『ウアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「何これ! なんだコレー!?」
床を崩落させ、貴族もろとも奈落へ呑み込ませていく得体の知れない何かの化物。黒い泥のような体毛に覆われた、真っ赤な目を2つだけギラリと光らせるおぞましいフォルム。
エウリデ国王に応えるようにいきなり現れたソレは下階から畝り這い出ては、とっさに回避した僕ら目掛けて襲いかかってくる!!
『ウアアアアアアアアアアアアッ!』
「くっ、うう!?」
どういう理屈か、翼もないのに飛び回る流星状の黒い化物が、目を合わせた僕をターゲットに突っ込んでくる。
すでに迷宮攻略法で身体強化を済ませている僕はこれに対して一歩も引くことなく、真正面からがっぷりと組み合う──後ろにはシアンさんはもちろん、カタナがなくて戦力がダウンしてるサクラさんもいる!
カタナがなくてもそこらの騎士やモンスターなら倒せるだろう彼女でも、こんな得体の知れないやつはキツイよー!
直感的にそう判断してのぶつかり合いだったけどこれがどうやら大当たりだ。
ズドンッ!! と響く轟音、空中にて受け止めた衝撃の強さ。それらから即座に判断できたんだ、コイツ下手するといつもの僕よりヤバいって。
「ソウマくん!」
「ソウマ殿!? も、モンスターでござるかこれは!?」
「ぐ、ぅ、うっううううっ……!!」
『ウ、ウアア、ウアアアアアアアアアアッ!!』
僕が自分達を庇ったことを悟ったんだろう、即座に敵の射程から離れてシアンさんとサクラさんが叫ぶ。
モンスター……どうだろうね? 全力で力を込めての組み合いの中、拾った声に内心で答える。なんかこいつ、モンスターとはまたちょっと違う感触なんだよねー。
モンスターと対峙した時に感じるものと印象が異なる。何がどう違うって聞かれると漠然としたものだからうまく答えられそうにないんだけど、ただモンスターとは少し違うってのは確実だと言えるよー。
崩落を免れた地上に降り、なおも化物と取っ組み合う。こいつ、口もなければ鼻もない? 生き物ですらないとでも言うの? そんなバカな!
敵を観察し、そしてその異様さに改めて意味不明であることだけを悟る。
どう攻めたものかと冷静に考えていると、未だ悠然と玉座に座るエウリデ王が、まるで観戦しているかのような呑気さでこちらを嘲笑いつつ言った。
「戯け、言ったであろう、"神"であると」
「馬鹿言うな! こんなモンのどこが神様だ! 普通に考えてモンスターだろうが!!」
「モンスター? フッ……その認識がすでに間違っているのだ、神に逆らう愚か者どもめ」
僕のツッコミにも不敵に嘲笑で返してくる、こいつの余裕……絶対に自分はこの化物のターゲットにならない、という確信があるのか。そしてこいつが、絶対に僕らを殺し切るという確信も。
ふざけるな、返り討ちにしてやるよー! と、叫びたいのをぐっと堪えて化物を殴り飛ばす傍らで耳を澄ませる。自己陶酔したエウリデ王がまたペラペラと、情報を口走ってくれているからだ。
この化物の詳細だけは何がなんでも聞いておかないと、こいつ一体きりという保証もないからねー!
「"天使"。貴様らがこれまでに不遜に挑み倒してきたモノ達は本来そう呼ばれるべき存在。それを倒してきた貴様ら冒険者のあまりに罪業深い所業に、ついに神もお怒りになったのだ……我らが敬虔なるエウリデに、こうして応えられたのだから」
「モンスターを天使だなんて、あなたは何を仰っているのです、陛下!?」
「なんかヤベー宗教にでもドハマリしてるでござるか!? チィ……カタナがあればこんなやつっ!」
「サクラさん、無理はしないで僕に任せて、団長の保護を!」
いよいよわけわかんないことを言ってきた、この国は宗教国家だったりしたのかな、実は!
シアンさんもサクラさんも唐突な神だの天使だのトークに唖然として叫んでいる。気持ちは分かるけどここは僕が受け持つから引き下がっといて欲しい、こいつかなりやばいんだよ!
一度殴り飛ばした化物は、それでも怯むことなくまた僕に突撃してくる。くそ、割と全力で殴ったのにノーダメージはなけなしのプライドが傷つくよー。
……杭打ちくんが必要だ。アレの威力ならおそらくこいつもただじゃ済まないだろうし、表においてきたアレをどうにか確保できれば、一気に押し込める目はある!
「……これぞ我らエウリデが永きにわたり挑み、そして今般ついに実現できた偉業。神を降臨させ、使役したのである! どうだ感想は。偉大なる姿に今にも平伏したくなろう」
「誰が! ……サクラさん、シアンさん聞いて!!」
『ウオアアアアアアアアアアアッ!!』
「お前じゃない、黙ってろ化物ーっ!!」
ゴチャゴチャやかましいんだよエウリデ王! 化物もいちいち叫ぶな、鬱陶しい!
いい加減おかしな宗教話なんか聞きたくないんだ!と叫びながらも僕は、シアンさんとサクラさんへと声をかけた。
「何これ! なんだコレー!?」
床を崩落させ、貴族もろとも奈落へ呑み込ませていく得体の知れない何かの化物。黒い泥のような体毛に覆われた、真っ赤な目を2つだけギラリと光らせるおぞましいフォルム。
エウリデ国王に応えるようにいきなり現れたソレは下階から畝り這い出ては、とっさに回避した僕ら目掛けて襲いかかってくる!!
『ウアアアアアアアアアアアアッ!』
「くっ、うう!?」
どういう理屈か、翼もないのに飛び回る流星状の黒い化物が、目を合わせた僕をターゲットに突っ込んでくる。
すでに迷宮攻略法で身体強化を済ませている僕はこれに対して一歩も引くことなく、真正面からがっぷりと組み合う──後ろにはシアンさんはもちろん、カタナがなくて戦力がダウンしてるサクラさんもいる!
カタナがなくてもそこらの騎士やモンスターなら倒せるだろう彼女でも、こんな得体の知れないやつはキツイよー!
直感的にそう判断してのぶつかり合いだったけどこれがどうやら大当たりだ。
ズドンッ!! と響く轟音、空中にて受け止めた衝撃の強さ。それらから即座に判断できたんだ、コイツ下手するといつもの僕よりヤバいって。
「ソウマくん!」
「ソウマ殿!? も、モンスターでござるかこれは!?」
「ぐ、ぅ、うっううううっ……!!」
『ウ、ウアア、ウアアアアアアアアアアッ!!』
僕が自分達を庇ったことを悟ったんだろう、即座に敵の射程から離れてシアンさんとサクラさんが叫ぶ。
モンスター……どうだろうね? 全力で力を込めての組み合いの中、拾った声に内心で答える。なんかこいつ、モンスターとはまたちょっと違う感触なんだよねー。
モンスターと対峙した時に感じるものと印象が異なる。何がどう違うって聞かれると漠然としたものだからうまく答えられそうにないんだけど、ただモンスターとは少し違うってのは確実だと言えるよー。
崩落を免れた地上に降り、なおも化物と取っ組み合う。こいつ、口もなければ鼻もない? 生き物ですらないとでも言うの? そんなバカな!
敵を観察し、そしてその異様さに改めて意味不明であることだけを悟る。
どう攻めたものかと冷静に考えていると、未だ悠然と玉座に座るエウリデ王が、まるで観戦しているかのような呑気さでこちらを嘲笑いつつ言った。
「戯け、言ったであろう、"神"であると」
「馬鹿言うな! こんなモンのどこが神様だ! 普通に考えてモンスターだろうが!!」
「モンスター? フッ……その認識がすでに間違っているのだ、神に逆らう愚か者どもめ」
僕のツッコミにも不敵に嘲笑で返してくる、こいつの余裕……絶対に自分はこの化物のターゲットにならない、という確信があるのか。そしてこいつが、絶対に僕らを殺し切るという確信も。
ふざけるな、返り討ちにしてやるよー! と、叫びたいのをぐっと堪えて化物を殴り飛ばす傍らで耳を澄ませる。自己陶酔したエウリデ王がまたペラペラと、情報を口走ってくれているからだ。
この化物の詳細だけは何がなんでも聞いておかないと、こいつ一体きりという保証もないからねー!
「"天使"。貴様らがこれまでに不遜に挑み倒してきたモノ達は本来そう呼ばれるべき存在。それを倒してきた貴様ら冒険者のあまりに罪業深い所業に、ついに神もお怒りになったのだ……我らが敬虔なるエウリデに、こうして応えられたのだから」
「モンスターを天使だなんて、あなたは何を仰っているのです、陛下!?」
「なんかヤベー宗教にでもドハマリしてるでござるか!? チィ……カタナがあればこんなやつっ!」
「サクラさん、無理はしないで僕に任せて、団長の保護を!」
いよいよわけわかんないことを言ってきた、この国は宗教国家だったりしたのかな、実は!
シアンさんもサクラさんも唐突な神だの天使だのトークに唖然として叫んでいる。気持ちは分かるけどここは僕が受け持つから引き下がっといて欲しい、こいつかなりやばいんだよ!
一度殴り飛ばした化物は、それでも怯むことなくまた僕に突撃してくる。くそ、割と全力で殴ったのにノーダメージはなけなしのプライドが傷つくよー。
……杭打ちくんが必要だ。アレの威力ならおそらくこいつもただじゃ済まないだろうし、表においてきたアレをどうにか確保できれば、一気に押し込める目はある!
「……これぞ我らエウリデが永きにわたり挑み、そして今般ついに実現できた偉業。神を降臨させ、使役したのである! どうだ感想は。偉大なる姿に今にも平伏したくなろう」
「誰が! ……サクラさん、シアンさん聞いて!!」
『ウオアアアアアアアアアアアッ!!』
「お前じゃない、黙ってろ化物ーっ!!」
ゴチャゴチャやかましいんだよエウリデ王! 化物もいちいち叫ぶな、鬱陶しい!
いい加減おかしな宗教話なんか聞きたくないんだ!と叫びながらも僕は、シアンさんとサクラさんへと声をかけた。