「と、いう話をしにきただけではないのだ、ソウマ」
「え。っていうと、本題が他に?」
「あたりまえだ。わざわざこんな話をするためだけに来るわけないだろう」
友からの思わぬ、そして温かい言葉受け取って。でも自分が来たのはそれだけではないのだと語るカインさんに、僕も居住まいを正して和んだ空気を引き締める。
嬉しい再会はともかくとして、そりゃそうだよ、彼がわざわざ訪ねるんなら他にも理由があって当たり前だ。
おそらくはシミラ卿についてか、あるいは新世界旅団についてか……どちらも、という線もあるね。
このタイミングでレジェンダリーセブンがやってくるなんてのは結局のところ、リューゼ同様の動機があるからなんだ。そもそもこの人もまた、調査戦隊の元メンバーをごっそり引き抜いてパーティーを形成している一団の長なんだからねー。
案の定、彼は予想通りに口にしたよー。
「シミラ処刑とか新世界旅団については俺もすでに把握している。実のところ、今回それらに絡んだ目的のために訪問したのだ」
「やっぱり。リューゼみたく処刑阻止のために動くとか、シアン団長を試しに来たとかそんなアレ?」
「少し違うアレだ。シミラの処刑阻止には協力するがそんなもん、俺がいようがいまいがどのみち阻止されるだろう。新世界旅団はそもそもどうでもいい。お前が納得ずくならそれでいいからな、我が友」
うん? あれ、この人別にシミラ卿と新世界旅団を目的にエウリデにやって来たってわけでもないんだ。
ちょっと意外だよー、なんならリューゼほどじゃないにせよエウリデ王族皆殺しだ! とか、シアン団長を試してやる! とか多少は思ってるかなーとか思ったし、だからエウリデに舞い戻ったと思ったんだけど。
飄々とした顔つきからはあまり真剣味は覗けないけど、カインさんはこんな顔して万事、軽い調子でことを成すから読みにくいんだよね。
顔色から何かを伺いにくい以上、もう単刀直入に聞いてみるしかないかなー。
「ええと。じゃあ、一体何を目的にエウリデに戻ってきて、しかも僕の家を訪ねてきたのさ」
「ああ、まあ俺自身は単なるメッセンジャーでしかないんだ──レイアにウェルドナーさん、あの2人も俺と同じ目的のためにエウリデに来ている。それを伝えるために今回やって来たのだ」
「────は?」
息が止まる。絶句、とはまさにこのことだろう。
レイアに、ウェルドナーさん? あの二人まで来てるっていうの、このエウリデに?
しかもカインさんともすでにやり取りしていて、あまつさえメッセンジャーに仕立てて僕に接触をさせた?
いや、いやいやいや。何がどーしてそーなってるの?
カインさんって聞くところによると、僕ほどじゃないにせよやらかしてますよね調査戦隊的に? 不満を持ったメンバーをまとめ上げて全員で離反するとか、しちゃってましたよね?
それがなんで仲良しこよし感出してるのさ。意味が分からないよ!?
「き、来てるのレイア、ウェルドナーさんも!? っていうかなんでカインさんが、二人のメッセンジャーなんてことを」
「つい最近再会してな、まあその辺は後で話そう。あの二人もすでにシミラ奪還に向けて動いているが、実のところ戻ってきた理由はそれではない。というか戻ってきた矢先、シミラの話が出てきたもんであの2人も泡を食っているのが実情だ」
「そ、そうなんだ……本筋の目的って、一体」
そもそもエウリデに用があって戻ってきたら、タイミングが良いのか悪いのか、シミラ卿の話が出てきちゃって慌ててこの人を遣いに出したっぽいね、レイア。
たぶん僕や僕を通して新世界旅団にギルドと歩調を合わせて動きたいとかそういうのだろう。状況的に、シミラ卿の件を片付けないことには目的とやらが果たせないと判断したんだろうねー。
となると気になるのはその、本筋の目的とやらだけど……そこについてはカインさんは首を左右に振った。
申しわけなさそうにしつつも、肩をすくめて言ってくる。
「すまんがそこは直接会って聞いてくれ、俺も詳しくない話だからな。ただ一つ言うとすれば、レイアはお前を必要としている。昔以上に強く、お前を求めているのだ」
「!!」
「……とはいえ新世界旅団の邪魔をする気もないようだがな。彼女もいろいろあったようだが、すでに調査戦隊は過去の物として今を生きている。前以上に強くなっているぞ、彼女」
「…………そっか。良かった。僕が言えた義理じゃないけど、本当に良かった」
一瞬、カインさんはともかくレイアはやはり、僕や新世界旅団に対して思うところがあるのかなって考えたけど……
どうやら、すでに彼女は調査戦隊を思い出としていて、今は今で新しい何かのために生きているみたいだ。
思い出にさせてしまった僕が言うのは、あまりに無責任だし最低なんだけど。それでも、本当に良かったと心から思う。
彼女の栄光を、絆を踏みにじってしまった身として。彼女がそれでも立ち直って新たな道を歩んでいることは、とても喜ばしい。
さすがは"絆の英雄"ってことだろうね。
どんなに挫折しても、何があっても……彼女はやっぱり、何度でも立ち上がって前を向いて歩ける人なんだ。
「え。っていうと、本題が他に?」
「あたりまえだ。わざわざこんな話をするためだけに来るわけないだろう」
友からの思わぬ、そして温かい言葉受け取って。でも自分が来たのはそれだけではないのだと語るカインさんに、僕も居住まいを正して和んだ空気を引き締める。
嬉しい再会はともかくとして、そりゃそうだよ、彼がわざわざ訪ねるんなら他にも理由があって当たり前だ。
おそらくはシミラ卿についてか、あるいは新世界旅団についてか……どちらも、という線もあるね。
このタイミングでレジェンダリーセブンがやってくるなんてのは結局のところ、リューゼ同様の動機があるからなんだ。そもそもこの人もまた、調査戦隊の元メンバーをごっそり引き抜いてパーティーを形成している一団の長なんだからねー。
案の定、彼は予想通りに口にしたよー。
「シミラ処刑とか新世界旅団については俺もすでに把握している。実のところ、今回それらに絡んだ目的のために訪問したのだ」
「やっぱり。リューゼみたく処刑阻止のために動くとか、シアン団長を試しに来たとかそんなアレ?」
「少し違うアレだ。シミラの処刑阻止には協力するがそんなもん、俺がいようがいまいがどのみち阻止されるだろう。新世界旅団はそもそもどうでもいい。お前が納得ずくならそれでいいからな、我が友」
うん? あれ、この人別にシミラ卿と新世界旅団を目的にエウリデにやって来たってわけでもないんだ。
ちょっと意外だよー、なんならリューゼほどじゃないにせよエウリデ王族皆殺しだ! とか、シアン団長を試してやる! とか多少は思ってるかなーとか思ったし、だからエウリデに舞い戻ったと思ったんだけど。
飄々とした顔つきからはあまり真剣味は覗けないけど、カインさんはこんな顔して万事、軽い調子でことを成すから読みにくいんだよね。
顔色から何かを伺いにくい以上、もう単刀直入に聞いてみるしかないかなー。
「ええと。じゃあ、一体何を目的にエウリデに戻ってきて、しかも僕の家を訪ねてきたのさ」
「ああ、まあ俺自身は単なるメッセンジャーでしかないんだ──レイアにウェルドナーさん、あの2人も俺と同じ目的のためにエウリデに来ている。それを伝えるために今回やって来たのだ」
「────は?」
息が止まる。絶句、とはまさにこのことだろう。
レイアに、ウェルドナーさん? あの二人まで来てるっていうの、このエウリデに?
しかもカインさんともすでにやり取りしていて、あまつさえメッセンジャーに仕立てて僕に接触をさせた?
いや、いやいやいや。何がどーしてそーなってるの?
カインさんって聞くところによると、僕ほどじゃないにせよやらかしてますよね調査戦隊的に? 不満を持ったメンバーをまとめ上げて全員で離反するとか、しちゃってましたよね?
それがなんで仲良しこよし感出してるのさ。意味が分からないよ!?
「き、来てるのレイア、ウェルドナーさんも!? っていうかなんでカインさんが、二人のメッセンジャーなんてことを」
「つい最近再会してな、まあその辺は後で話そう。あの二人もすでにシミラ奪還に向けて動いているが、実のところ戻ってきた理由はそれではない。というか戻ってきた矢先、シミラの話が出てきたもんであの2人も泡を食っているのが実情だ」
「そ、そうなんだ……本筋の目的って、一体」
そもそもエウリデに用があって戻ってきたら、タイミングが良いのか悪いのか、シミラ卿の話が出てきちゃって慌ててこの人を遣いに出したっぽいね、レイア。
たぶん僕や僕を通して新世界旅団にギルドと歩調を合わせて動きたいとかそういうのだろう。状況的に、シミラ卿の件を片付けないことには目的とやらが果たせないと判断したんだろうねー。
となると気になるのはその、本筋の目的とやらだけど……そこについてはカインさんは首を左右に振った。
申しわけなさそうにしつつも、肩をすくめて言ってくる。
「すまんがそこは直接会って聞いてくれ、俺も詳しくない話だからな。ただ一つ言うとすれば、レイアはお前を必要としている。昔以上に強く、お前を求めているのだ」
「!!」
「……とはいえ新世界旅団の邪魔をする気もないようだがな。彼女もいろいろあったようだが、すでに調査戦隊は過去の物として今を生きている。前以上に強くなっているぞ、彼女」
「…………そっか。良かった。僕が言えた義理じゃないけど、本当に良かった」
一瞬、カインさんはともかくレイアはやはり、僕や新世界旅団に対して思うところがあるのかなって考えたけど……
どうやら、すでに彼女は調査戦隊を思い出としていて、今は今で新しい何かのために生きているみたいだ。
思い出にさせてしまった僕が言うのは、あまりに無責任だし最低なんだけど。それでも、本当に良かったと心から思う。
彼女の栄光を、絆を踏みにじってしまった身として。彼女がそれでも立ち直って新たな道を歩んでいることは、とても喜ばしい。
さすがは"絆の英雄"ってことだろうね。
どんなに挫折しても、何があっても……彼女はやっぱり、何度でも立ち上がって前を向いて歩ける人なんだ。