僕のことをどうやらこの人、いろいろ知ってるみたいだね。
でもぶっちゃけ、だからどしたの感はある。だって結局僕ってば、最終的にそのパーティーには最初から存在してなかったってこととして処理されたし。
代わりにたんまりお金は貰ったからその辺について文句も特にないんだけど……見ればサクラさんはどこか、怖い声音で続けて話す。
「……貴殿ほどの神童を、下らぬ理由で存在ごとなかったことにして隠蔽した連合王国を拙者は許さぬ」
「えっ……」
「冒険者"杭打ち"に本来与えられるべきであった栄光と未来が踏み躙られたこと、貴殿は納得ずくなのであろうが拙者はじめ、事情を知る冒険者達はみな断じて納得しておらぬのでござるよ。知らなかったでござろうが」
「は、はあ」
全然これっぽっちも知らないよ、そんなこと。
僕のことで僕の知らないところで何やらカッカしてる人達がいるなんて、予想もしてないことだよー?
そもそも僕に本来、与えられるべきだったものなんて金以外にないよ。あのパーティーに所属してたのも金払いが良かったってだけの話でしかないのに。
双方納得ずくの話でも許されないとか、エウリデ連合王国くんたら普段の行いが悪いねー。いやまあ、トータルで見たら僕もこの国のお偉いさんは嫌いだし気持ちは分かるけどー。
これは一言で言えば恋の予感ではないでしょうか!?
「はいはい落ち着けソウマくん、今感じてるそれはいつもの早とちりだから」
「爆死するにしてもせめて段階を踏むことを覚えようなソウマくん。毎度同じ流れで爆死してるぞソウマくん」
「むぐぐぐー!?」
ときめく胸キュン体験に紛れもなくこれは運命だよー! といきり立とうとしたところ、即座にケルヴィンくんとセルシスくんに取り押さえられてしまった。
そして二人がかりで窘めてくるのを、ぐうの音も出ないと過去10回の失恋経験から悟り冷静さを取り戻す。いけないいけない、また同じ過ちを繰り返すところだったよー。
騒ぐ僕達3人に対して、サクラさんは目を丸くしてキョトンとしている。かわいい!
そしておずおずと、困惑も露わに僕達に対して、愛想笑いを浮かべて話しかけてくる。
「…………えーと? でござる。急に戯れだして、仲が良さそうで何よりでござるなー」
「いえいえお気になさらず。ソウマくんのいつものやつが発動しただけですから」
「ソウマくんは恋に恋するお年頃みたいなんですよ。だからすぐに女の子に惚れては突撃して返り討ちに遭うんです」
「ああああまさかの暴露おおおお!?」
言いやがったー!? 悪友達が僕の秘密を暴露したよー!?
恋に恋するお年頃だなんてそんな、ロマンチックな物言いをされたけどちゃんと人を見て恋してますから! その上でときめきのままに突っ込もうとして概ねオーランドくんに掻っ攫われているだけですから!
ていうか唐突にこんな話を聞かされてサクラさん、僕にドン引きしてないかなー!? これで恋が破れたらただじゃおかないぞ二人とも、具体的には最高級ステーキ10枚くらい奢ってもらうからなー!
がうがう吠える僕に、友人達はなんとも腹の立つ透き通ったいい笑顔を浮かべて言ってくる。
「さすがに冒険者として知り合いの人には言っといたほうがいいだろ、杭打ちくん? 君の失恋癖は何も知らない人からするとドン引きものなんだぞ」
「どうせ今後も美人と見るや、何回目だかの初恋だよーとか騒ぐ奇行に及ぶんだから早い段階でカミングアウトしときなよ杭打ちくん。今ならまだ傷は浅くて済むぞ」
「失恋癖ってなんだよー!? せめて初恋癖って言ってよー!」
失恋を前提にして話するのやめろー! 僕の初恋が成就することはないって言いたいのかー!!
謂れなき誹謗中傷には断固として抗議するよー!
うがーうがーと喚く僕と、はいはいと肩や背中をぱしぱし叩く悪友二人。そして夕焼けに染まる部室内、しばらくそうやって騒いだ後に静けさが少しばかり漂う。
沈黙の中サクラさんが、不意に声を上げて笑い出した。
「くっ……くくくっ、あはははははは!」
「えぇ……?」
「なるほどなるほど、初恋癖でござるかー! 聞いてた話を総合すると、なるほど! 杭打ち殿は恋をしたいのでござるねー。そっかそっかでござるー」
なんかすごいウケた。馬鹿にしてるとかって感じでもなく、純粋に楽しそうに嬉しそうに笑っている感じだ。
急に何……? っていうか聞いてた話? 何それ。誰かに僕について聞いてたのかな? 町の冒険者とか?
疑問符の並ぶ状況。一頻り笑ってから、サクラさんは涙すら滲んだ目を拭いつつ、ひどく優しい目で僕を見た。
「えーと、サクラさん?」
「この町に来るのを決めたのは、オーランドの両親であるグレイタス夫妻に頼まれたというのもあるでござるが……個人的に杭打ち殿、貴殿の話をいろいろ聞かせてもらっていたからというのもあるんでござるよ」
「僕の話……」
「そう──たとえば貴殿がかつてパーティーに所属していた頃について、とかでござるなー」
目を細めて微笑みかけてくるサクラ先生。あっ、胸がまたドキドキしちゃうー。
っていうか僕の話ってそういうアレかー。グレイタス夫妻とも一時期一緒のパーティーだったし、当時の僕のことをどうやらこの人、いろいろ知ってるみたいだね。
でもぶっちゃけ、だからどしたの感はある。だって結局僕ってば、最終的にそのパーティーには最初から存在してなかったってこととして処理されたし。
代わりにたんまりお金は貰ったからその辺について文句も特にないんだけど……見ればサクラさんはどこか、怖い声音で続けて話す。
「……貴殿ほどの神童を、下らぬ理由で存在ごとなかったことにして隠蔽した連合王国を拙者は許さぬ」
「えっ……」
「冒険者"杭打ち"に本来与えられるべきであった栄光と未来が踏み躙られたこと、貴殿は納得ずくなのであろうが拙者はじめ、事情を知る冒険者達はみな断じて納得しておらぬのでござるよ。知らなかったでござろうが」
「は、はあ」
全然これっぽっちも知らないよ、そんなこと。
僕のことで僕の知らないところで何やらカッカしてる人達がいるなんて、予想もしてないことだよー?
そもそも僕に本来、与えられるべきだったものなんて金以外にないよ。あのパーティーに所属してたのも金払いが良かったってだけの話でしかないのに。
双方納得ずくの話でも許されないとか、エウリデ連合王国くんたら普段の行いが悪いねー。いやまあ、トータルで見たら僕もこの国のお偉いさんは嫌いだし気持ちは分かるけどー。