「よっしゃ! 辛気臭え話はこの辺にして、とりあえず会いに行くかぁ、ジジイに小娘!!」
湿っぽくなった空気を振り払うようにリューゼは立ち上がり、叫んだ。柄にもない話をした、とは本人も思っているんだろうね、どこか誤魔化しの空気がある。
とはいえ今、すべきは昔話や反省や後悔でなく直近に迫るシミラ卿処刑についての対応。すなわちギルド長とリューゼとうちのシアン団長による三頭会談だ。
三頭会談って言えば聞こえはいいけど、どうしても立場的にはシアンさんが新人すぎるから気圧される場面も出そうだねー。
そこは僕やサクラさん、モニカ教授とレリエさんでフォローしなくちゃ! と鼻息を強くして来たる歴史的会談を思っていると、ミシェルさんが慌てた様子でリューゼを止めた。
どうやら異論があるみたいだねー。
「ま、待ってくださいリーダー! 本隊の到着を待ってからにしたほうが、リーダーだけで決める話ではないと思うのですが!」
「ン……まあ一理あるがよォ」
ずばり、味方が集ってから話し合いに行ったほうが良いんじゃないー? っていう指摘だ。
リューゼが本来率いているパーティー・戦慄の群狼は今まだこの町にどころかエウリデにも到着してないっぽいし、重要な話となれば彼らを待ったほうがいいってのは頷ける話だね。
うーん。ミシェルさん良いね、必要なことをしっかりリューゼに言えてる。
あいつはタッパだけでもとにかく威圧的で言動も基本的に荒々しいから、その辺、萎縮してる人ばかりなんじゃないかと心配だったんだよー。
ミシェルさんがキッチリと、締めるべきところを締めてくれるのなら戦慄の群狼は案外みんな、仲良しさん達なのかもしれないね。
少なくともリューゼリアによる恐怖政治が蔓延る、そっちこそ革命したほうが良いんじゃないのー? って言っちゃえるようなものではなさそうで良かったよー。いや、かつての同胞としてねー?
…………まあ、とはいえミシェルさんの提案は今はちょっと場にそぐわないんだけどね。
平時なら正しいんだけど、今は平時じゃないからさ。リューゼがゆっくりと彼女を見、ニヤリと笑って言う。
「ミーシェールーゥ。今そんなこと言ってる状況じゃねぇんだわ」
「っ……」
「本隊を待ってたらあと2日はかかるんだぜ? トルア・クルアからここまで近いっても、キャラバン単位での移動なんだどーしたって時間はかからァ。チンタラしてたらそれこそお前さん、シミラが殺されちまう。わりいがここは独断専行させてもらうぜェ」
面白がっている風に見えるけど、瞳の奥は笑っていない。怒ってるわけじゃもちろんないけど、リューゼはリューゼでこの状況に焦りというか、急ぐ必要はあると感じているみたいだった。
そう、本隊到着まで待ってたら話がその間、先に進まないんだ。特に何もないタイミングならともかく人の命がかかっている状況でまで杓子定規に動いているのは、少なくとも僕やリューゼからしたら考えられないことではあるんだ。
本隊が到着して、状況を説明して予定を合わせてさあ、話し合いしましょう。そしてそこから処刑阻止に向けて動きましょう──そんなことしてる間にシミラ卿死んじゃうよ。
いくらなんでも悠長すぎる。ここはお行儀よく仲間を待つタイミングじゃない、さっさと準備を整えて、本隊が到着したらすぐさま動けるように整えておくべきなんだ。
せっかくリューゼという、戦慄の群狼の総責任者がいるのにただ待つだけなんてできっこないんだよ。
「た、たしかに……騎士団長処刑まで間がないのは、たしかですが……」
「エウリデの貴族達のことだ、なんの前触れもなく処刑を早めるとかってしかねない。今ここにいない連中を、シミラ卿の命より優先すべき理由は悪いけどないね、ミシェルさん」
「まあ、拙者らは各々の思惑がどうであれ、シミラ卿を助けたいという点については共通しているでござるしな。最低限その辺についてだけはギルドや新世界旅団、戦慄の群狼らで認識を共有しといたほうがいざって時に乱戦せずにすむでござるよ」
「それは…………その、通りです」
僕とサクラさんの意見も受けて、ミシェルさんは自分の提案が少しばかり呑気にすぎるのだと認識したのか、顔を赤らめて俯いた。
仲間内で話し合って決めたいってのは決して悪いことじゃないんだけどねー。結局発言権ってのは渦中にあってこそ与えられるものだからさ。
勝手こいて先行して来たとはいえリューゼがここにいる時点で、戦慄の群狼のメンバーには今は何も言えることはないんだよ。
「すみません、差出口を挟みました……」
「ウハハハハハッ!! 気にすんな、むしろどんどん言ってきなァ! 聞くだけ聞いて、それを活かすか活かさねぇかはオレ様の責任で判断すっからよォ!!」
謝罪するミシェルさんの背中を、バシバシと叩いて大笑するリューゼリア。
彼女らしい物言いだね、意見は聞くけど活かすか活かさないかは自身の責任。潔い姿勢で、そこはリーダーシップってのを感じるよ。
湿っぽくなった空気を振り払うようにリューゼは立ち上がり、叫んだ。柄にもない話をした、とは本人も思っているんだろうね、どこか誤魔化しの空気がある。
とはいえ今、すべきは昔話や反省や後悔でなく直近に迫るシミラ卿処刑についての対応。すなわちギルド長とリューゼとうちのシアン団長による三頭会談だ。
三頭会談って言えば聞こえはいいけど、どうしても立場的にはシアンさんが新人すぎるから気圧される場面も出そうだねー。
そこは僕やサクラさん、モニカ教授とレリエさんでフォローしなくちゃ! と鼻息を強くして来たる歴史的会談を思っていると、ミシェルさんが慌てた様子でリューゼを止めた。
どうやら異論があるみたいだねー。
「ま、待ってくださいリーダー! 本隊の到着を待ってからにしたほうが、リーダーだけで決める話ではないと思うのですが!」
「ン……まあ一理あるがよォ」
ずばり、味方が集ってから話し合いに行ったほうが良いんじゃないー? っていう指摘だ。
リューゼが本来率いているパーティー・戦慄の群狼は今まだこの町にどころかエウリデにも到着してないっぽいし、重要な話となれば彼らを待ったほうがいいってのは頷ける話だね。
うーん。ミシェルさん良いね、必要なことをしっかりリューゼに言えてる。
あいつはタッパだけでもとにかく威圧的で言動も基本的に荒々しいから、その辺、萎縮してる人ばかりなんじゃないかと心配だったんだよー。
ミシェルさんがキッチリと、締めるべきところを締めてくれるのなら戦慄の群狼は案外みんな、仲良しさん達なのかもしれないね。
少なくともリューゼリアによる恐怖政治が蔓延る、そっちこそ革命したほうが良いんじゃないのー? って言っちゃえるようなものではなさそうで良かったよー。いや、かつての同胞としてねー?
…………まあ、とはいえミシェルさんの提案は今はちょっと場にそぐわないんだけどね。
平時なら正しいんだけど、今は平時じゃないからさ。リューゼがゆっくりと彼女を見、ニヤリと笑って言う。
「ミーシェールーゥ。今そんなこと言ってる状況じゃねぇんだわ」
「っ……」
「本隊を待ってたらあと2日はかかるんだぜ? トルア・クルアからここまで近いっても、キャラバン単位での移動なんだどーしたって時間はかからァ。チンタラしてたらそれこそお前さん、シミラが殺されちまう。わりいがここは独断専行させてもらうぜェ」
面白がっている風に見えるけど、瞳の奥は笑っていない。怒ってるわけじゃもちろんないけど、リューゼはリューゼでこの状況に焦りというか、急ぐ必要はあると感じているみたいだった。
そう、本隊到着まで待ってたら話がその間、先に進まないんだ。特に何もないタイミングならともかく人の命がかかっている状況でまで杓子定規に動いているのは、少なくとも僕やリューゼからしたら考えられないことではあるんだ。
本隊が到着して、状況を説明して予定を合わせてさあ、話し合いしましょう。そしてそこから処刑阻止に向けて動きましょう──そんなことしてる間にシミラ卿死んじゃうよ。
いくらなんでも悠長すぎる。ここはお行儀よく仲間を待つタイミングじゃない、さっさと準備を整えて、本隊が到着したらすぐさま動けるように整えておくべきなんだ。
せっかくリューゼという、戦慄の群狼の総責任者がいるのにただ待つだけなんてできっこないんだよ。
「た、たしかに……騎士団長処刑まで間がないのは、たしかですが……」
「エウリデの貴族達のことだ、なんの前触れもなく処刑を早めるとかってしかねない。今ここにいない連中を、シミラ卿の命より優先すべき理由は悪いけどないね、ミシェルさん」
「まあ、拙者らは各々の思惑がどうであれ、シミラ卿を助けたいという点については共通しているでござるしな。最低限その辺についてだけはギルドや新世界旅団、戦慄の群狼らで認識を共有しといたほうがいざって時に乱戦せずにすむでござるよ」
「それは…………その、通りです」
僕とサクラさんの意見も受けて、ミシェルさんは自分の提案が少しばかり呑気にすぎるのだと認識したのか、顔を赤らめて俯いた。
仲間内で話し合って決めたいってのは決して悪いことじゃないんだけどねー。結局発言権ってのは渦中にあってこそ与えられるものだからさ。
勝手こいて先行して来たとはいえリューゼがここにいる時点で、戦慄の群狼のメンバーには今は何も言えることはないんだよ。
「すみません、差出口を挟みました……」
「ウハハハハハッ!! 気にすんな、むしろどんどん言ってきなァ! 聞くだけ聞いて、それを活かすか活かさねぇかはオレ様の責任で判断すっからよォ!!」
謝罪するミシェルさんの背中を、バシバシと叩いて大笑するリューゼリア。
彼女らしい物言いだね、意見は聞くけど活かすか活かさないかは自身の責任。潔い姿勢で、そこはリーダーシップってのを感じるよ。