3年前には見られなかった聡明さ。戦闘面以上に知力の面で大幅にパワーアップしてるような気がするリューゼリアに、僕は少なからぬ衝撃を覚えていた。
こちらの状況、すなわち新世界旅団がギルドと足並みを揃えてシミラ卿の処刑を阻止しようとしているってそれだけの情報から、シアンさんの思惑をおおよそ看破してみせたんだ。
昔のリューゼなら"ハァン? ンだそれ知らねーぶっ殺す! "くらいは言っててもおかしくないのにねー。
それがこれだよ。感心して僕はしみじみつぶやいた。
「……レイアによく言われてたね、勉強しなさいって。真面目にやってたみたいで良かったよ、僕としても安心だ」
「まだまだ姉御の望むところにゃ遠かろうがなァ。そんでもワカバやモニカに煙に巻かれるこたァもうないぜ」
「撒かれとったんでござるか……」
「撒かれてたんですね、リーダー……」
ミシェルさんとサクラさんがなんとも言えない表情で言うけど、実際本当に煙に巻かれてたからねー。
本当に短絡的で直情的で、深く物事を考えない分、行くと決めたら行くところまで行けてしまう恐ろしさがあったのが昔のリューゼリアだ。
でもそんなの、理屈を──時には屁理屈すら交えて──前面に押し出してくるし口も立つワカバ姉やモニカ教授にはまるで通じなかったんだよー。
なんなら手玉に取られてうまいこと口車にノセられ、うまいこと操縦されてたこともしばしばあった。まあ、あんまりやりすぎるとレイアやウェルドナーおじさんが叱ったりしてたんだけどねー。
それを思うと今はまるで、そんな風にいいように操られるような感じじゃないと思える。
最後に会ってから今に至るまで、彼女も彼女でいろんなことを経験してきたってことなんだろうねー。
武力に知力をも備え、いよいよ風格の出ているリューゼリアはどこか面白そうに笑った。
うちの団長の思惑、シミラ卿を救出するついでになし崩しに仲間に引き込んじゃおうっていう作戦を受けて、感心した風に喋る。
「しっかし中々に強かじゃねえか、シアンってのも。テメェやサクラが従うのも納得だぜ、かなりの腹黒と見た」
「頭の回る人ではあるねー。ちなみにモニカ教授もこないだ新世界旅団に入団したよ。うちの団長のカリスマに魅せられてね」
「チッ……テメェ、マジで姉御以外に尻尾振ってんのかィ。モニカもだが何してんだ、ったく……」
こう言うとアレだけど、シアンさんがまあまあ曲者な思考回路をしているのは否定できないねー。
そもそも新世界旅団、ひいてはプロジェクト"ニューワールド・ブリゲイド"の構想からしてかなりの異端ぶりだし、それを踏まえて僕やサクラさんを引き込んだのもなかなかの胆力だし。
カリスマってのも種類があるけど、シアンさんはどちらかというとそうした自分の策略、野心をうまいことプレゼンして人を惹きつけるタイプなんだろう。
宣伝がうまいっていうのかな? 僕にしろサクラさんにしろモニカ教授にしろ、彼女が語る野心や冒険心に魅せられたところは大きいわけだからねー。
でもリューゼからしたらそんなこと知ったこっちゃないわけで、傍から見たらレイアからシアンさんに鞍替えして従順な犬に成り下がってるとでも言いたげだ。
誤解だね。そもそも僕はレイアありきの存在なんかじゃないんだよ。不敵に笑って応える。
「レイアにだって尻尾を振った覚えはないねー、僕は僕、ソウマ・グンダリだ……いつだって僕は僕の気に入った人の味方だ。それがかつてはレイアで、今はシアンさんだっていうだけの話だよ」
「けっ……テメェみてえなのは部下に持ちたかねぇなァ。自分の物差しで上を測りやがるから、心から手懐けることができねぇ。テメェ、気に入らなくなったらシアンとやらも切り捨てるだろ」
「そりゃあシアンさんがおかしくなっちゃって、しかも手の施しようがなくなったりしたらね。でもそれは向こうも同じさ、僕に利用価値がなくなったらその時点で、切り捨てはされなくともまあ、目にかけられることはなくなるだろうしー」
リューゼはレイアの影響も受けてるのか、自分のパーティーメンバー、すなわち仲間に対してすごくフレンドリーさやファミリーシップを求めているっぽいけど……
たぶんシアンさんは僕と同じで、そういうのとはちょっと違うんだよねー。
そりゃもちろん、彼女だって団員を大切に思ってはくれてるだろう。なんなら冒険者としては新米もいいところなレリエさんにだって敬意を払い、尊重してくれてたりもするし。
僕だってそんな彼女だからこそ慕い、新世界旅団団員として従っているんだ。そうである限りは、僕らの仲は揺るぎないと思うよー。
ただ、それはそれとして新世界旅団にとって必要かどうかって物差しもたしかに彼女の中にはあって。それに沿うか沿わないかを常に見定めようと努めている節はあるよねー。
特にモニカ教授との問答はそれが如実に現れてたと思うよー。あの時シアンさん、新世界旅団が元調査戦隊メンバーを集めることで乗っ取られやしないかってピリついてたしねー。
こちらの状況、すなわち新世界旅団がギルドと足並みを揃えてシミラ卿の処刑を阻止しようとしているってそれだけの情報から、シアンさんの思惑をおおよそ看破してみせたんだ。
昔のリューゼなら"ハァン? ンだそれ知らねーぶっ殺す! "くらいは言っててもおかしくないのにねー。
それがこれだよ。感心して僕はしみじみつぶやいた。
「……レイアによく言われてたね、勉強しなさいって。真面目にやってたみたいで良かったよ、僕としても安心だ」
「まだまだ姉御の望むところにゃ遠かろうがなァ。そんでもワカバやモニカに煙に巻かれるこたァもうないぜ」
「撒かれとったんでござるか……」
「撒かれてたんですね、リーダー……」
ミシェルさんとサクラさんがなんとも言えない表情で言うけど、実際本当に煙に巻かれてたからねー。
本当に短絡的で直情的で、深く物事を考えない分、行くと決めたら行くところまで行けてしまう恐ろしさがあったのが昔のリューゼリアだ。
でもそんなの、理屈を──時には屁理屈すら交えて──前面に押し出してくるし口も立つワカバ姉やモニカ教授にはまるで通じなかったんだよー。
なんなら手玉に取られてうまいこと口車にノセられ、うまいこと操縦されてたこともしばしばあった。まあ、あんまりやりすぎるとレイアやウェルドナーおじさんが叱ったりしてたんだけどねー。
それを思うと今はまるで、そんな風にいいように操られるような感じじゃないと思える。
最後に会ってから今に至るまで、彼女も彼女でいろんなことを経験してきたってことなんだろうねー。
武力に知力をも備え、いよいよ風格の出ているリューゼリアはどこか面白そうに笑った。
うちの団長の思惑、シミラ卿を救出するついでになし崩しに仲間に引き込んじゃおうっていう作戦を受けて、感心した風に喋る。
「しっかし中々に強かじゃねえか、シアンってのも。テメェやサクラが従うのも納得だぜ、かなりの腹黒と見た」
「頭の回る人ではあるねー。ちなみにモニカ教授もこないだ新世界旅団に入団したよ。うちの団長のカリスマに魅せられてね」
「チッ……テメェ、マジで姉御以外に尻尾振ってんのかィ。モニカもだが何してんだ、ったく……」
こう言うとアレだけど、シアンさんがまあまあ曲者な思考回路をしているのは否定できないねー。
そもそも新世界旅団、ひいてはプロジェクト"ニューワールド・ブリゲイド"の構想からしてかなりの異端ぶりだし、それを踏まえて僕やサクラさんを引き込んだのもなかなかの胆力だし。
カリスマってのも種類があるけど、シアンさんはどちらかというとそうした自分の策略、野心をうまいことプレゼンして人を惹きつけるタイプなんだろう。
宣伝がうまいっていうのかな? 僕にしろサクラさんにしろモニカ教授にしろ、彼女が語る野心や冒険心に魅せられたところは大きいわけだからねー。
でもリューゼからしたらそんなこと知ったこっちゃないわけで、傍から見たらレイアからシアンさんに鞍替えして従順な犬に成り下がってるとでも言いたげだ。
誤解だね。そもそも僕はレイアありきの存在なんかじゃないんだよ。不敵に笑って応える。
「レイアにだって尻尾を振った覚えはないねー、僕は僕、ソウマ・グンダリだ……いつだって僕は僕の気に入った人の味方だ。それがかつてはレイアで、今はシアンさんだっていうだけの話だよ」
「けっ……テメェみてえなのは部下に持ちたかねぇなァ。自分の物差しで上を測りやがるから、心から手懐けることができねぇ。テメェ、気に入らなくなったらシアンとやらも切り捨てるだろ」
「そりゃあシアンさんがおかしくなっちゃって、しかも手の施しようがなくなったりしたらね。でもそれは向こうも同じさ、僕に利用価値がなくなったらその時点で、切り捨てはされなくともまあ、目にかけられることはなくなるだろうしー」
リューゼはレイアの影響も受けてるのか、自分のパーティーメンバー、すなわち仲間に対してすごくフレンドリーさやファミリーシップを求めているっぽいけど……
たぶんシアンさんは僕と同じで、そういうのとはちょっと違うんだよねー。
そりゃもちろん、彼女だって団員を大切に思ってはくれてるだろう。なんなら冒険者としては新米もいいところなレリエさんにだって敬意を払い、尊重してくれてたりもするし。
僕だってそんな彼女だからこそ慕い、新世界旅団団員として従っているんだ。そうである限りは、僕らの仲は揺るぎないと思うよー。
ただ、それはそれとして新世界旅団にとって必要かどうかって物差しもたしかに彼女の中にはあって。それに沿うか沿わないかを常に見定めようと努めている節はあるよねー。
特にモニカ教授との問答はそれが如実に現れてたと思うよー。あの時シアンさん、新世界旅団が元調査戦隊メンバーを集めることで乗っ取られやしないかってピリついてたしねー。