「……いずれ集結するかもしれない元メンバーへの見せしめ? まさかシミラ卿を先に始末することで、新世界旅団に与しようとすればこうなるって言いたくて死刑に処すの?」
あまりにも乱雑なシミラ卿処刑の運び。エウリデが何を考えているのかいっそ不思議なくらいだけれど、あるいは途方もなく短絡的に考え、実行に移したのかも知れなかった。
すなわち近々僕の様子を見にやってくるらしいレジェンダリーセブンのメンバーが、何かの間違いにでも僕達新世界旅団に協力しないようにと釘を差すため、見せしめのためにこんな馬鹿げたことをしてるんじゃないかって疑惑だよー。
「そ、それはさすがに短絡的すぎませんか、メルルーク教授」
「いくらなんでもそんな馬鹿な考えが貴族の中から出てきたなんて、同じ貴族として考えたくはないのですが……」
「いやあー事実って常に残念なものなんだよねえ。私もしょうもない兄を抱える身の上だからセルシスくんの心中察してあまりあるが、まあ概ねこんな感じだと思うよ。ははは!」
「えぇ……?」
シアンさんばかりか直接関係がないにしても貴族であるセルシスくんが唖然としつつも反論している。二人とも貴族だけど僕に優しい良い貴族だから、悪くてお馬鹿な貴族が時には底抜けに馬鹿なことをしでかすってのは認めたくないみたいだねー。
そんな二人を軽快に笑い飛ばすモニカ教授も、自分だってアレなことになっちゃったお兄さんがいるものだからどこか同情気味だよ。身内──貴族のほうは範囲が広すぎる気もするけど──に変な人がいると肩身狭いものなんだねー。
「さっきも言ったけどシミラ卿処刑のニュースは今頃、すでに冒険者ギルドには出回りだしている頃合いだろう。彼女は調査戦隊以外の冒険者達とも仲が良かったからね、いきり立った連中がエウリデ滅ぶべしと叫んでいてもおかしくはない」
「ギルド長もこれはブチギレだろうねー。冒険者を完全に無視してこんなこと、なんならあの人が真っ先に王都まで殴り込んでるまでありえるよー」
「だろう? ぶっちゃけもう、冒険者によるエウリデ連合王国上層部への突撃は不可避だと思うよ」
ギルド長をまるで猪か何かみたいに言ってるけど、実際マジであの人こそが一番沸点が低いから仕方ない。
まあ、反権力精神旺盛な冒険者達をまとめるギルドの長だもの。自分だって権力者でもあるだろうに、そのことを棚に上げてあらゆる権威権力に中指を立てて吠えまくるくらいの狂犬じゃないと務まらないってのはあるねー。
ましてやこの町のギルド長ベルアニーさんは紳士ぶった物腰柔らかな態度や言動と裏腹に、内に秘めた反骨心は若い頃から一つの翳りもないと、以前に大御所なご隠居冒険者さんから聞いたことがあるよ。
なんでも昔、貴族を相手に大暴れして国から追放処分を受けた、なんてことをいろんな国でやってきたそうな。迷宮攻略法もなかった時代からだから筋金入りの反骨心だね。
そんなやると決めたらやりたい放題な爺さんからすれば、元調査戦隊メンバーにして冒険者として同じ釜の飯を食った仲間が見せしめなんかのために殺されようとしてる、なんて速攻キレる案件だろう。
間違いなくギルドを挙げて立ち上がるよー。なんならよその町のギルドなんかもキレてるかもだし、いわゆる一斉蜂起みたいなことになっちゃってもおかしくない。
シアンさんが深刻な面持ちで、その可能性を踏まえて尋ねる。
「シミラ卿の処刑への抗議、そして彼女の解放を求めて、ですか」
「王や騎士団の出方によってはそれ以上になるね。全面衝突だってあり得なくもないよ、ここまで血迷ったことをするんなら、もう何があってもおかしくない」
教授が示唆する、最悪と言ってもいいパターン。シミラ卿処刑への抗議に集った冒険者達を、エウリデ連合王国が総力を挙げて迎え撃つ選択を取る場合、それはすなわち連合王国と冒険者との全面戦争になる。
そうなればエウリデ全土が戦火に晒されるだろう。ただでさえ内乱めいた状態に陥るだろう上に、そんな隙を見せたら間違いなく近隣の国だってちょっかいを出してくる。そうなれば収拾がつかないことになるのは目に見えているしね。
そうなると冒険者側だって冒険なんて言ってる場合じゃないから、全力でさっさと攻め切りたいところだろうけど……エウリデ側の戦力は質こそ低いけど量は当然国だから死ぬほど抱えてるからね。
基本的には質で勝る冒険者対、量で勝るエウリデって感じになって泥沼めいていくだろうねー。
「泥沼……最悪でござるな。どっちもどっちでジリ貧のまま、他国の介入やら傭兵と言う名のハイエナどもに国土を貪られて双方弱っていく、実に頭の悪い構図が目に浮かぶでござるよ」
「なんならレジェンダリーセブンまでもがそのタイミングでエウリデに戻ってくることも考えられる。いやーカオスだねえ、はははは!」
「高らかに言うことじゃないと思うわよ……」
レリエさんがドン引きしつつモニカ教授を嗜める。古代文明人のほうが遥かに常識的で、良識的なのってどうかなって思うよ教授。
あとレリエさん最高、素敵!
あまりにも乱雑なシミラ卿処刑の運び。エウリデが何を考えているのかいっそ不思議なくらいだけれど、あるいは途方もなく短絡的に考え、実行に移したのかも知れなかった。
すなわち近々僕の様子を見にやってくるらしいレジェンダリーセブンのメンバーが、何かの間違いにでも僕達新世界旅団に協力しないようにと釘を差すため、見せしめのためにこんな馬鹿げたことをしてるんじゃないかって疑惑だよー。
「そ、それはさすがに短絡的すぎませんか、メルルーク教授」
「いくらなんでもそんな馬鹿な考えが貴族の中から出てきたなんて、同じ貴族として考えたくはないのですが……」
「いやあー事実って常に残念なものなんだよねえ。私もしょうもない兄を抱える身の上だからセルシスくんの心中察してあまりあるが、まあ概ねこんな感じだと思うよ。ははは!」
「えぇ……?」
シアンさんばかりか直接関係がないにしても貴族であるセルシスくんが唖然としつつも反論している。二人とも貴族だけど僕に優しい良い貴族だから、悪くてお馬鹿な貴族が時には底抜けに馬鹿なことをしでかすってのは認めたくないみたいだねー。
そんな二人を軽快に笑い飛ばすモニカ教授も、自分だってアレなことになっちゃったお兄さんがいるものだからどこか同情気味だよ。身内──貴族のほうは範囲が広すぎる気もするけど──に変な人がいると肩身狭いものなんだねー。
「さっきも言ったけどシミラ卿処刑のニュースは今頃、すでに冒険者ギルドには出回りだしている頃合いだろう。彼女は調査戦隊以外の冒険者達とも仲が良かったからね、いきり立った連中がエウリデ滅ぶべしと叫んでいてもおかしくはない」
「ギルド長もこれはブチギレだろうねー。冒険者を完全に無視してこんなこと、なんならあの人が真っ先に王都まで殴り込んでるまでありえるよー」
「だろう? ぶっちゃけもう、冒険者によるエウリデ連合王国上層部への突撃は不可避だと思うよ」
ギルド長をまるで猪か何かみたいに言ってるけど、実際マジであの人こそが一番沸点が低いから仕方ない。
まあ、反権力精神旺盛な冒険者達をまとめるギルドの長だもの。自分だって権力者でもあるだろうに、そのことを棚に上げてあらゆる権威権力に中指を立てて吠えまくるくらいの狂犬じゃないと務まらないってのはあるねー。
ましてやこの町のギルド長ベルアニーさんは紳士ぶった物腰柔らかな態度や言動と裏腹に、内に秘めた反骨心は若い頃から一つの翳りもないと、以前に大御所なご隠居冒険者さんから聞いたことがあるよ。
なんでも昔、貴族を相手に大暴れして国から追放処分を受けた、なんてことをいろんな国でやってきたそうな。迷宮攻略法もなかった時代からだから筋金入りの反骨心だね。
そんなやると決めたらやりたい放題な爺さんからすれば、元調査戦隊メンバーにして冒険者として同じ釜の飯を食った仲間が見せしめなんかのために殺されようとしてる、なんて速攻キレる案件だろう。
間違いなくギルドを挙げて立ち上がるよー。なんならよその町のギルドなんかもキレてるかもだし、いわゆる一斉蜂起みたいなことになっちゃってもおかしくない。
シアンさんが深刻な面持ちで、その可能性を踏まえて尋ねる。
「シミラ卿の処刑への抗議、そして彼女の解放を求めて、ですか」
「王や騎士団の出方によってはそれ以上になるね。全面衝突だってあり得なくもないよ、ここまで血迷ったことをするんなら、もう何があってもおかしくない」
教授が示唆する、最悪と言ってもいいパターン。シミラ卿処刑への抗議に集った冒険者達を、エウリデ連合王国が総力を挙げて迎え撃つ選択を取る場合、それはすなわち連合王国と冒険者との全面戦争になる。
そうなればエウリデ全土が戦火に晒されるだろう。ただでさえ内乱めいた状態に陥るだろう上に、そんな隙を見せたら間違いなく近隣の国だってちょっかいを出してくる。そうなれば収拾がつかないことになるのは目に見えているしね。
そうなると冒険者側だって冒険なんて言ってる場合じゃないから、全力でさっさと攻め切りたいところだろうけど……エウリデ側の戦力は質こそ低いけど量は当然国だから死ぬほど抱えてるからね。
基本的には質で勝る冒険者対、量で勝るエウリデって感じになって泥沼めいていくだろうねー。
「泥沼……最悪でござるな。どっちもどっちでジリ貧のまま、他国の介入やら傭兵と言う名のハイエナどもに国土を貪られて双方弱っていく、実に頭の悪い構図が目に浮かぶでござるよ」
「なんならレジェンダリーセブンまでもがそのタイミングでエウリデに戻ってくることも考えられる。いやーカオスだねえ、はははは!」
「高らかに言うことじゃないと思うわよ……」
レリエさんがドン引きしつつモニカ教授を嗜める。古代文明人のほうが遥かに常識的で、良識的なのってどうかなって思うよ教授。
あとレリエさん最高、素敵!