「ふむ……まさか本当に戻ってきていたか、英雄。変わりないようで何よりだ」
「あははは……お久しぶりです、ギルド長。3年前はいろいろとお世話になりまして」

 戻ってきたレイアが談話室に連れてきた、ギルド長ベルアニーさんがレイアに声をかけた。他にも何人もやってきてるんだけど、いずれも席について一息ついてからのやり取りだよー。
 ベルアニーさんからしても夢か幻かってとこだろうねー……3年前にあんなことがあったパーティの、元リーダーが今また姿を見せているんだから。

 いかにも珍妙なものを見たような顔で、けれど彼の目は鋭く光った。
 嘘偽りは許さないと言わんばかりの眼光でレイアを見据え、世間話のようなノリで問いかける。

「バーゼンハイムにバルディエートもきているのだろう? ラウドプラウズにグンダリ、ワルンフォルース卿に教授も含めれば、もはやほとんど調査戦隊が復活するかのような勢いだな、アールバド」
「ありえませんよ。もう調査戦隊はこの世にありません。3年前に解散しました……私達全員の過失によって。それがすべてです」
「レイア、それは」
「まあまあ、良いから良いから」

 この場にいる元調査戦隊メンバーの数を思えば、いやもうこれ調査戦隊の復活も同然だよねー? って言いたくなる気持ちも分からなくはないかな。
 ただ、レイアはそんな軽口を温和ながら一刀の下に断じた。調査戦隊なんてすでにこの世にはなく、3年前に終わった過去なんだって言い切ったんだ……その責任を、自分達調査戦隊メンバー全員にあるとさえ示唆して。

 これには僕も思わず抗議の声をあげたものの、やはり当の本人に宥められてしまった。
 自分達全員の過失だなんて、そんなことあるはずないのに。アレは間違いなくエウリデ王と、貴族と、そして僕の三者にすべての責任がある。

 どんな事情があろうと絶対にそこだけは変わらないはずなのに……レイアはどうして、こうも頑なに?
 理解できずに居た堪れなさだけが募る僕をよそに、彼女はさてと話を変えた。
 
「それよりも、わざわざこんなところに皆さんをお呼び立てしたのは他でもありません。我々が今般、この国へ戻ってきた本命の理由……その目的を果たすためです」
「目的って……それでなんで俺等が呼ばれるんだ?」
「さすがに場違いよねえ……」
「ぴぇぇぇぇぇぇ」

 いよいよ話の核心へと至る……その前に、なんで自分達がここにいるんだろう? ってひそひそ話で怯え竦む声が聞こえた。僕もよく知ってる、友人みたいな冒険者達だ。
 "煌めけよ光"のレオンくんをはじめとするみなさんが、何故だかこの場にいるんだ。ヤミくんにヒカリちゃんだっているよー。

 まあたぶん、古代文明からやって来たってことで厳密にはこの双子が呼ばれていて、レオンくん達は二人の保護者ってことで随伴してるんだろう。
 レイアも申しわけなさそうに微笑みながら、彼らに対して謝罪した。
 
「ええと、"煌めけよ光"のみなさんには急な話でごめんなさい。ただ、ことはあなた達……ううん。あなた達とともにいるそちらの双子さん達にも関わってるから」
「…………超古代文明のことですね」
「その通り。君は、ええと……お名前を伺っても?」

 そんな中、ヤミくんは冷静に事態を把握しているみたいだった。レイアの目的が古代文明絡み、つまりは自分やヒカリちゃんにも関わる話だと察して、レイア相手に落ち着いてコミュニケーションを図ろうとしているよー。
 
「ヤミです。こちらは姉のヒカリです」
「ヒカリです。よ、よろしくお願いいたします」
「ご丁寧にありがとう! 私はレイア・アールバド。よろしくね! ……ごめんね、怖がらせて」

 礼儀正しく挨拶する双子に、子供に優しいレイアはそりゃもうほっこりした様子で柔らかく微笑んで応えた。それからすぐに、申しわけなさそうに頭を下げる。
 古代文明絡みということで嫌でも緊張せざるを得ない双子を、痛ましく思ったんだろう。努めて誠実な瞳と表情で、彼女は真摯に告げる。
 
「絶対に君達に危害は加えない。それは私と、私の仲間と、培ってきた絆に誓う」
「姉御が絆に誓うつったらそいつぁ絶対だ。信じて委ねろや、ガキンチョども──あいてっ!?」
「リューゼちゃん、こんな子ども達を怖がらせるようなことはしないの! あなたはもう、3年前からだけど何かあるとすぐに威圧するよね! もう!!」
「す、すんません……」
 
 馬鹿だなあ。いらない軽口を挟んだリューゼってば、当たり前だけどレイアに思い切り頭を叩かれてるよー。
 舎弟仕草は良いけど時と場合、相手を考えないと。子供相手にイキって恫喝寸前の物言いをするレジェンダリーセブンなんてありとあらゆる角度からアウトだよねー。