「理想だなんだと御託並べても、結局冒険者ってのは力がすべてだ。弱いやつにはなんもできんし、強いやつにはすべてが許される」
「っ……何を」
元調査戦隊最強格たるレジェンダリーセブン、その一角としての力を発露させての威圧。
大人げないほどに自身の武を、威を示すリューゼリアはそんなことをつぶやいて、シアンさんをことさら強く見下した。
侮蔑ではない。これは哀れみの、憐憫の視線。弱い者に向ける強者の、傲慢がにじみ出た苛立たしい目だ。
僕が一番嫌いな目だ……だけどまだ動けない。まだシアンさんは抗っている。新世界旅団団長として、たじろいでも折れるまでは至っていないなら、まだ僕らは成り行きを見守るしかできない。
この問答は謂わばリーダー同士の勝負なのだから、ね。
「その点言えばソウマなんてのは、手に入れた陣営が強制的にトップ層になっちまうほどの力を持つ……だからこそ、テキトーなやつにゃ渡せねえよなあ?」
「私は……適当などでは……!!」
「弱い。威圧も半端。おまけに気圧され方も半人前ときた。これがテキトーじゃなきゃなんだァ? ガキが最強を手にして浮かれてたのが丸分かりだぜ」
威圧を受けて、息をするのも難しい中、それでも反抗の声を上げる団長。大したもんだよ……世界トップクラスに、ここまでやり込められてそれでもまだ闘志を衰えさせていない。
その瞳には変わらず野望の炎が、未知なる冒険への憧れが絶えず燃えているんだ。
シアンさんがそうである以上、僕もサクラさんもレリエさんも、あるいはモニカ教授だって彼女の下は離れないと強く思う。
少なくとも僕は離れないさ、彼女が彼女である限り。それにリューゼリアの戯言なんて関係ないよ、僕は僕がそうしたいからシアンさんについていってるんだ。
そこを勘違いしてるあいつの姿こそ、まだまだ一人前には程遠いね。
冷めた目で見る僕に気づくこともなく、リューゼリアはさらに言葉を重ねる。
「器じゃねえのにソウマを手にするなんざ、運が良かったのは認めてやるがそれもここまでだ。ソウマを手放して新世界旅団は解散しな。安心しろ、テメェも戦慄の群狼には入れてやるよ。トイレ掃除からの見習いでなァ!!」
いろいろラインを超えてくれた発言だ、そろそろ動こうか……サクラさんも無表情になりカタナに手をかけ、隣のミシェルさんが顔面蒼白の様相を呈する中、僕も杭打ちくんに手を伸ばした。
これ以上はリーダー同士のやりとりですらない、一方的な誹謗中傷、暴言、あるいは度を超えた侮辱だ。そこまで許す僕らじゃないよ、当然ね。
──土手っ腹に風穴ブチ空けてやる。
かつての仲間だとかそんなの関係なく殺意を剥き出しにする。今ここでこいつを終わらせて、やってくる戦慄の群狼も殴り倒して逆に吸収してしまえばそれで終わりだ。
リューゼリアこそトイレ掃除がお似合いだ、ていうか昔死ぬほどしてたもんね、やらかしまくりのペナルティとして。
3年のうちにずいぶん、僕が嫌いなタイプの人間になったもんだなと残念に思いつつ仕掛けようとした、その矢先。
「…………ふざけるな」
シアンさんが、静かに一歩前に踏み出した。
おぞましい威圧を受けながら、それでも前に進んだんだ。そして両の足、両の瞳に力を込めて、リューゼリアを思い切りにらみつける!
「おっ……?!」
「わたしを……私を舐めるな、リューゼリア・ラウドプラウズ!!」
「…………!!」
「シアン……!」
──咆哮。これまでにないほどの威圧、カリスマを放ちながらの叫びが室内にいるすべてを圧倒した。
シアンさん、ここに来てまた一つ壁を超えたんだ。直感的に悟り、僕は息を呑んだ。
彼女にとって、この局面は危機だったんだろうね。生命じゃなく、心の、尊厳の、そして夢と野望の危機だ。
リューゼリアの強力な威圧にさらされながら心を折られそうになり、それに抗することさえできないで部下の前で侮辱されそうになって……その土壇場で、潜在的な能力が引き出されたんだろう。
リンダ先輩の時と同様、壁を超えてみせた。
今やリューゼリアに抗えるだけのカリスマを、本能的なところで放つシアンさんは紛れもなく強者の風格を漂わせている。
その風格をさらに意図的に引き出して、彼女は吼えた!
「たとえ新人であっても若手であっても、心は遥かな未知を見据える、私は冒険者だ! 心に宿したこの炎は、たとえレジェンダリーセブンであっても否定はさせない!!」
「テメェ……!」
「あなたこそ、戦慄の群狼こそ我が傘下に加わりなさい! 掃除などはさせません……我が身を侮ったあなたは、その分新世界旅団のために力を尽くすのです!!」
トイレ掃除しろとまでふざけたことを言ってきたリューゼリアに、渾身の力をもって言い返す。
戦闘力に依らない、気迫や威圧の面で言えば……シアンさんは一気に、リューゼにも届きかねないところまで到達したよー!!
「っ……何を」
元調査戦隊最強格たるレジェンダリーセブン、その一角としての力を発露させての威圧。
大人げないほどに自身の武を、威を示すリューゼリアはそんなことをつぶやいて、シアンさんをことさら強く見下した。
侮蔑ではない。これは哀れみの、憐憫の視線。弱い者に向ける強者の、傲慢がにじみ出た苛立たしい目だ。
僕が一番嫌いな目だ……だけどまだ動けない。まだシアンさんは抗っている。新世界旅団団長として、たじろいでも折れるまでは至っていないなら、まだ僕らは成り行きを見守るしかできない。
この問答は謂わばリーダー同士の勝負なのだから、ね。
「その点言えばソウマなんてのは、手に入れた陣営が強制的にトップ層になっちまうほどの力を持つ……だからこそ、テキトーなやつにゃ渡せねえよなあ?」
「私は……適当などでは……!!」
「弱い。威圧も半端。おまけに気圧され方も半人前ときた。これがテキトーじゃなきゃなんだァ? ガキが最強を手にして浮かれてたのが丸分かりだぜ」
威圧を受けて、息をするのも難しい中、それでも反抗の声を上げる団長。大したもんだよ……世界トップクラスに、ここまでやり込められてそれでもまだ闘志を衰えさせていない。
その瞳には変わらず野望の炎が、未知なる冒険への憧れが絶えず燃えているんだ。
シアンさんがそうである以上、僕もサクラさんもレリエさんも、あるいはモニカ教授だって彼女の下は離れないと強く思う。
少なくとも僕は離れないさ、彼女が彼女である限り。それにリューゼリアの戯言なんて関係ないよ、僕は僕がそうしたいからシアンさんについていってるんだ。
そこを勘違いしてるあいつの姿こそ、まだまだ一人前には程遠いね。
冷めた目で見る僕に気づくこともなく、リューゼリアはさらに言葉を重ねる。
「器じゃねえのにソウマを手にするなんざ、運が良かったのは認めてやるがそれもここまでだ。ソウマを手放して新世界旅団は解散しな。安心しろ、テメェも戦慄の群狼には入れてやるよ。トイレ掃除からの見習いでなァ!!」
いろいろラインを超えてくれた発言だ、そろそろ動こうか……サクラさんも無表情になりカタナに手をかけ、隣のミシェルさんが顔面蒼白の様相を呈する中、僕も杭打ちくんに手を伸ばした。
これ以上はリーダー同士のやりとりですらない、一方的な誹謗中傷、暴言、あるいは度を超えた侮辱だ。そこまで許す僕らじゃないよ、当然ね。
──土手っ腹に風穴ブチ空けてやる。
かつての仲間だとかそんなの関係なく殺意を剥き出しにする。今ここでこいつを終わらせて、やってくる戦慄の群狼も殴り倒して逆に吸収してしまえばそれで終わりだ。
リューゼリアこそトイレ掃除がお似合いだ、ていうか昔死ぬほどしてたもんね、やらかしまくりのペナルティとして。
3年のうちにずいぶん、僕が嫌いなタイプの人間になったもんだなと残念に思いつつ仕掛けようとした、その矢先。
「…………ふざけるな」
シアンさんが、静かに一歩前に踏み出した。
おぞましい威圧を受けながら、それでも前に進んだんだ。そして両の足、両の瞳に力を込めて、リューゼリアを思い切りにらみつける!
「おっ……?!」
「わたしを……私を舐めるな、リューゼリア・ラウドプラウズ!!」
「…………!!」
「シアン……!」
──咆哮。これまでにないほどの威圧、カリスマを放ちながらの叫びが室内にいるすべてを圧倒した。
シアンさん、ここに来てまた一つ壁を超えたんだ。直感的に悟り、僕は息を呑んだ。
彼女にとって、この局面は危機だったんだろうね。生命じゃなく、心の、尊厳の、そして夢と野望の危機だ。
リューゼリアの強力な威圧にさらされながら心を折られそうになり、それに抗することさえできないで部下の前で侮辱されそうになって……その土壇場で、潜在的な能力が引き出されたんだろう。
リンダ先輩の時と同様、壁を超えてみせた。
今やリューゼリアに抗えるだけのカリスマを、本能的なところで放つシアンさんは紛れもなく強者の風格を漂わせている。
その風格をさらに意図的に引き出して、彼女は吼えた!
「たとえ新人であっても若手であっても、心は遥かな未知を見据える、私は冒険者だ! 心に宿したこの炎は、たとえレジェンダリーセブンであっても否定はさせない!!」
「テメェ……!」
「あなたこそ、戦慄の群狼こそ我が傘下に加わりなさい! 掃除などはさせません……我が身を侮ったあなたは、その分新世界旅団のために力を尽くすのです!!」
トイレ掃除しろとまでふざけたことを言ってきたリューゼリアに、渾身の力をもって言い返す。
戦闘力に依らない、気迫や威圧の面で言えば……シアンさんは一気に、リューゼにも届きかねないところまで到達したよー!!