「んふーん、ふんふんふふふーん。ふふーんふふーん、ん?」
サクラさんともお別れして、暫しの帰路を一人歩くよー。ちょっと舞い上がる心地で、鼻歌なんか歌っちゃうー。
なんやかや久しぶりにリューゼリアに会えたりしたりして、険悪な場面があったりしたけどそれはそれ。やっぱりかつての仲間との再開ってのは、そしてそれなりな感じでやり取りできたのは普通に嬉しいことではあったよー。
そんなわけでテンションを上げつつ僕の家のすぐ手前まで辿り着く、そんな折だ。
人気のない夜、一人暮らしの僕の家。誰かいるわけなんてあるはずないのに、それでも玄関の前、何やら気配を感知する。
なんだろ、業者さんかな? 玄関前に訪問販売お断りって書いてるんだけどなー、なんて訝しみつつも気配を消して見えてきた玄関を目を凝らしてよく見る。
迷宮攻略法・感覚強化。五感を強化する技法をもって、自分の視覚を強化する。これで僕は広々とした迷宮の、遠く離れた壁に小さく彫られた文字さえも容易に見抜くことができるよー。
さてどちらさまかなー?
「…………くかー。すぴー。ぐおー」
「あれ? え、あれって……」
────思いも寄らない人だった。男が一人、玄関にもたれかかっていびきをかいて寝ている。
金髪の、起きてたらイケメンだろうなって感じの堀が深くて鼻立ちの通った男だ。でも今はアホ面と言うに相応しい大口開けて、無邪気な寝顔を晒しているねー。年は20歳くらい、っていうか今年で23歳とかだったはず。
貴族っぽい上質のスーツに身を包み、武装した様子はない。3年前の得物、細長い棒にも似た槍は今日は持ってきてないみたいだ。
ぶっちゃけ知り合い、どころの話じゃない。
昼のリューゼに続いてのまさかの再会だ。えええ!? と内心で叫びつつ、僕は恐る恐る彼に近づく。
酒は飲んでなさそうだ、酒精の気配がない。でも熟睡してるね、何時間寝てるんだ? この真夏の外で。
呆れ返りながらも僕は、彼の肩を叩き覚醒を促した。
「こんにちは、こんにちは。あ、いやこんばんわかなー? ええと、人の家の前で何してるのー?」
「ん…………? お、おお。なんだ、誰だいきなり。お前は誰だ、ここどこだ」
「えぇ……?」
寝ぼけ眼をこすりながら、寝ぼけたことを言う男。お前は誰だもここは誰だも、僕はソウマでここは僕の家の玄関前だよー。
やっぱ飲んでるのかなー? でも酒の匂いとかしないしなー、ああでもこの人割とこんなんだったなーって思い返しつつ、僕はやれやれと首を振りつつ彼に言い返す。
「僕だよ、ソウマだよ久しぶりー。ここはエウリデにある僕の家の玄関前だよ、どうしたのこんなところでー」
「ん、んん……お、おお! ソウマ、ソウマじゃないか久しいなおい!」
僕だと気づいて──遅いよー──すぐさま起き上がり満面の笑みを浮かべる。ついさっきまで寝ぼけてたくせ、覚醒すると一気に動くんだから元気な人だねー。
ま、そんなとこも含めて3年前と大して変わってなさそうで何よりだよー。
そう、この人も僕の仲間だった人だ。つまりは調査戦隊元メンバー、なんなら今やレジェンダリーセブンの一角たる人でもある。
つまりはリューゼリアのご同類なわけだね。ただ、根本的に粗野なあっちとは異なりこの人は貴族冒険者であるから立ち居振る舞い一つとっても優雅で気品に溢れているよー。
人ん家の玄関前で寝こけてもなおどこか上品さがつきまとうんだから、シアンさんにも負けない貴族オーラ漂ってるんだよね。
そんな彼はニカッとイケメンスマイルを浮かべ自信満々に、僕にとっては3年ぶりの名のりを上げるのだった。
「カイン・ロンディ・バルディエート! レジェンダリーセブンが一員にしてお前さんの第一の友が今、3年ぶりの再会をしに来た! いやー懐かしいカッコをしてるな"杭打ち"、話に聞いちゃいたがまだそのスタイルか」
豪快で、でもどこか戯けて飄々としてる風のような人。カインさん──カイン・ロンディ・バルディエート。
七人の中でもレイアに次いで仲が良く距離も近かった、それこそ友人だった人だ。そんな彼が、まさかのこのタイミングで僕を訪ねてやってきているなんて!
「当たり前。僕の冒険者としての基本だからねー。っていうか声大きいからちょっと静かにしてもらえるかなー?」
内心で驚きに叫びつつ、けれど表には出さず素っ気なく返す。
今もう夜だし、大声すぎる。一応近所にも素性は隠してるんだから、あんまり声高に人の名前だか二つ名だかを叫ばないでほしいよー。
そう思って注意すると、彼は、カインさんはやはり豪快に笑って応えるのだ。
「おお? おお、こりゃすまん。今や俺も一団率いる大将だから、ついつい声を張り上げがちになるんだ。一種の職業病だな。わははは!」
「嘘つけ! 3年前、別に大将でもなかった頃からそんなだったろ!」
「そうだったかぁ? まあまあ気にすんなって、な!」
朗らかに適当なことを言うよね、相変わらずー。
そんなところちさえ懐かしさを覚えつつ、僕はひとまず彼を家に上げるのだった。
サクラさんともお別れして、暫しの帰路を一人歩くよー。ちょっと舞い上がる心地で、鼻歌なんか歌っちゃうー。
なんやかや久しぶりにリューゼリアに会えたりしたりして、険悪な場面があったりしたけどそれはそれ。やっぱりかつての仲間との再開ってのは、そしてそれなりな感じでやり取りできたのは普通に嬉しいことではあったよー。
そんなわけでテンションを上げつつ僕の家のすぐ手前まで辿り着く、そんな折だ。
人気のない夜、一人暮らしの僕の家。誰かいるわけなんてあるはずないのに、それでも玄関の前、何やら気配を感知する。
なんだろ、業者さんかな? 玄関前に訪問販売お断りって書いてるんだけどなー、なんて訝しみつつも気配を消して見えてきた玄関を目を凝らしてよく見る。
迷宮攻略法・感覚強化。五感を強化する技法をもって、自分の視覚を強化する。これで僕は広々とした迷宮の、遠く離れた壁に小さく彫られた文字さえも容易に見抜くことができるよー。
さてどちらさまかなー?
「…………くかー。すぴー。ぐおー」
「あれ? え、あれって……」
────思いも寄らない人だった。男が一人、玄関にもたれかかっていびきをかいて寝ている。
金髪の、起きてたらイケメンだろうなって感じの堀が深くて鼻立ちの通った男だ。でも今はアホ面と言うに相応しい大口開けて、無邪気な寝顔を晒しているねー。年は20歳くらい、っていうか今年で23歳とかだったはず。
貴族っぽい上質のスーツに身を包み、武装した様子はない。3年前の得物、細長い棒にも似た槍は今日は持ってきてないみたいだ。
ぶっちゃけ知り合い、どころの話じゃない。
昼のリューゼに続いてのまさかの再会だ。えええ!? と内心で叫びつつ、僕は恐る恐る彼に近づく。
酒は飲んでなさそうだ、酒精の気配がない。でも熟睡してるね、何時間寝てるんだ? この真夏の外で。
呆れ返りながらも僕は、彼の肩を叩き覚醒を促した。
「こんにちは、こんにちは。あ、いやこんばんわかなー? ええと、人の家の前で何してるのー?」
「ん…………? お、おお。なんだ、誰だいきなり。お前は誰だ、ここどこだ」
「えぇ……?」
寝ぼけ眼をこすりながら、寝ぼけたことを言う男。お前は誰だもここは誰だも、僕はソウマでここは僕の家の玄関前だよー。
やっぱ飲んでるのかなー? でも酒の匂いとかしないしなー、ああでもこの人割とこんなんだったなーって思い返しつつ、僕はやれやれと首を振りつつ彼に言い返す。
「僕だよ、ソウマだよ久しぶりー。ここはエウリデにある僕の家の玄関前だよ、どうしたのこんなところでー」
「ん、んん……お、おお! ソウマ、ソウマじゃないか久しいなおい!」
僕だと気づいて──遅いよー──すぐさま起き上がり満面の笑みを浮かべる。ついさっきまで寝ぼけてたくせ、覚醒すると一気に動くんだから元気な人だねー。
ま、そんなとこも含めて3年前と大して変わってなさそうで何よりだよー。
そう、この人も僕の仲間だった人だ。つまりは調査戦隊元メンバー、なんなら今やレジェンダリーセブンの一角たる人でもある。
つまりはリューゼリアのご同類なわけだね。ただ、根本的に粗野なあっちとは異なりこの人は貴族冒険者であるから立ち居振る舞い一つとっても優雅で気品に溢れているよー。
人ん家の玄関前で寝こけてもなおどこか上品さがつきまとうんだから、シアンさんにも負けない貴族オーラ漂ってるんだよね。
そんな彼はニカッとイケメンスマイルを浮かべ自信満々に、僕にとっては3年ぶりの名のりを上げるのだった。
「カイン・ロンディ・バルディエート! レジェンダリーセブンが一員にしてお前さんの第一の友が今、3年ぶりの再会をしに来た! いやー懐かしいカッコをしてるな"杭打ち"、話に聞いちゃいたがまだそのスタイルか」
豪快で、でもどこか戯けて飄々としてる風のような人。カインさん──カイン・ロンディ・バルディエート。
七人の中でもレイアに次いで仲が良く距離も近かった、それこそ友人だった人だ。そんな彼が、まさかのこのタイミングで僕を訪ねてやってきているなんて!
「当たり前。僕の冒険者としての基本だからねー。っていうか声大きいからちょっと静かにしてもらえるかなー?」
内心で驚きに叫びつつ、けれど表には出さず素っ気なく返す。
今もう夜だし、大声すぎる。一応近所にも素性は隠してるんだから、あんまり声高に人の名前だか二つ名だかを叫ばないでほしいよー。
そう思って注意すると、彼は、カインさんはやはり豪快に笑って応えるのだ。
「おお? おお、こりゃすまん。今や俺も一団率いる大将だから、ついつい声を張り上げがちになるんだ。一種の職業病だな。わははは!」
「嘘つけ! 3年前、別に大将でもなかった頃からそんなだったろ!」
「そうだったかぁ? まあまあ気にすんなって、な!」
朗らかに適当なことを言うよね、相変わらずー。
そんなところちさえ懐かしさを覚えつつ、僕はひとまず彼を家に上げるのだった。