レイア達、元調査戦隊中核メンバーがこのタイミングでこの国へと戻ってきた理由。
それをこれから包み隠さず話すと宣言したレイアに、リューゼがおずおずと尋ねた。僕ら相手にはありえないくらい慎重で丁寧な態度だ。
こいつ、昔からレイア相手には単純に舎弟めいた態度だったからねー……3年経って、自分も一団率いるリーダーにまでなったのにそこだけは変わらないみたい。
「あ、姉御……ウェルドナーさんにカインのやつまで含めて、なんでこんな良いタイミングで来たんですかい? 狙ってたとか?」
「さすがに狙ってはないよー。ただちょっと、思ってもない動きがあったから面食らいはしたけど」
そんな彼女にレイアも苦笑いして首を横に振る。
まあさすがにタイミングを見計らってやってきた、なんてことはありえないか。あまりに都合が良かったから若干疑ったけど、今回のエウリデの動きは誰にとっても予想外だったんだね。
「まずは場所、移動しよっか……うーん。ベルアニーさんやモニカ教授にもいてほしいし、あの人も呼んで王城のどこか部屋をお借りしちゃおっか!」
こともなげにレイアが言う。場所を変えるのはそうすべきだけど……王城の適当な部屋を借りるって、かなり突拍子もないよー?
なんか3年前よりずっと奔放な気がするよー、レイア、いろいろ吹っ切れたって感じだねー。僕としては生き生きしてるようだから嬉しい限りだけど、原因を辿ればそもそも僕に行き着くのは複雑だよー。
いろいろもんにょりする内心を押し殺しつつ、僕はレイアに問いかけた。
「お借りしちゃおっかって、レイア……できるの? そんなこと」
「もう王様は実質王様じゃないからいけるでしょ、たぶん!」
「ふ、複雑です……」
「貴族の家の者としては、な……」
あっけらかんと言い放つレイアに、複雑なのがシアンさんとシミラ卿だ。
二人とも貴族の人だものね、仮にも仕えていた主君をこうまで適当に扱われるのは、妥当だと理屈の上では分かっていても、納得に苦しむところもあるんだろう。
ただ、そのへんについては僕らが口を挟める部分でないのもたしかだ。だって僕らは貴族じゃないし、エウリデ国王なんてはじめからどうでもいいと言えばどうでもいい存在だったし。
結局、どうあれ答えを出すのは各々自身しかないんだよー。特に自分の本質的な部分、基盤となる箇所についての悩みならなおのこと、ねー。
「さ、行こうみんな! この世界の成り立ち、そしてさっきの"神"とエウリデ……古代文明。そして何より地下に広がる大迷宮。それらの答え合わせをする時がきたんだ!」
悩める貴族をあえて放置して、レイアは高らかに宣言した。
答え合わせ……これまで世界にとっても謎だった古代文明や大迷宮に対しての、一つの解答をレイアは持っているって言うの?
冒険者として疼く好奇心を抑えられない。それは貴族として悩む二人も同様だ。
こうして僕らはレイアの言葉に、答え合わせに臨むために彼女に続いて王城内へと進入していった。
王城内をずんずん進むレイアに、立ち尽くす兵士達や貴族達も何もできず話せずだ。状況が理解できず、ただ何か、とんでもない異変が起きていることだけは察して動けずにいるんだねー。
そんな彼らに次々と、レイアの部下達が大勢で取り囲んで説得していく。なるべく穏便に済ませたいんだろうけど、武器を片手に話してるんだからほぼ脅迫だよー。
「貴族達もさすがに、多勢に無勢ともなれば大人しいか……」
「あんまり手荒なのは好きくないんだけどね。でもここの貴族だけはこのくらいしないと、ろくに人の話も聞きやしないから」
「あの、アールバドさん。なるべく流血沙汰だけは避けていただけますと……」
「ん、それは任せてシアンちゃん。私達はあくまで彼らに、新しい時代に未来を譲り渡してほしいだけだから。既得権益を多少は崩しちゃうかもだけど、決して誰一人殺しはしないから安心して」
「は、はあ……」
何をどう安心しろっていうんだかね、レイア……シアンさんもあからさまに不安がってるよー。
既得権益を崩すなんて貴族が最も嫌うことだし、今この時は大人しくても絶対あとから騒ぎ出すよ。そしたら内戦かもしれないんだけど、そこんとこどう考えてるんだろう?
思わず質問すると、レイアはあははーと苦く笑いながら、それでもどこか冷たい目で虚空を見つめた。
遠い何処かを眺めるようにしながら、端的に応える。
「そのへん、今から話す内容にもかかるから後で話すけど……間違いなく貴族達は私達の要求に従うよ。従うしかない」
「…………?」
「罪を背負っているのは王族だけじゃないってこと。この国の上層部はね、大体罪塗れなんだよ」
言いながらも僕らは一際大きな扉の前に辿り着く。
覚えのある部屋だ……3年前にも何度か訪れたことのあるサロン、談話室だね。
レイアが勢いよく開けるとそこはもぬけの殻だ、誰もいない。
貴族の一人もいるかと思ったけど、さっきまですぐ近くを化物が暴れてたのにのんきにお話なんてしちゃいないか。
「ん、ここで良いよね。とりあえず座って待っててよ、ベルアニーさんはじめ、関係者の皆さんを呼んでくるから」
僕らを適当な席に座らせ、自分はさっさと部屋を出ていく。
ベルアニーさん達を呼びに行ったんだろうね。フットワークが軽いなー。
結局レイアが戻ってくるのは、そこから十分くらいしてからのことだった。
それをこれから包み隠さず話すと宣言したレイアに、リューゼがおずおずと尋ねた。僕ら相手にはありえないくらい慎重で丁寧な態度だ。
こいつ、昔からレイア相手には単純に舎弟めいた態度だったからねー……3年経って、自分も一団率いるリーダーにまでなったのにそこだけは変わらないみたい。
「あ、姉御……ウェルドナーさんにカインのやつまで含めて、なんでこんな良いタイミングで来たんですかい? 狙ってたとか?」
「さすがに狙ってはないよー。ただちょっと、思ってもない動きがあったから面食らいはしたけど」
そんな彼女にレイアも苦笑いして首を横に振る。
まあさすがにタイミングを見計らってやってきた、なんてことはありえないか。あまりに都合が良かったから若干疑ったけど、今回のエウリデの動きは誰にとっても予想外だったんだね。
「まずは場所、移動しよっか……うーん。ベルアニーさんやモニカ教授にもいてほしいし、あの人も呼んで王城のどこか部屋をお借りしちゃおっか!」
こともなげにレイアが言う。場所を変えるのはそうすべきだけど……王城の適当な部屋を借りるって、かなり突拍子もないよー?
なんか3年前よりずっと奔放な気がするよー、レイア、いろいろ吹っ切れたって感じだねー。僕としては生き生きしてるようだから嬉しい限りだけど、原因を辿ればそもそも僕に行き着くのは複雑だよー。
いろいろもんにょりする内心を押し殺しつつ、僕はレイアに問いかけた。
「お借りしちゃおっかって、レイア……できるの? そんなこと」
「もう王様は実質王様じゃないからいけるでしょ、たぶん!」
「ふ、複雑です……」
「貴族の家の者としては、な……」
あっけらかんと言い放つレイアに、複雑なのがシアンさんとシミラ卿だ。
二人とも貴族の人だものね、仮にも仕えていた主君をこうまで適当に扱われるのは、妥当だと理屈の上では分かっていても、納得に苦しむところもあるんだろう。
ただ、そのへんについては僕らが口を挟める部分でないのもたしかだ。だって僕らは貴族じゃないし、エウリデ国王なんてはじめからどうでもいいと言えばどうでもいい存在だったし。
結局、どうあれ答えを出すのは各々自身しかないんだよー。特に自分の本質的な部分、基盤となる箇所についての悩みならなおのこと、ねー。
「さ、行こうみんな! この世界の成り立ち、そしてさっきの"神"とエウリデ……古代文明。そして何より地下に広がる大迷宮。それらの答え合わせをする時がきたんだ!」
悩める貴族をあえて放置して、レイアは高らかに宣言した。
答え合わせ……これまで世界にとっても謎だった古代文明や大迷宮に対しての、一つの解答をレイアは持っているって言うの?
冒険者として疼く好奇心を抑えられない。それは貴族として悩む二人も同様だ。
こうして僕らはレイアの言葉に、答え合わせに臨むために彼女に続いて王城内へと進入していった。
王城内をずんずん進むレイアに、立ち尽くす兵士達や貴族達も何もできず話せずだ。状況が理解できず、ただ何か、とんでもない異変が起きていることだけは察して動けずにいるんだねー。
そんな彼らに次々と、レイアの部下達が大勢で取り囲んで説得していく。なるべく穏便に済ませたいんだろうけど、武器を片手に話してるんだからほぼ脅迫だよー。
「貴族達もさすがに、多勢に無勢ともなれば大人しいか……」
「あんまり手荒なのは好きくないんだけどね。でもここの貴族だけはこのくらいしないと、ろくに人の話も聞きやしないから」
「あの、アールバドさん。なるべく流血沙汰だけは避けていただけますと……」
「ん、それは任せてシアンちゃん。私達はあくまで彼らに、新しい時代に未来を譲り渡してほしいだけだから。既得権益を多少は崩しちゃうかもだけど、決して誰一人殺しはしないから安心して」
「は、はあ……」
何をどう安心しろっていうんだかね、レイア……シアンさんもあからさまに不安がってるよー。
既得権益を崩すなんて貴族が最も嫌うことだし、今この時は大人しくても絶対あとから騒ぎ出すよ。そしたら内戦かもしれないんだけど、そこんとこどう考えてるんだろう?
思わず質問すると、レイアはあははーと苦く笑いながら、それでもどこか冷たい目で虚空を見つめた。
遠い何処かを眺めるようにしながら、端的に応える。
「そのへん、今から話す内容にもかかるから後で話すけど……間違いなく貴族達は私達の要求に従うよ。従うしかない」
「…………?」
「罪を背負っているのは王族だけじゃないってこと。この国の上層部はね、大体罪塗れなんだよ」
言いながらも僕らは一際大きな扉の前に辿り着く。
覚えのある部屋だ……3年前にも何度か訪れたことのあるサロン、談話室だね。
レイアが勢いよく開けるとそこはもぬけの殻だ、誰もいない。
貴族の一人もいるかと思ったけど、さっきまですぐ近くを化物が暴れてたのにのんきにお話なんてしちゃいないか。
「ん、ここで良いよね。とりあえず座って待っててよ、ベルアニーさんはじめ、関係者の皆さんを呼んでくるから」
僕らを適当な席に座らせ、自分はさっさと部屋を出ていく。
ベルアニーさん達を呼びに行ったんだろうね。フットワークが軽いなー。
結局レイアが戻ってくるのは、そこから十分くらいしてからのことだった。