3人、息を揃えて走り出す。行き先はいわずもがな"神"。
重力制御によってのみその身に纏うバリアを剥がすことができる、半絶対的防御を備えただけのモンスターへと、僕らは総攻撃を仕掛けようとしていた。
「行くよ、私に合わせて!!」
「トチんなよ、ソウマァッ!!」
「そっちこそ、逸って先走らないでよー!!」
3年前にたくさん交わしたやり取りを、3年経った今でもまた、こうして繰り返す。
他の二人はどうか知らないけれど、僕はそれが堪らなく嬉しい。杭打ちくんに込める力も、これまでにないほどに強く、そして完璧なものになっていくのを感じるよー。
迎え撃つ化物はなおも触手を繰り出してきている。
並のやつならそれでどうにかできたろうけど、あいにく僕らは並じゃないんだ──勝負だ、神様。
なんだか事情があるみたいだけど、それでも敵なら僕は、躊躇なくぶち抜くよ!!
「滅びなさい……遥か残りし罪の残滓!」
「死ねゴラァァァァァァ!!」
「ぶち抜け──杭打ちくん!!」
三者、ともに駆けともに飛びともに肉薄する。
狙うはさっき僕とレイアで裂いた傷口、すごい勢いで治癒しているけど追いついてないところ!
さっきよりもはるかに強くて重い攻撃だ! 喰らって、生き延びられるものか!!
『ヴォギャアアアアアアアアッ!? ウギャッ、ウギャアアアアオオオオ!!』
レイアのロングソードの剣閃が疾走り。
リューゼリアのザンバーの剛剣が唸り。
そして僕の杭打機がすべてをぶち抜く。
3人が繰り出すそれぞれの武器が完全に、寸分違わずタイミングを一致させて傷口をさらに抉り、内部をかき混ぜぶち撒ける。
生物である以上は決して耐えられない手応え──そして化物の断末魔の叫び。
決着だ、と直感して僕は引き下がった。他二人も同様だね。もうこれ以上、痛めつける必要はないと判断したんだよー。
「す、すごい……!! これが、大迷宮深層調査戦隊の」
「とりわけ五本の指に入る強者達の、真の実力でござるか……!」
「そうだ、そうとも……! すべての冒険者達の憧れであるべき、世界最強最高の戦士達こそがあの人達だ!!」
シアンさん達のテンションが爆上がりしてるよー、背後にて興奮の気配を察して内心にて笑う。
特にシミラ卿の勢いってば。元調査戦隊メンバーとしてはやっぱり、3年ぶりのこのトリオは感動モノだったりするのかな? どう見てもはしゃいでるから、後で元気になったらからかってやろーっと。
そんなことを考えつつも、意識はしかし化物へ向かったままだ。レイア、リューゼも構えて、あるかもしれない化物の反撃に備える。
…………でも、もうそれも必要ないみたいだ。やつの身体が少しずつ、灰となって崩れ落ちていく。消滅の兆し。
勝ったんだ。やつは僕らのトリプルアタックに耐えきれず、致命傷を負ったんだね。
触手も萎びて枯れ果てて、大きな毛むくじゃらは地面に倒れ伏した。真っ黒な姿が、体液を垂れ流しながら力なく震え、細かな呻きをあげていた。
『ガ、ガ、ギ、ア……』
「……利用されるしかなかった哀れな命。今、苦しみから解放────」
「馬鹿な!! 貴様ら何たることをッ!?」
「────あなたは」
せめて痛みのないよう、とどめを刺そうとレイアがロングソードを片手に化物へと近づこうとした、その矢先だった。
王城は崩れた壁から一人、男が飛び出てきて僕らを責めるように叫んだ。僕もレイアもリューゼも、他のみんなも揃って顔を顰める。
それは今回の件の元凶。
シミラ卿を処刑せんとし、化物を用いて僕らを殺そうともし──あまつさえ戦禍を王都にまで広げかねなかった稀代の愚王。
ラストシーン・ギールティ・エウリデその人がいくばくかの兵を連れて、顔を真っ赤にしてやってきたのだ。
「エウリデ王……」
「神を、古代文明にて君臨した絶対的な象徴を、弑したというのか! たかが冒険者風情、ただの人間どもが! このエウリデの覇道を照らす神威神権を、否定したとでも言うのかァッ!!」
滅びゆく化物を心底から神様だと信じているらしいその男の、激怒した叫びがあたりに響く。
醜悪に過ぎる、とても国一つ治める王都は思えない面構え。怒りで平静を保てていないのか、謁見の際に放っていた威圧も上手く機能していない。
古代文明に君臨した、神様……今や目の前で灰となりゆく化物がそのコピーだとして、エウリデはそれを政治に利用しようとしていたのだろうか。今の口ぶりからするとそう取れなくもないんだけど。
少なくともアレを用いて何か、世界に対して害をなそうとはしていたっぽいよー。悪役だねー。
「もはや神など必要ない、にも関わらずこのようなモノを引きずり出してきた。ラストシーン・ギールティ・エウリデ王……あなたは超えてはならないラインを超えました」
「貴様ァ……! 絆の英雄、レイア・アールバドッ!!」
「お久しぶりです……3年前はいろいろ、お世話になりましたね」
そんなエウリデ王に、冷静に淡々と声をかけるレイア。さっきまでの朗らかさはどこへやら、ゾッとするほどに冷たい眼差しで彼を見ている。
怒ってるよー……調査戦隊解散の根本原因とも言えるんだから当然だけど、めちゃくちゃ怒ってるよー。
重力制御によってのみその身に纏うバリアを剥がすことができる、半絶対的防御を備えただけのモンスターへと、僕らは総攻撃を仕掛けようとしていた。
「行くよ、私に合わせて!!」
「トチんなよ、ソウマァッ!!」
「そっちこそ、逸って先走らないでよー!!」
3年前にたくさん交わしたやり取りを、3年経った今でもまた、こうして繰り返す。
他の二人はどうか知らないけれど、僕はそれが堪らなく嬉しい。杭打ちくんに込める力も、これまでにないほどに強く、そして完璧なものになっていくのを感じるよー。
迎え撃つ化物はなおも触手を繰り出してきている。
並のやつならそれでどうにかできたろうけど、あいにく僕らは並じゃないんだ──勝負だ、神様。
なんだか事情があるみたいだけど、それでも敵なら僕は、躊躇なくぶち抜くよ!!
「滅びなさい……遥か残りし罪の残滓!」
「死ねゴラァァァァァァ!!」
「ぶち抜け──杭打ちくん!!」
三者、ともに駆けともに飛びともに肉薄する。
狙うはさっき僕とレイアで裂いた傷口、すごい勢いで治癒しているけど追いついてないところ!
さっきよりもはるかに強くて重い攻撃だ! 喰らって、生き延びられるものか!!
『ヴォギャアアアアアアアアッ!? ウギャッ、ウギャアアアアオオオオ!!』
レイアのロングソードの剣閃が疾走り。
リューゼリアのザンバーの剛剣が唸り。
そして僕の杭打機がすべてをぶち抜く。
3人が繰り出すそれぞれの武器が完全に、寸分違わずタイミングを一致させて傷口をさらに抉り、内部をかき混ぜぶち撒ける。
生物である以上は決して耐えられない手応え──そして化物の断末魔の叫び。
決着だ、と直感して僕は引き下がった。他二人も同様だね。もうこれ以上、痛めつける必要はないと判断したんだよー。
「す、すごい……!! これが、大迷宮深層調査戦隊の」
「とりわけ五本の指に入る強者達の、真の実力でござるか……!」
「そうだ、そうとも……! すべての冒険者達の憧れであるべき、世界最強最高の戦士達こそがあの人達だ!!」
シアンさん達のテンションが爆上がりしてるよー、背後にて興奮の気配を察して内心にて笑う。
特にシミラ卿の勢いってば。元調査戦隊メンバーとしてはやっぱり、3年ぶりのこのトリオは感動モノだったりするのかな? どう見てもはしゃいでるから、後で元気になったらからかってやろーっと。
そんなことを考えつつも、意識はしかし化物へ向かったままだ。レイア、リューゼも構えて、あるかもしれない化物の反撃に備える。
…………でも、もうそれも必要ないみたいだ。やつの身体が少しずつ、灰となって崩れ落ちていく。消滅の兆し。
勝ったんだ。やつは僕らのトリプルアタックに耐えきれず、致命傷を負ったんだね。
触手も萎びて枯れ果てて、大きな毛むくじゃらは地面に倒れ伏した。真っ黒な姿が、体液を垂れ流しながら力なく震え、細かな呻きをあげていた。
『ガ、ガ、ギ、ア……』
「……利用されるしかなかった哀れな命。今、苦しみから解放────」
「馬鹿な!! 貴様ら何たることをッ!?」
「────あなたは」
せめて痛みのないよう、とどめを刺そうとレイアがロングソードを片手に化物へと近づこうとした、その矢先だった。
王城は崩れた壁から一人、男が飛び出てきて僕らを責めるように叫んだ。僕もレイアもリューゼも、他のみんなも揃って顔を顰める。
それは今回の件の元凶。
シミラ卿を処刑せんとし、化物を用いて僕らを殺そうともし──あまつさえ戦禍を王都にまで広げかねなかった稀代の愚王。
ラストシーン・ギールティ・エウリデその人がいくばくかの兵を連れて、顔を真っ赤にしてやってきたのだ。
「エウリデ王……」
「神を、古代文明にて君臨した絶対的な象徴を、弑したというのか! たかが冒険者風情、ただの人間どもが! このエウリデの覇道を照らす神威神権を、否定したとでも言うのかァッ!!」
滅びゆく化物を心底から神様だと信じているらしいその男の、激怒した叫びがあたりに響く。
醜悪に過ぎる、とても国一つ治める王都は思えない面構え。怒りで平静を保てていないのか、謁見の際に放っていた威圧も上手く機能していない。
古代文明に君臨した、神様……今や目の前で灰となりゆく化物がそのコピーだとして、エウリデはそれを政治に利用しようとしていたのだろうか。今の口ぶりからするとそう取れなくもないんだけど。
少なくともアレを用いて何か、世界に対して害をなそうとはしていたっぽいよー。悪役だねー。
「もはや神など必要ない、にも関わらずこのようなモノを引きずり出してきた。ラストシーン・ギールティ・エウリデ王……あなたは超えてはならないラインを超えました」
「貴様ァ……! 絆の英雄、レイア・アールバドッ!!」
「お久しぶりです……3年前はいろいろ、お世話になりましたね」
そんなエウリデ王に、冷静に淡々と声をかけるレイア。さっきまでの朗らかさはどこへやら、ゾッとするほどに冷たい眼差しで彼を見ている。
怒ってるよー……調査戦隊解散の根本原因とも言えるんだから当然だけど、めちゃくちゃ怒ってるよー。